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・ただのパン屋、超VIP待遇される - 逆ハーレムギスギスなし!? -

「あ、あの……単刀直入にも、ほどがあると、思うような……っ。って、ホリンッ?!」

「ベルさんには負けねぇ。コムギッ、お、俺と……俺とずっと一緒にいてくれっ!」


 でも驚きはそれだけじゃなかった……。

 なんでかわかんないけど、ホリンまでベルさんと張り合って同じことをし始めた!


「ホ、ホリンまで何ッッ?!! えっえっ、ちょっ、イベリスちゃんが……っっ」


 ひざまづいて、あたしの手を取って、キ、キスを……手の甲にだけどされちゃった……。


「あ、うちのことはおかまいなく」

「そんなにニヤニヤ見られたら気になるに決まってるよぉーっ!?」


 イベリスちゃんはわざわざ横に回り込んで、すっごくニコニコしながらあたしたちを観察していた。

 足下に視線を落とすと、ベルさんの真剣過ぎる熱い眼差しと、ホリンの鋭い眼差しがあたしを見ている……。


 なんでこんなことになっているんだろう……。

 ベルさんもホリンも、その視線を一瞬たりともあたしから外そうとしない……。


 悪い気はしないけど、それ以上になんてリアクションを返せばいいのかあたしにはわからなくてっ、すごく居たたまれないっ!

 ゲルタさんみたいに開き直るなんて、あたしには無理!


「と……ところでっ、プレゼントってっ、何……っ!?」


 あたしに残された選択肢はこれしかなかった。

 そう聞くとベルさんとホリンは横目で互いをうかがい合って、ライバル関係っぽいのになぜか微笑みあってから、ほぼ同時に立ち上がった。


「この日のために特別な服を仕立てさせた。我も利用している王宮御用達の仕立屋の仕事だ、受け取ってほしい」


 ベルさんは後ろに下がり、植木鉢の陰に隠してあったプレゼントボックスを取って、両手であたしに渡してくれた。


 薄水色の箱に、赤いリボンの付いたかわいい箱だった。

 あたしはそのリボンと箱が気に入ってしまった。


「変わってんだろ……コイツ、昔からこうなんだよ」

「ますます好ましい。が、開けてくれないとプレゼントにならないな」


 ライバル同士なのに2人は仲がよかった。

 それにホリンがベルさんに対抗して、あんなことをするなんて凄く意外で……。

 あたしはまたちょっと、放心してしまった……。


「あ、ごめんっ、凄く立派なプレゼントボックスだったからつい!」


 でもプレゼント! そうプレゼント!

 中を取り出してから箱は綺麗に元に戻すとして、中を確かめてみよう!


 あたしはプレゼントボックスを丁寧に丁寧に開封して、その中に入っていた絹の手触りに幸せな気持ちを膨らませた!


 これならあのベッドシーツをハサミで切って帰らなくてもいいかも!

 広げてみるとそれは、真っ白なシルクで作られたワンピースだった!


「なんであたしが欲しかった物がわかるのっ!? ありがとーっ、ベルさんっ! すぐにこれっ、着てくるねっ!!」


 寝室に飛び込んであたしはシルクのワンピースに着替えた。

 ベッドの上に着ている服を全部投げて、ワンピースに袖を通すと――スベスベだ……!


 どこかに引っかけて傷つけちゃわないか心配だけど、でも全身スベスベだ!

 通気性も凄くよくて、それに軽くて、なんだか涼しい……!


 あたしベルさんとホリンに早く見せたくて、寝癖を付けたまま寝室を出た。

 ベルさんとホリン、やっぱり仲が良い……。

 あたしが着替えている間、向かい合ってお喋りをしていたみたいだった。


「なんと美しい……。まるで汚れを知らぬモクレンの花のようだ……」

「確かに似合う……。けど、なんかコムギじゃないみたいだ……」


 2人ともあたしに見とれてくれた。

 それくらいかわいい服だったから、あたしもクルリと回ってこの軽い服の着心地を楽しんでみたり、ゲルタさんを見習って堂々として胸を張ってみたりした。


 えと、こういうときは……そうっ!


「どやっ!!」

「ま、かわいいんじゃねぇか。……服は」

「きついところ、緩いところはないか? あるなら仕立屋をここに呼び付けよう」


 まただ……。

 またホリンとベルさんは流し目を送り合って張り合っていた。

 女の子を口説くことより、張り合うことが目的になってないかな、この2人……?


「なんかぴったりだから大丈夫! それより出かけるんでしょっ、早く行こうよ!」


 でも気分は凄くいい。

 なんでかすっごくチヤホヤされちゃってるし、それにこんなに素敵なプレゼントまでもらえちゃったし、なんだか気持ちがふわふわと浮かれてる。


 だからあたし、贅沢にもベルさんとホリンの手を両方取って、さあ行こうと引っ張っていた。


「そういや昔、コムギと俺で、ベルさんの服を見立てたりしたな」

「うむ、あの日のことは今も仔細に覚えている。我はお前たちと出会えて幸運だった」


「はははっ、最初はどんな変人貴族かと思ったけど、話のわかるいいやつだった!」

「ちょっとホリンッ、その言い方失礼だよっ!」

「かまわん、ホリンはこういう歯に衣着せぬ男だ」


 う、うーん……?

 口説かれているのはあたしのはずなんだけど、やっぱりなんか、不思議な感じだ……。


 あたしを巡って競い合っているのに、時折自然体でホリンとベルさんがイチャイチャするっていうか……なんだろう、これ……。


「やはり、白は映えるな……」

「おう……。まるでどこかの国の、お姫様みたいだ……」


 エントランスホールからホテルを出ると、サマンサの明るい日差しがあたしたちを照らし出した。

 あたしの白いワンピースは、この明るい光の下だと凄く目立った。


「我からすると姫ではなく女神だ。母からしてああいう女性だからな、姫君にはあまり希望が持てぬ」

「ああ、あのオバちゃんな……。苦労してんのな、ベルさん……」


 でも明るくて楽しいからいいかな!

 あたしは元気な大股でホテルの敷地を歩いて、後ろを並んで歩くホリンとベルさんに楽しい話や、笑顔を送って南国のバカンスを楽しんだ!

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