・海賊の楽園 - 親愛なるダチへ -
あたしたちは宴会場にお邪魔した。
海賊さんたちみんなが集まると、みんなと料理の前でジョッキを掲げた。
乾杯!!
「おい」
「へい、なんですかい、船長?」
「確か刃物がだいぶダブついてたな……。何本か見繕って持ってこい」
美味しいオレンジジュースを飲んでいると、ユリアンさんがいきなり物騒なことを言い出した。
海賊さんたちが一斉に奥へと駆けていった。
食事に手を付けるのもどうかと思って待っていると、なんか武器の山を抱えて帰ってきた!
「おっさん……もしかして、アッシュヒルに武器を分けてくれるのか……?」
「察しがいいな。だが出所は聞くんじゃねぇぜ」
「え、なんでですか……? 支援してくれるのは、凄く嬉しいですけど……」
「俺たちゃ海賊だ、お互い知らん方がいいこともある」
銅の剣、鉄の剣、鉄の槍。
少し錆びている物もあった。
だけど整備すればまだまだ十分に使えそうだった。
数はざっと、30本くらいもある……。
1つだけでも、誰かにタダであげていいような物じゃなかった。
「えっと、全部でおいくらですか……?」
「そこに俺のダチがいるんだろ。だったら遠慮はいらねぇ、持っていきな」
『ユリアン……』
攻略本さんが感激に震えた声を上げていた。
友情はもうないものと思っていたのに、こんな不意打ちをされたら、感動しちゃうに決まってた。
『ユリアン……いや、ユリアス・アルブレヒト。ありがとう……時を遡ろうとも、我らは良き友人だった……』
攻略本さんの言葉をあたしなりに要約して、ユリアンさんの耳元に小声で伝えた。
ユリアス・アルブレヒト。
本当にそれが本名だったみたい!
ユリアンさんもつい声を漏らすくらい驚いてた。
「きっとソイツと俺は気が合ったんだろうな……」
「そうだね。あたしも知らないけど、きっとそうだよ」
「ハハ。どんなやつか顔も知らねぇが、ソイツ……最期まで戦い抜いて復讐を果たしたんだろ? そういう諦めの悪いやつは、嫌いになれねぇな……」
その宴の間、攻略本さんはいつもよりよく喋った。
おかげで代弁がちょっと大変だったけど、新たに2人の友情が結ばれ直されてゆく光景がなんだか感慨だった。
あたしたちはその日1日をポート・ヘイブンで過ごした。
一部の海魚は生でも食べられる。
内臓もちゃんと選り分けて湯通しすれば、コリコリしてて美味しいことを知った。
ハマグリとみんなが呼ぶ大きな貝は、山育ちのあたしには抵抗があった。
けど食べてみると、もう美味し過ぎて背筋が震えるほどだった!
釣りをしたり、バクチごっこをしたり、歌を歌ったり、教わったりした。
あたしたちはその日1日だけ海賊の一員として、陽気に騒いで賑やかに過ごした。
とっても楽しい旅だった!
「ツナサンド? おう、食ったことあるぜ。別にツナでなくとも、別の魚でも作れるんじゃねぇかな」
「本当!? どう作るの!?」
「おい、お前らわかるな? レシピを教えてやんな」
「へい、船長!」
ツナサンドのレシピもついにわかった!
サーモンサンドでも十分に美味しいって、ユリアンさんが食べたそうに補足してくれた。
こうしてあたしたちの旅は、色々とあったけど大成功で終わった。