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・保養地バランシアでお宝を探そう! - ばなな? -

 兵舎を離れると、あたしは通りの木陰の下で涼みながら攻略本にざっと目を通した。


――――――――――――

 B.アモーレの水

 C.アスパラパワー

――――――――――――


 残るはこの2つだけ。

 どっちもどういう物なのかよくわからなかった。


「明日ぱらぱわー? アスパ・ラパワー? ねぇ、これなんだろー?」

「アスパラ・パワーではないのか?」


「アスパラの力ってこと? でもアスパラって何?」

「ふむ。野菜にアスパラという物があるが、それと何か関係があるのだろうか?」


 ベルさんと話していると、ホリンに攻略本をひったくられた。

 そうだった。昔とはもう違って、今はホリンにも攻略本が見えるし読める。


 それってすごくラクチンだ。

 それに書かれていることを2人で共有できるのも嬉しい。

 これまではあたしが一生懸命説明しても、すぐにはわかってもらえなかったし!


「とにかく手に入れてみりゃわかることだろ。こっちだぜ、ベルさん」

「フッ、そこでコムギの名を呼ばぬところがお前らしい」


 人に案内してもらうのって楽しいかも!

 あたしはベルさんと並んで、本を片手に歩くホリンの後ろ姿を追った。


 ベルさんはホリンの背中ばっかり見てた。

 あたしはバランシアの白い石畳と白い塀、何もかもが白い町並みと、旅行者や地元の人たちを眺めながら通りを歩いた。


「可能ならば町ごと貸し切りにしたかったのだがな……」

「え、ええ……っ?」


「冗談だ」

「ロベールが言うと冗談に聞こえねーっての……」

「そうだよっ、本気にしたよーっ!」


「うむ、我もそこまで非常識ではない」


 ホリンの背中を追ってゆくと、あたしたちはいつの間にか、湖の綺麗な公園に入っていた。

 ここはさっき寄った公園とは別のところで、なんだか美味しそうなお店が敷地の中に三軒も建っていた!


「ホリン、宝は見つかったか?」

「この本によるとすぐ近くだ。そこの店の厨房の、タルに隠されているみたいだ」


 え……っ、厨房……っ!?


「そうか、ならば店の厨房にまかり通るとしよう」

「えーっえーっ、ちょ、ちょっとそれはまずいよーっ!? だってっ、お店の厨房だよーっ!?」


「頼めばなんのことはない」

「そりゃロベールは王様だからなぁ……」

「ベルさんが一緒で助かったね! 店の人は、すっごく驚くだろうけど……」


 ホリンを先頭にしてお店に入った。

 そのお店はケバブっていう焼き肉サンドを食べられる素敵な軽食屋さんだった。


 給仕のお兄さんはベルさんを見ると、声を上げて床にひっくり返っちゃった……。


「ま、まさか……ロ、ロベール陛下っっ!?」

「いかにも。ケバブサンドを2つと、チョコバナナサンドを1つ頼む」


 え、チョコッ!?


「て……っ、店長ーーっっ?!!」


 チョコも食べれるのっ、このお店っ!?

 それにばななって何っ!?


「ちょ、ちょっと待て、ロベールッ」

「何をしている。早くこい」


 さすが王様! ベルさんは招かれてもいないのに、お店の厨房に堂々と入っていた。

 あたしとホリンはその後を追った。


 そしたらお店にはっ、おっきなお肉の柱が立っていた!!


「こ、これはこれはロベール様っ、こ、こんな店に、なんのご用でしょう!?」

「うむ、少しケバブ屋の業務に興味が湧いてな。よければ厨房を見物させてくれ」


「そ、それは構いませんが……っ」

「心配はいらん、すぐに終わる。ホリン、店の者に迷惑がかかる前にさっさと回収せよ」

「あ、ああ……もう、かけてると思うけどな……?」


「そうなのか……?」

「滅相もございませんっ、ロベール様っ!!」


 ベルさんって、ちょっと天然なところがあると思う……。

 真顔で問いかけるベルさんに、背筋を伸ばしすぎて反り返った店長さんが大声で叫ぶ姿は、ちょっとだけ人形劇みたいで面白かった。


「おう、手に入ったぜ。さっき頼んだやつはテイクアウトにして、外のベンチで食うとしようぜ」

「はっ!? 今少しお待ちをっ、ケバブとチョコバナナですねっ、すぐにご用意いたしますっっ!」


 お肉の柱を、店長さんがガクガクと震える手でこそいでいった。

 そのお肉を給仕のお兄さんが黄色い薄焼きのパンの間にはさんで、味付けの何かをかけて葉っぱに包んでくれた。


 それからチョコバナナサンド!

 甘い匂いのする薄焼きの生地に、黄色い果物の中から白い果肉を取り出した物を輪切りにして乗せて、それにトロトロに溶けたチョコをかけて同じように包んでくれた。


 あたしたちはお店を出て、アスパラパワーのことなんて後にして料理をほおばった。


「お、おぉーーっっ、何これっ、あまーいっっ!!」

「フッ、チョコとバナナの組み合わせは絶品だろう」


「合うっ、どっちも甘いのに個性が負けてない! あっ、ホリンっ、それちょっとちょうだいっ!」

「なっ、おまっ?!」


 ホリンが食べてたケバブサンドも気になって、あたしは食べかけに食いついてやった!


 美味しいーっっ!

 薄切りと薄焼きのパンの組み合わせだからすごく食べやすいしっ、それにちょっと辛いけど、パンと肉の脂が合うっ!


「ほぅ……」

「ベルさんも分けてくれるのっ?」


 ベルさんがそれとなく、自分のケバブサンドをこっちに傾けたのをあたしは見逃さなかった!


「うむ、よ、よければ、だが……」

「はむっっ!」


「ッッ……?!」

「コイツ、こういうやつなんだよ……」


 ベルさんのも美味しい!

 あたしはお返しに、チョコバナサンドを差し出した!


「城じゃこういうことやんねーよなぁ?」

「わ、我が……口を、つ、付け……付けるのか、それに……?」

「え、そだけど?」


 なんでこんなことを恥ずかしがるんだろう。

 いつも澄ましているベルさんなのに、今は顔が真っ赤でかわいく見えた。


「すまぬが、心の準備ができそうもない……。気持ちは嬉しいが遠慮しておこう……」

「じゃあ……ホリンどうぞーっ!」

「ベルさんが食わねーなら俺も食わねー」


「あははっ、なにそれーっ!?」


 ま、いいか!

 あたしはケバブサンドを1口ずつかじって、さらにチョコバナナサンドを独り占めした!


 これがバナナ……!

 後でフィーちゃんにバナナを買って帰ろう!


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