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・いざ黄金郷へ! - 最強の村人集団下山 -

 出発したあたしたちは整備されたアッシュヒル山道に出て、長い下り道を進んだ。

 丁寧に敷かれた石畳の道は凄く立派で、ただ歩いているだけで変化が楽しかった。


 やがて一行は山道を下り切って赤い街道に出た。

 そこから東にちょっと進んだ先がブラッカの町だ。

 ブラッカの町へと入ると、兵隊さんに囲まれることになった。


「なんだい? この町にはスケルトンを連れて入っちゃいけないなんて、そんなルールでもあるのかい?」


 囲まれたのはあたしではなくて、ゲルタさんの乗るお神輿とスケルトンさんたちだった……。


「貴様、まさかネクロマンサーかっ!?」

「何言ってんだい、あたいはただの酒場女さ」


 ところがゲルタさんがウインクを飛ばすと、それだけでどうにかなってしまった。


「む……。よく見れば、なんと美しい……」

「隊長っ、スケルトンを連れて町に入ってはいけないなんて法律はありません!」

「どうぞ、我々が東門までエスコートいたします!」


「自分を差し置いて良い顔をしようなど不届き千万! ネクロマンサー様、どうぞこちらへ!」


 ゲルタさんって、凄い……。

 兵隊さんたちはスケルトンさんたちに混じって、ゲルタさんの御輿を担ぎだした。


「町を迂回すればそれで済んだ話なのですがね……」

「悪いねぇロラン。あたいはさ、こうしてチヤホヤされるのが大好きなのさ」

「フィーもいつかゲルタさんみたいに、ナイスバティのモテモテになりたいのですよーっ!」


 あたしたちはブラッカの町を抜けて、モクレン行きの街道を進んでいった。



 ・



「ぬぅぅんっ!!」

「アイスレインッッ、なのですよーっ!!」


 道中、森の中でなんかモンスターの大群に遭遇した。

 それはあの懐かしの顔色の悪いモンスター、マホウツカイの群れだった。


 でも相手が悪かった。

 村長さんが次々と石ころを投げつけると、一撃でモンスターは宝石に変わっていた。


 フィーちゃんがあの危険な範囲魔法アイスレインをいきなり撃って焦ったけど、鋭いツララの雨は敵のいる範囲にだけ降って、こっちには落ちてこなかった。


 フィーちゃんはあの日からさらに成長していた!


「ガハハハッ、ダンッ、あれをやるぞーっ!!」

「え。で、でも、氷の雨、まだ降って……」


「ワシの筋肉は鋼鉄じゃっ、やれいっ、ダンよっ! フィーちゃんや、ダンを元の大きさに戻せいっ!」

「ほいさっさーっ、ミニママイズゥーッ!」


 ミニママイズの魔法で巨人サイズに戻されたダンさんは、村長さんを両手で抱えて、そのままぐるぐると回りだして、それから村長さんを敵の群れに投げ付けた。


「アッシュヒル合体奥義ッッ、独り村長大移動ッッッッ!!」


 弾丸となった村長さんは、着弾に合わせて拳を大地に叩き付けた。

 すると大地が爆発した!!


「ゲホッゲホッゲホッ、何すんだよこのクソジジィッッ!!」


 砂塵が辺りを包み込んだ。

 その砂塵が晴れると、爆心地に立っているのは村長さん1人だけだった。


「うむ、良い準備運動じゃった」

「圧倒的だねぇ……。この戦、あたいらが加勢する意味、あるのかい?」


 そんなこと言われても、もうみんな集めちゃったし……。

 それにしても村長さん、つよ……。


「それを言ったらおしまいですよ、ゲルタ」

「でも若い頃の爺ちゃんが勇者になりゃ、全部簡単に片付いたんじゃ……。それにこの旅も爺ちゃん1人を派遣すりゃ……」


「ホリン、旅の意義が消滅するようなことは、それ以上は控えた方がよろしいかと」


 そこから先の旅路は、村長さんのあまりの強さにモンスターたちもドン引きしたのか、敵の影すら現れなかった。



 ・



 あたしたちがブラッカとサマンサの間にある林道を進んでいるその頃、モクレン港ではちょっとした再会があったんだって。


 一足先にスイセンからモクレンに到着していたイベリスちゃんとインスさんは、港で海賊ユリアンの船に搭乗した。


「ユリアス近衛兵長、ごぶさたしております。インセンスです」


 搭乗するなり、インスさんがユリアンさんの足下で片膝を突くものだから、イベリスちゃんは驚いちゃったんだって。


「ああ、そいつは謀反に巻き込まれて死んだって噂だぜ。俺は海賊ユリアン、たまにソイツと間違えられて困らされてんだ」

「お噂は聞いていましたが、お元気そうで良かった……。自分は今、イベリス姫の護衛を任されております」


「ならひざまずくのは姫さんだけにしな。よう、イベリス様、そっちも久しぶりだな」

「インセンス、見苦しいまねはよしなさい。ユリアン、お久しぶり。……キャッ?!」


 ユリアンさんはインスさんを立たせて、荒っぽくお姫様に突き飛ばした。

 インスさんは勢い余って、イベリスちゃんを抱き込むことになっちゃったんだって。


「も、申し訳ありません、姫様っ?!」

「よ、よろしくありませんけど……っ、よ、よろしくてよ……っ」


 あたしに語ってくれたとき、イベリスちゃんは恥ずかしそうにしながらも、凄く嬉しそうにしていた。


 インセンスが主従の壁を越えてくれないって、不満そうにもしているようにも見えたけど。


「おーっ、お熱いことで。おいテメェらっ、姫さんがきたってことは、そろそろコムギとホリンの野郎もくるってことだ! 積み荷の積載を急ぎやがれっ、貿易でボロ儲けしてやるチャンスだぞっ!!」


 それと海賊船の船倉には、ありったけの交易品が詰め込まれていたんだって。

 ホリンのテレポートで船ごとモクレン沿岸からサマンサに飛ぶ予定だったから、それを利用してちゃっかりお金稼ぎをするつもりみたい。


「今の聞きましたか、姫様?」

「ええ、聞きましたわ、インセンス」


「これは南方の食材を持ち帰るチャンスです」

「いいえ、食材に限った話ではありませんわ。少しズルですけど、わたくしたちもこの交易で一儲けさせていただきましょう」


「なるほど……。元手はいくらあっても困るものではありませんからね」

「父上の出資で店をやるのでは独立になりませんもの。事業の原資は重要ですのよ」


 それを知ったイベリスちゃんとインスさんも、ハンバーガーを美味しくするためにホリンの力を貸りたいって、そう言っていた。


 ハンバーガーが美味しくなるなら、あたしは賛成。ホリンの魔法は、船ごと空を飛んでみんなのご飯を美味しくする幸せの魔法だった。


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