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・素早さのサーモンサンド - あたしは卵鑑定士コムギ! -

 さあ、スモークサーモンが届く前に、今できることをしちゃおう!

 あたしは攻略本さんに挟んでおいたメモ書きを読み返した!


――――――――――――

【ツナサンド】

・ツナ

・タマネギ

・パセリ

・バター

・マヨネーズ

 ・卵 ・植物油 ・酢

・マスタード

・食パン

 ※サーモンを使うならマヨの代わりにクリームチーズとアボカドもあり

――――――――――――


 えっと……。

 クリームチーズってなんだろう……。

 アボカドって、なんか強そう……。


『解説が必要か?』

「あ、うん、お願い攻略本さん!」


『クリームチーズは、クリームにレモン汁などを加えてもう少し固めたものだ』

「へーー……あ、それなら前にお裾分けしてもらったことあるかも!」


『アボカドは脂肪質の果実だ。……私はあまり好きではないな』

「強いの?」


『う、うむ……? まあ、癖は強いな……』


 クリームチーズならうちでも作れそうだけど……

 せっかく海賊のコックさんにレシピを教わったんだから、今回はマヨネーズっていうのを作ろう!


「ちょっと直売所行ってくる!」

『ああ、いってらっしゃい。……まったく、忙しない子だ』


 お財布を持ってお店を飛び出した。

 あの体力のジャムパンを食べてから、走っても胸が苦しくならない。


 あたしは跳ねるように丘を駆け上がった。

 ホリンががんばっている風車を左手に見上げながら、村中央にある直売所に飛び込んだ!


「あら、コムギちゃん」

「こんにちは、おばさん!」


 いつものおばさんに挨拶をした。

 そうしながら畜産品のコーナーへ早足で歩いた。


 茶色い殻に包まれた鶏卵が、出品者ごとに仕切られていっぱい並んでいた。


 ブラッカやモクレンで卵の値段を見たときは驚いた。

 だってうちの村の5倍もするお値段だったんだもん!


「えーっと、せっかくだから……」

「あらあら、今日は慎重に選ぶねぇー」


「うんっ、今日のは特別なの!」


 こんなのずるかもしれないけど……

 今日は攻略本さんに貰った力を使った。


―――――――――――――――――

【アッシュヒルの鶏卵】

 【特性】[薄い][腐りかけ]

 【LV】ー2

―――――――――――――――――


 あ、これ腐ってる……。


 やっぱりこの力、凄く便利だ。

 この力は、お腹を壊す物を作らずに済む力だった。


 それってあらゆる料理人の夢だ。

 今のあたしなら、毒キノコだって見分けられるかも!


―――――――――――――――――

【アッシュヒルの鶏卵】

 【特性】[硬い殻][有精卵][生きている]

 【LV】17

―――――――――――――――――


「おばさん、大変! これ温めると孵る卵かも!」

「あっはっはっ、変なこと言う子だね~」


「ホントだよっ、ホントにホントの有精卵だって! お金払うから元のところに返してあげて!」

「そうかい?」


「そうだよ、賭けてもいいよ!」

「あんた、面白い賭けを思い付くねぇ。よし、いいよ、ひよこが産まれたら5倍にして返すよ」


「絶対産まれるから食べちゃだめだよっ!?」

「あっはっはっはっ、本当に変な子だねぇ~、あんた」


 物の秘密がわかり過ぎるのも少し困ると思った。

 LV17の卵は、おばさんの手拭いに包まれて温め直された。


―――――――――――――――――

【アッシュヒルの鶏卵】

 【特性】[黄身が大きい][双子]

 【LV】8

―――――――――――――――――


 一通り確認して、状態の良い卵を8個見繕った。

 続いてワインとかお酢のコーナーに行って、一番いいワインビネガーを取った。


 LV30もあるお酒が目に入った。

 けどお酒なんていらない。スルーした。


 オリーブオイルはうちのパン屋にいっぱいある。

 必要な物が揃ったので会計をした。

 帰りは卵を割らないように歩いて帰った。


「あ、ホリンだ。おーいっ、風車の仕事はもういいのーっ!?」


 帰り際、風車の方からホリンがやってくるのを見た。

 大きく手を振ると、なんか呆れたような顔をされた。


「ロランさんは?」

「ちょっと、会って一言目がそれ!?」


「だって風車に戻ってこーねしよ……」

「ああ……。ロランさんなら今頃、宿でスモークサーモンを作ってると思うよ」


「お、釣れたのか! わかった、行ってみる!」


 ロランさんの行方がわかると、ホリンがあの忠犬めいた笑顔を浮かべた。


「ちょっと、風車の仕事は?」

「今日は風の機嫌が悪いんだ」


 ホリンが後ろの空を指さした。

 目で追ってみると、いつも回っている風車が止まっていた。


 そういえば今日は、風がほとんどない。


「じゃあな、あんま無理すんじゃねーぞ」

「そっちこそ、ロランさんに迷惑かけちゃダメだよ?」


「へへ、俺たちの仲がいいから嫉妬か?」

「もう、何言ってるんだか……。ホリンはロランさんに構ってもらってる側でしょ……?」


「お前もだろ」

「まあ……うん」


 本当に口の減らないやつ……。

 宿の方に駆けてゆく忠犬ホリンを目で追った。

 姿が遠くなってから、あたしも店に引き返した。


 ロランさん、どうしてうちの村に滞在しているんだろう。

 もうお母さんはこの村にいないのに、どうしてホリンの相手をしてくれるんだろう。


 ホリンがロランさんを慕っているからかもしれない。

 あんな忠犬ムーブをされたら、捨てるに捨てられないだろう。


 あたしは1人でそう考えて納得した。


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