・カツサンドで村人をセクシーにしちゃおう! - タルタルソース -
※前回が挿絵回でした
前話のページ下部に、お友達のsiiさんによる挿絵を追加しました。
もっさもさです。
タルタルソースの材料はもう用意してある。
海賊さんのレシピに目を通しながら、必要な材料を調理台に並べた。
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・タマネギ
・ピクルス(キュウリがおすすめ)
・ゆで卵(固ゆで)
・マヨネーズ
・塩、胡椒
・レモン果汁(あれば少々)
・酢
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「どうだ、見ろよっ!!」
「あ、うん。じゃあ次は、タマネギとピクルスをみじん切りにしてくれる?」
「任せとけ! 何もかも粉々にしてやるよ!」
「粉々じゃ困るよーっ! えっと、ムギ粒くらいの大きさにして?」
「わかった。だけど、これってなんか変なソースだな……」
「そう?」
「材料がなんか独特だ……」
「そうかな? 絶対っ、美味しくなる組み合わせだとあたしは思うけどなー!」
卵ももう夕方前にゆでてある。
あたしはホリンの鮮やかな包丁さばきを横目に、ゆで卵の殻を水の中でむいていった。
ホリンの包丁、動きがちょっと激しすぎる……。
ホリンの指が飛んでしまわないか、見ていてヒヤヒヤするほどの大胆さだった……。
けどただ見ていてもしょうがない。
あたしは卵の殻むきに集中した。
それでも気になって横目で盗み見ていると、タマネギ3玉分があれよあれよという間にみじん切りにされていった。
続くピクルスの方もあっという間の仕事だった。
「へへへ、楽しくなってきちまった! コムギ、次は何をすればいいっ!?」
あたしの気も知らず、ホリンはワクワクした笑顔でこっちを見た。
「えっとね、じゃあ……卵を潰すのお願い! あたし、それ水にさらしちゃうから」
だけど楽しいって言われたら、あたしもなんだか楽しくなってきた!
あたしはホリンに笑い返した。
それから今のままだと辛すぎるタマネギの処理を始めた。
「こんなもんか?」
「うん、たぶんそんな感じ! じゃ、辛みが抜けるまでお茶にしよっか!」
「おう、悪ぃな」
「ホリンも淹れるの、手伝ってくれてもいいんだよ……?」
「そういうのは苦手だ。……そこの水瓶、俺が入れ替えてきてやるよ」
「あ、それ助かる!」
ホリンは水くみに、あたしはお茶の準備を始めた。
モクレンで買った紅茶と、魔女さん手作りのジャムと、うちの食パンの耳を居間のテーブルに並べた。
「こういう水くみくらいなら、たまに手伝ってやるよ。これ、お前には重いだろ……」
「うん、いつも小さい瓶で3往復くらいしてる。ホリンって、意外に力持ちなんだね」
「意外は余計だってのっ! 風車の仕事は結構、力使うんだよっ」
戻ってきたホリンと同じテーブルを囲んだ。
そうしてしばらくの間、なんでもない話をして楽しく休憩した。
風車の仕事は、小麦の運送だけでも凄く大変そうだった。
「じゃあお返しに、今度あたしが風車の仕事手伝ってあげるね!」
「いらねーってのっ! お前は人を手伝う暇があったら、少しは身体を休ませろってのっ!」
風車の仕事、ちょっと楽しそうだったのに残念……。
その後もあたしたちは明るいお茶を楽しんだ。
ロランさんとのお茶は気持ちが落ち着いて心地よかった。
ホリンとのお茶は、なんだかワクワクする。
ただ喋ってるだけで元気が出てきて、ウキウキとした気分になれた。
ずっとこうして話していたい。
だけど頃合いになったので、あたしたちは厨房に戻った。
さらしたタマネギの試食をしてみると、まだほんのちょっと辛さが残っていた。
「ゲルタに食わせんなら、こんなもんでいいんじゃないか? あのおばちゃん、辛いの好きだしよ」
「そうだね、じゃあホリンはこれで水を切って。しっかりとお願いね!」
ホリンにザルを渡した。
あたしの方はその間に、刻みピクルスと卵をボウルに入れて少し混ぜていった。
さらに酢を入れて、マヨネーズをドバッとスプーンで流し込んだ。
「おい、そんなに入れるのか……?」
「うん、マヨネーズがソースのベースなんだって」
それからあたしはレモンの皮をむいた。
目当ては果汁だけど、せっかくだからレモンピールも欲しかった。
「タマネギはいつ入れるんだ?」
「それはね、今!」
そこに3玉分のたっぷりの生タマネギを加えた。
レモン汁もそこに絞って、塩と胡椒を仕上げをした。
さあ、お楽しみの試食をしよう!
あたしたちはタルタルソースを口にした!
「悪ぃ、変なソースって言ったのは俺の間違いだ……。俺、これだけ皿いっぱいにして食いたい……」
「ええーっ、おかずじゃないってばーっ!?」
「だってよーっ、これ単体ですげぇ美味いじゃんよ!」
「う、うん、それはわかるけど……。調味料だけ食べられたら、料理人としては超複雑だよ……」
「美味いからだよ! あ、けど、塩と胡椒、もうちょっと足していいんじゃないか?」
「うん、それはそうかも」
味を調整したら、もう1度つまみ食いができる。
ホリンとあたしは量の相談をしながら、ちょっとずつ加えてはタルタルソースの味見をした。
これは味見、味見だから……。
うま、うま……うまーーいっ!
「今日の晩ご飯、俺これだけでいい……。ちょっと分けてくれないか?」
「だからおかずじゃないってば……。せめてうちのパンに乗せて食べてって!」
タルタルソースはそんなに長持ちしないらしい。
うちの店で売るつもりだったけど、後で少しホリンに包んであげよう。