☆カツサンドで村人をセクシーにしちゃおう! 後日談 - ロマネコンティ -
「ということなのさ」
「は、はぁ……?」
そしてスライムがどうなったというと――
今うちのパン屋にいる……。
その子は大きめのカボチャくらいの体格で、薄桃色に染まったままだった。
そんな子がゲルタさんの足下に隠れている。
つぶらな瞳でソワソワとこっちを見ていた。
「魔物なんて酒場に置けないから、ここで預かってくれないかい?」
「はぁ、そうなんですかー。……え?」
「困ってるんだよ……。うちは飲食店だろう、こういうのはちょっとねぇ……」
「え、ええーーーっっ?!! うちだって食料品店ですよーっ!?」
それにゲルタさんに懐いてるなら、ゲルタさんと一緒の方がこの子も幸せなんじゃ……。
「人手が欲しいって言ってたじゃないかい」
「人じゃないですっ、これスライムさんですよぉーっ!?」
「大丈夫、アンタの予想を遙かに越えるほどにこの子は賢いよ」
この子、人の言葉がわかるみたい。
ゲルタさんに言われて、怖ず怖ずとあたしの前にやってきた。
丸くてプルプルで半透明で弾力があってやわらかそう……。
あたしは膝を抱いてしゃがんで、スライムさんと見つめ合った。
この子かわいい、かも……。
「名前はっ?」
「そうさねぇ……。ロマネコンティっていうのはどうだい?」
「じゃ、ロマちゃんですね!」
「気に入ったかい?」
「はいっ、よく見たらかわいいです! わっ、本当に賢い!」
スライムのロマちゃんは丸っこい体で、何度もお辞儀をしているように見えた。
「あの魔法のカツサンドのお礼だよ」
「え。あ、えと、それは……」
「アッハッハッハッ、嘘が吐けない子だねぇ!」
「な、なんのことか、わからないです……っ!」
ゲルタさんがロマちゃんを拾い上げた。
少し重いのか、しっかりと両手で抱えていた。
「ありがとうよ、コムギ。また男どもにチヤホヤれるようになったのも嬉しいけど、酒場がこんなに賑やかになるなんてアタイは幸せだよ! ありがとう、ありがとうね、コムギッ!!」
『どういたしまして!』とは言えない。
あたしはゲルタさんからロマちゃんを受け取った。
全身がゲルだからか、ロマちゃんはずっしりとしていた。
でもなんだか冷たくて気持ちいい……。
「何かあったらアタイを頼りな。アンタのためなら、なんだってしてあげるよ!」
「よくわからないですけど、じゃあその時は、お言葉に甘えさせていただきます……!」
「それじゃその子、よろしく頼むよ!」
「え……えーーっっ?!!」
あたしはロマちゃんを抱えてゲルタさんを追いかけた。
ロマちゃん、ゲルタさんに置いていかれて寂しそうに震えていた。
酔っぱらった人がスライムにビックリするかもしれないから、酒場は難しいのかもしれない……。
「後で一緒にゲルタさんのところに行こ、ロマちゃん」
あたしとロマちゃんはゲルタさんを見送った。
気が済むとお店に戻って、カウンターの攻略本さんの隣に置いた。
『私は攻略本、それ以外の名はすっかり忘れてしまって久しい。よろしく、ロマ』
「えっと、攻略本さん、この子お願いできる……?」
『喜んで。しかしまさか、ゲルタがスライムを仲間にするとはな……。まるで魔物使いだ』
唐突だけど、かわいくて丸っこい家族が増えた。
面倒見のいい攻略本さんは、モンスターであるロマちゃんとすぐに打ち解けてくれた。
元々は勇者だったのに、モンスターにまでやさしくできるなんて……。
攻略本さんって、やっぱり凄いなって思った。
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