・いざ黄金郷へ! - 海賊船に乗ろう! -
モクレン港に着くと、当然また兵隊さんに囲まれた。
「町中をスケルトンに歩かれたら困るだって? ならアンタたちがこの御輿を担いておくんなよ」
だけどゲルタさんはちっとも動じず、理屈は通らなくもないけどやっぱりメチャクチャな要求を兵隊さんたちにした。
「骨を連れているのは大問題だが……なんと美しい女なのだ……」
「まるで荒海のようなこの気性……。無理難題を屁とも思わないこの傲慢不遜さ……」
普通ならなんだこの人……って感想になると思う。
けれどもゲルタさんがやると、何をしても華やかで貫禄がある。
「貴方こそ理想の女性だ!」
「喜んでお運びいたします!」
兵隊さんたちはゲルタさんにたっぷり見とれてから、スケルトンさんたちの代わりに御輿を担いでくれた。
「ゲルタのオバちゃん、マジすげーな……」
『うむ……はた迷惑ではあるが、これは想定以上の活躍をしてくれそうだ……』
そんなわけであたしたちは港へと続くゆるい下り坂を、兵隊さんたちに先導されて進んでいった。
すると青くてキラキラの海が見えてきた!
「しゅ、しゅごい……。あれが、海、なのですかーっ!?」
「うんっ、そうだよ、フィーちゃん! あの海の向こうにベルさんがいるんだよっ!」
「は、はわぁぁ……っ」
「世界って、あたしたちが思っているよりずぅぅぅーーとっ、おっきいんだよっ!」
驚きに立ち止まりそうになるフィーちゃんの背中を押して、あたしも一緒に坂の先に広がる海と港を見下ろした。
「危なっかしくてしょうがねぇな。お前らちゃんと足下も見ろよ……?」
「そういつホリンは落ち着き過ぎ! あんなに凄くて綺麗なのになんで平気なのっ!?」
「この前きたし、テレポートでの輸送で俺は何度も見てるからな」
「ふぉっふぉっふぉっ、懐かしいわい……。船なんて乗ったのは、世界大会の日以来かのぅ……」
ホリンのことは置いといて、村長さんは意外に国際派だった!
でも大会の話は長くなりそうだから触れないでおいた。
「あっ、みんな見てっ! あの船があたしたちがこれから乗る船だよっ」
そうあたしが指さすと、兵隊さんたちがちょっと動揺した。
赤鹿海賊団、海賊ユリアンの船はもう目と鼻の先だった。
・
大型船用の高い桟橋からはしけを渡ると、そこにあたしを待つイベリスちゃんの姿があった!
「イベリスちゃん!」
「ムギちゃん大師匠様っ、お待ちしておりましたわっ!」
あたしはイベリスちゃんの肩に飛び付いて、大事な大事なあたしの弟子と笑顔で再会を喜んだ。
その後ろでお付きのインスさんがなんか、護衛の兵隊さんたちを腕を横に突き出して制止していた。
そうだった。
そういえばイベリスちゃんって、お姫様だったんだった。
イベリスちゃんの隣には緑のロマちゃんがいて、うちのピンクのロマちゃんとくっついてあたしたちのように再会を喜んでいた。
「コムギッ、よくきたな!」
「今日は差し入れはないのかっ!? 俺たちゃあのパンが病み付きなんだよ!」
海賊船だから当然だけど、あのちょっと顔が恐い海賊さんたちもあたしを迎えてくれた。
「もちろんっ、持ってきたよっ! だって海賊さんたちは、アッシュヒルを助けてくれた恩人だもん!」
甲板には沢山の人たちがひしめいていた。
一番多いのはスイセンのお城で見たことのある兵隊さんたちだった。
「きたな、コムギ。野郎どもっ、出航の準備を急ぎやがれ! だがくれぐれも客人たちに失礼がないようにな!」
それとユリアンさんもいた。
今は出航の準備で忙しいみたいで、チラッとこっちを見ただけだったけど、あの鋭い目とニヒルな笑顔を送ってくれた。
「ん……見かけない顔だな? 誰だ、お前……?」
「私はオーレン。イベリス様のご指名で、失礼ながら親衛隊の装備を借り、コムギ様の護衛を任された者です」
とにかく色んな人が甲板に集まっていたから、騒がしくて何が起きているのか全部説明し切れない。
その中でただ1つわかったことは、なんでか船倉から船室まで物がいっぱいで、甲板より下には入らない方がいいってことだった。
次回も少し少なめ、次次回が多めになります。
いつも更新が遅くなってすみません。