・男だけの旅 - イベリスちゃんとモクレンの夜 -
スイセン王の許可と紹介状を手に入れると、次に2人はイベリスちゃんとインスさんのところに向かった。
イベリスちゃんは今はお城にはいなくて、城下町や周辺の農村に出ていて、そこでブッケンとかケーヤクってお仕事をしているそうだ。
よくわからないけど、そのブッケンの力で、ハンバーガー屋さんにぴったりの建物を手に入れたんだって。
ロランさんとホリンは、いずれ記念すべき一号店になるその建物を訪ねた。
時刻はお昼頃。イベリスちゃんたちがちょうどエイギョーから戻ってきたところに、運良く会えたって言っていた。
「というわけでな、バーガー屋の準備中に悪ぃけど、俺と一緒にベルさんを助けてやってくれねーか?」
「まあっ!? つまりそれは……ムギちゃん師匠とのっ、南国旅行ってことですのーっ!?」
「いや、重要なのはそっちじゃなくて……アイツと発想が全く同じなのな……」
「陛下の許しが出たというならば、自分から言うことはありません。コムギ様やホリン様が自分たちにして下さったことを、今度はサマンサの民にされるというならば、断る理由はありません」
ホリンが言うには、インスさんが前より明るくなっていたって言っていた。
インスさんはイベリスちゃんと一緒の夢を見れて、今幸せなのかもしれない。
「ええっ、それを知ったら加わらないわけにはいきませんわ!」
「今度は自分たちが人を助ける側に立ちます。姫様ともども、このインセンス喜んで参加いたします」
説得が済むと、ロランさんとホリンはスケジュールを聞いてから、今度は港町モクレンに向かった。
・
モクレンのあの海賊酒場を訪れると、ユリアンさんはポートヘイブンを先日出たばかりだった。
間が悪い。普通はそう思うけど、ホリンがいればそうとも言い切れなかった。
「こんなことならテレポートを温存しておくべきでしたね」
「そうですね、ですが過ぎたことです。それよりもホリン、これから一緒にカジノでもどうですか?」
「それ、田舎者の俺が行っても大丈夫なところですか……?」
「大丈夫。旅をするようになってから、貴方はだいぶ垢抜けてきましたよ」
「ホ、ホントですかっ!?」
え……? それはどうだろう……。
うーん、でも初めてブラッカの町に行った時よりは、ずっと頼れるようになったかな……。
ともかくそんなわけで、2人は今日の旅を終えて港町モクレンに滞在した。
まだ夕方にもなっていないのにウサギさん着ぐるみを着たお姉さんのいるカジノに行って、凄く楽しんだんだって。
え、勝ったかどうか?
カジノって、勝ったり負けたりがあるの……?
勝ったとは聞いてないよ。
だからきっと、負けてもいないんじゃないかな。わかんないけど。
「俺、ロランさんと一緒に旅するのが夢だったんです。俺っ、今すっげー楽しいですっ!」
「そういう言葉は、コムギさんにかけてあげなさい」
「そんなのガキっぽいって言われそうだから嫌ですよ!」
「私からすれば、貴方もコムギさんもかわいい子供のようなものです。それで、コムギさんとは、どのレストランに?」
「あの店に!? それいいですねっ、案内しますっ!」
「わかりましたから、前を向いて歩きなさい、ホリン」
楽しかったって、ウザいくらいにホリンに自慢された。
あたしの前でもロランさんにはワンコなんだから、2人だけで旅行なんてしたら、それはもう凄い忠犬ムーブだったんだろうなぁ……。
2人はあのレストランで魚料理を食べて、あたしが泊まれなかったあのアシカ亭で夜遅くまでコインを賭けて遊んだんだって。
いつかあたしも行ってみたいな、カジノ……。