・次なる目的地は港町モクレン! いざ冒険の旅へ! - 木蓮の町 -
モクレンの町に着いた。
ホリンは門の前に倒れて、激しく息を乱していた。
「なかなか根性のある彼氏だな」
「え……っ、えっと……」
「彼女の方がよっぽどタフだったみたいだが」
「そ、それはきっと、鎧のせいかと……」
あたしは平気だった。
ユリアンさんも少し息を乱していたけど、もうすっかり平気そうだ。
「ここまでくりゃ安全か……」
「え……?」
「いやこっちの話だ」
もしかして、だけど……。
ユリアンさん、2人だけで街道を行くあたしたちを心配して付き合ってくれたのかな……。
「お嬢ちゃんももう少し、彼氏の言うことを聞いた方がいいぜ」
「そ、そうですか……?」
「モクレンは治安の悪い町だ。もう少し警戒しときな」
「ありがとうございます、おかげで助かりました!」
「俺も楽しかったぜ。ガキの頃に戻ったかのような気分になれた……。あばよ、若造」
「俺はホリンだっ! 次は……次は負けねぇ……っ! ぜぇっぜぇぇっ……」
ホリンの背中を撫でてあげた。
ユリアンさんは門を抜けて、モクレンの町の中に消えて行った。
「アイツ……絶ってぇ、カタギじゃねぇ……」
「わぁ……みんなユリアンさんを避けてくね。嫌われてるのかな……」
「みんなアイツにビビッてんだよっ!」
「なんで怖がるの? いい人なのに」
ホリンは立ち上がろうとしたけど、立ちくらみを起こして結局あたしに支えられながらまた座り込んだ。
『泊まるならばアシカ亭がいいだろう。値段も手頃で客質もいい』
「うん、そのつもり。ありがとう、攻略本さん」
ホリンが休んでいる間に、あたしはバッグから攻略本さんを取り出して予定を立てた。
港町モクレンのページを開いて、アシカ亭への経路と、ついでに拾える隠しアイテムをチェックした。
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A.3G
B.疾風の靴
C.黒胡椒
D.鉄壁の種
E.疾風の実
F.ヤバい水着
G.1000G
H.セクシー草
I.やくそう
J.竜の鱗
―――――――――
『F.ヤバい水着』『I.やくそう』を取りながら進んで、アシカ亭で少し休もう。
どうせ一泊するんだから、今日で全部を回収する必要なんてないし。
「コムギ、俺の隣を離れるんじゃないぞ……」
「離れないよ。だってそっちこそフラフラしてて心配なんだもん」
「お前らの体力がおかしいんだってのっ!」
だいぶ元気になってきたので、あたしは立ち上がったホリンと一緒にモクレンの門を抜けた。
・
モクレンの町はブラッカの町が村に見えるくらい大きかった。
大通りには露店が並んでいて、ひっきりなしにそこを荷物を載せた馬車や台車が行き交っていた。
「ヤバい水、着……?」
「うん、そう書いてあるよ。ヤバい水って、どういう意味だろ……?」
「そんな装備、俺聞いたことないぞ……」
武器防具マニアのホリンでも知らないみたいだった。
そうなるとかなり貴重な物なのかな……。
「もしかしたら……ヤバいくらいの水の力を持った服ってことじゃないか?」
「あっ、それ強そう! もしそうだったらホリンにあげるね!」
「お、お前な……。そうやってなんでもかんでも人に物を譲るんじゃねーよ……」
「じゃあいらない? 鉄の鎧の下に付けれるかもよ、ヤバい水着」
「ほ……欲しい……」
「素直でよろしい! どんな服か楽しみだね!」
攻略本を開いて辺りを見回すと、袋小路の端っこに光る草が生えていた。
手に取ると輝きが消え、あの『やくそう』に変わった。
「マジで何もないところから現れるんだな……」
「あるよー。ここに光る草が生えてたもん」
「俺には見えねーって……」
「そんなことより、ヤバい水着もこの近くだよ!」
袋小路から引き返して、アシカ亭の方に少し歩いた。
「ちょ、ちょっと待て、そこ入ってくのかっ!?」
「うん、ここだって書いてあるよ」
家と家の隙間に木箱が詰まれていた。
その木箱を上って狭い隙間を通ってゆくと、小さな空き地にたどり着いた。
あそこからしか入ることができない、ちょっとした隠れ家だった。
「なんでこんなところに隠されているんだよ……っ!」
「見つけにくいからじゃない? あっ、ピンク!」
「ピンク……?」
空き地の真ん中にピンクの宝箱が現れた!
あたしはそれに駆け寄って、期待を込めて開いてみた!
「あれ、なんだろこれ……シルクの、タオル……? あ、違う、これ、下着だ……」
ロランさんのハンカチみたいにツルツルした生地だった。
広げてみるとそれは、胸から股間を隠すビスチェだった。
「ホリン、これ着るの?」
「着るわけねーだろ、バカッ!!」
「わっ、見て見てホリンッ、股間のところこんなに狭い! わー、なんかやらしいっ!」
「うっ……?!」
何を想像しているんだろう。
生地を広げてみせると、ホリンの顔が真っ赤になった。
「なんで顔赤くするの?」
「逆になんでお前は平気なんだよっ!?」
なんでって、これってただの布じゃない。
誰かが着なきゃ、別に――
「ホ、ホリン……」
「な、なんだよ……っ?」
「こ、これを着ろって言われても、あ、あたし、無理だよ……っっ」
「想像はしたけど着ろとは言ってねーよっっ!!」
「ぇ……?!」
「あ……」
顔が熱くなって、あたしはヤバい水着をバッグに押し込んだ!
着ないからっ、絶対こんなの着ないからっ!
「ち、違うっ、違うって言ってるだろっ!?」
「ホリンのエッチッ!! こ、こっち見ないでよぉーっっ!!」
恥ずかしくて恥ずかしくて、あたしはホリンの前から逃げ出した!
あたしより身体の大きなホリンは、建物の隙間に引っかかったり、木箱に足をぶつけたり、エッチな想像をした報いを受けていた!
そんな目であたしをみていたなんて……信じられない!
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