・ホリンと会えない日々 - ホリンとまた一緒の日々 -
後日談――
攻略本さんと相談して、翌日あたしはダンさんの開拓地を訪ねた。
「コムギ……な、何、これ……?」
「鎖鎌! あと、青銅の大盾! ダンさんにあげるっ!」
武器と盾を差し出すと、ダンさんは見るからに困り始めた。
今ダンさんが欲しいのは戦いの道具じゃなくて、体格に合う大きなクワの方だった。
「オ、オレ……戦い、に、苦手……」
「知ってる。でもこの大きな盾、ダンさん以外にこの村で使える人なんていないよ! こっちの鎖鎌も、ダンさんが振り回せば、凄い威力になるんじゃないかな!」
ダンさんの顔色を見ればわかった。
いらないけど、どうやって断ろうって困った顔をしている。
でも青銅の大盾をふいに持ち上げて、ダンさんは微笑んだ。
「これ、クワになる……」
「……えっ?」
「ありが、とう、コムギ。ほら、こう、使う……」
ダンさんが青銅の大盾を片手で握った。
そしてそれはもう軽々と頭の上まで持ち上げた。
それをドスンッと地面に叩き付けると、固い地面に盾が深々と突き刺さった。
それをテコの原理で返せば、凄い量の土が掘り返されていた。
「お、重くて頑丈……気に、入った……」
「わぁぁぁ……。世界が違う……」
「オレ、が、がんばる……。村の、みんな、お腹、空かないように……もっと! 畑、小麦、作る!」
なんか想定と違う使われ方だけど、まあいいかっ!
ダンさんは木に青銅の大盾をくくり付けて巨大クワにして、鎖鎌を振り回して草刈りをして見せてくれた。
「じゃ、がんばってね、ダンさん!」
「あ、ありが、とう……」
「いいえ、どういたしましてっ!」
ダンさんの開拓地を離れて村に引き返すと、ダンさんの家の隣にダンさんの新居が突貫工事で立てられていた。
通りがかると村長さんがあたしに気づいて、陽気に声をかけてくれた。
「ムギちゃんや、朗報じゃ! ホリンのやつ、明日にはあのババァのところを卒業できるそうじゃぞ!」
「それホントッッ?! やったっ、やっとホリンと出かけられる!!」
「ああっ、だが、ムギちゃんや……っ、ぁぁ……」
「な、何……?」
元気な村長さんの声が、途端に小さく弱々しくなった。
シワシワのヨボヨボに戻っちゃったのかと思って、びっくりした……。
「ムギちゃん……ホリンのやつを、見捨てないでやっておくれ……。あのバカ孫はっ、ムギちゃんの魅力に気付いてないだけなのじゃよ……っ」
「ええっと……大声でそういうこと言われると、恥ずかしい……」
「町の男どもには気をつけるんじゃよ、ムギちゃんや……」
「あ、うん……。大丈夫だよ、ホリンが守ってくれるもん!」
ホリンとの日常が戻ってくる!
ホリンとまた旅ができる!
ブラッカの町のその先に行ける!
あたしは幸せいっぱいの笑顔で空を見上げながら、攻略本さんが待つお店までの田舎道を歩いていった。
新しい町! 新しい町への旅があたしたちを待っている!
新しい町で、ホリンとどんな物を食べよう!
ホリンと会えない毎日がついに終わろうとしていた!
本日から1日2話投稿に変更します。
おいおいは1日1話のゆっくりとしたスケジュールにする予定です。
00時更新がなくなりますのでご了承下さい。