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・次なる目的地は港町モクレン! いざ冒険の旅へ! - あたし、強い! -

「フレイムッ! 当たれーっ!!」


 手のひらの上にフレイムの魔法を発動させて、それを木陰から1番近いマホウツカイに投げ付けた!


 そしたらビックリ!

 今日までパンしか焼いてこなかったのに、1発で怖い魔物をやっつけちゃった!


「お、お前の魔法……結構威力あるんだな……?」

「うん、あたしも驚き……。こんなに凄かったんだ、お母さんに教わった魔法……」


 戦闘中なのにホリンとのん気に言葉を交わすと、バッグの中の攻略本さんが疑問に答えてくれた。


『賢さの上昇により、魔法の威力が底上げされたのだろう。今の君は、それなりの身の守りと、高い体力を持った頼れる魔法使いのようだ』


 これは今日まで食べてきたパンの効果なんだって。

 それでつい楽しくなっちゃったあたしは、またフレイムを発動させて敵に投げた。


 するとまた1発でやっつけちゃった!

 あたし、強い!


「おい、あいつら突っ込んでくるぞ! コムギ、お前は後ろの木を盾にしろ!」

「えっ、ホリンは!?」


「やつらを攪乱する!」


 ホリンは突撃してくるマホウツカイに雷神の剣を使った!

 落雷が敵の中心に落ちて、まとめて5,6体くらいを吹っ飛ばした。


 倒せてはいないけど十分な効果だった。

 あたしは後ろに下がり、またフレイムを投げた。


 投げると敵が燃えて、宝石に変わる。

 なんだかそれが楽しかった!


「ホリンッ、後ろ!」


 ホリンの後ろにマホウツカイが回り込んで、長い杖でホリンの頭を叩いた。

 凄く痛そう。そう見えたのだけど……。


「あれ、こいつら……弱いぞ?」


 ホリンは全然平気な顔だった。

 雷神の剣で反撃して敵をやっつけると、その顔がニヤリって不適に笑った。


「なんだ、魔法だけ気を付ければザコじゃん、コイツら。そうとわかったら片付けるぞ、コムギ!」

「ちょ、ちょっとぉ……っ?!」


 ホリンが鱗の盾を構えて、マホウツカイたちに突撃した!

 当然魔法が飛んできたけど、ホリンは鱗の盾でアイスボルトを受け流しちゃった!


 あたしはホリンが心配でまたフレイムを投げて、一心不乱でサポートした!

 マホウツカイがまたホリンを杖で殴ったけど、ホリンのやつケロっとしてた……!


「ふぅぅ~~! これで最後だな、やったなっ、コムギ!!」

「う、うん……。大丈夫、ホリン……?」


「余裕余裕! 俺たちってこんなに強かったんだな!」


 攻略本さんが言うには、あたしが食べさせたパンの効果みたいだけど……。

 嬉しそうだし、言わない方がいいかな。


 あたしはマホウツカイが変化した宝石を拾って、村の子たちへのおみやげを増やした。


 それは暗い緑色の小さな石で、わずかに伸びる木漏れ日に照らしてみると、つい笑みがこぼれちゃうくらいに綺麗だった。


「えへへ……。子供たち、喜ぶだろうなぁ……」

「それ、売らないのか?」


「なんで?」

「なんでって……。売った方が金になると思うけど……」


「そうかなぁ……。お金より、おみやげにした方がみんな喜ぶと思うけど!」


 宝石をバッグにしまって、あたしとホリンは並んで歩いた。

 結構激しく動いたのにホリンもあたしも息が全然乱れていない。


 これはきっと、体力のジャムパンの効果だ!


「ねぇホリン、この森なんか物騒だし、ちょっと走らない……?」

「いいぜ。でも疲れたら言えよな」


「こっちは鎧を着てるホリンを気遣ったつもりなんだけど……?」

「男が女に負けるかよ、ちょうどいいハンデだ」


 男の子って……どうしてこう自信家なのかなぁ……。

 先にギブアップするのはホリンだと言い返すのを止めて、あたしは走り出した!


「あっ、こらっ! 先頭は俺だろっ! 待てって、危ないだろが!」


 ホリンと一緒に薄暗い森を走った。

 鎧を着ているホリンがあたしに追い付けるわけがない。


 でもそれでもホリンはあたしを追い抜こうとした。


「ホリン、凄い! 鉄の鎧とか装備してるのに全然バテないねっ!」

「待てって言ってるだろ……っ、俺はお前の護衛役だろ……っ!?」


「へへへーっ、追い抜けたら考えてあげる!」

「な、なんなんだよぉーっ、その体力はよぉーっ!?」


 体力のジャムパン、凄く美味しかったからあたしは3つも食べてしまった。


 ホリンに差し入れたのは2つ。

 パン1つ分だけ、体力はあたしの有利みたいだ。


 自信家の男の子のプライドを砕くのは……

 性格がちょっと悪いかもしれないけど、なんかいい気分だった!


 男の子の方が体力があるって常識がひっくり返って、なんだか可笑しかった!


「森、抜けちゃったね」

「ク、クソ……ッ、ただのパン屋に負けた……」


 森を抜けるとそこから先は草原地帯だった。

 あたしはホリンと肩を並べて、赤レンガの街道を走った。


 そう、走った。

 走り続けた。

 なんか、全然余裕だって気づいたから。


「疲れたら言ってね、ホリン」

「よ、余裕だし……。お前にだけは負けねぇ……っ!」


「もう、負けず嫌いだなぁ……」


 ホリンと一緒に薫風にそよぐ草原を眺めながら街道をマラソンした。


 鎧を着ているホリンの方が不利だってわかりきってるのに、それでもホリンはあたしに勝つ気だった。


『あまり煽ってやるな。男のプライドも当然あるだろうが、彼は純粋に君を守りたいのだ』


 攻略本さんがそう言うので、あたしは息を乱した振りをしてペースを少し落とした。

 ただそれだけで、ホリンの機嫌がよくなった。


「大丈夫か? 少し歩くか?」

「ねぇホリン、あたしってもしかして、可愛げとかない……?」


「おう、あんまないなっ!」

「ええーっ、そんなハッキリ言わないでよーっ!?」


「バイタリティ高すぎるんだよ、お前……。その割に危機感全然ねーから、とにかく心配だし……」

「それはホリンが心配性なだけでしょ」


 ホリンと喋りながらもう少し走った。

 草原地帯を抜けて、また荒れた広野が広がるようになると、道が緩やかな上り坂になっていった。


 それから看板を見つけた。

 このT字路を北に行けば王都、東に行けばモクレンだって書いてあった。


 もちろん、あたしたちはモクレン方面に向かった。


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