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・はんばあがの試食をしよう! - 力50アップ(24時間) -

「なんかね、不思議な力を使って調べてみたらね、そのハンバーガー、人の疲労を癒す効果と、力を一時的にだいたい、一般人の場合で6倍にする効果があるみたいなの……」


 なんて言っても信じてもらえるような気がしない……。


「ほう! 疲労を取るだけではなく力まで増やすのか!?」

「さすがはムギちゃん師匠ですの!」

「え、信じるのっ!?」


「どちらにしろ試せばわかることだ。さあ行くとしよう」

「ど、どこへ……?」


「外に決まっている。あの湖に石ころを投げてみるとしよう」


 そういうことになったみたいで、あたしたちは軒先に出た。

 あたしはベルさんとイベリスちゃんと並んで、石ころを右手に持って湖に構えた。


 そして、投げてみたんだけど……。


「む、むぅ……っ」

「ムギちゃん師匠が一等賞ですわ! うちが惚れただけのことはありますのよっ!」


 1番があたし、2番がイベリスちゃん、3番がロベールさんになった。


 ベルさんはまた石ころを拾って湖の彼方に投げていた。

 けれど50mくらい先の湖に波紋ができると、納得がいかない様子で片手で頭を抱えた。


 そこに配達に出ていたインスさんが台車を引いて戻ってきた。


「コムギ様、配達より戻りました。労働者たちは昨日に続き、夜が更けるまで作業を続けるつもりのようです」

「ふふっ、がんばって下さると張り合いがありますわ」


「あっ、こんなことしてないでハンバーガーを仕上げなきゃ! インスさんっ、こっちこっちっ!」

「はて、はんばあが、とは……?」


 あたしは石をもう一投するベルさんに悪いことをしたなと思いながら、インスさんを厨房に招いた。


 何も言わなくともイベリスちゃんが新しいハンバーグを焼いてくれた。

 あたしは残りのハンバーグを使って、インスさんの分のハンバーガーを仕上げた。


「疲れたでしょ、どうぞっ!」

「おお、新作か、きっと彼らも喜ぶ!」

「ぶったまげますのよっ、インセンス!」


「姫様、言葉はもう少し丁寧に――むっ、むぐっ……!? う、美味いっっ!!」

「ほらぶったまげましたのっ!」


 あたしとイベリスちゃんは、やってやったと笑顔を送り合った。

 インスさんは特製チーズバーガーにがっついて、あっという間に食べ終えてくれた。


「コムギ様……貴女が、神か……?」

「ええーーっっ、ただの田舎のパン屋さんですよーっ!?」

「そうですのっ、ムギちゃん師匠は神! もはや崇拝されて当然の神様、精霊様ですのっ!」


「現場でがんばる彼らに、早くこれを食べさせてやりたいな……。何か手伝えることはないのか?」


 お手伝いのベルさんはまだ戻ってこない。

 まだ石を湖に投げているんだろうか……。


『君のパンの秘密を明かしてやってはどうだ? 食べるだけでじわじわレベルが上がる物だと言えばいい』


 で、でも……。

 そのことを話したら、あたしますますベルさんに気に入られて、サマンサにきてくれって迫られちゃうんじゃ……。


『その特製チーズバーガーの効果を彼が知った時点で、既にそれは始まっていることだろう』


 そ、それもそっか、あはは……。

 攻略本さんはあたしの考えなんで全部お見通しだった。

 だって、攻略本さんは元々あたしだったんだから。


「ハンバーグを焼く手が足りないの、インスさんも外で焼いてくれない?」

「はっ、喜んで手伝おう。はんばあが、本当に素晴らしい食べ物だ……」


「ええそうねっ、王都で売ったら大儲け間違いなしだわっ!」

「姫様、姫様は姫様であり商人ではない。と、俺は思うのだが……」


「嫌よ、お姫様に自由なんてないじゃない! 商人の方がずっといいわ!」

「そうかもしれないが、両陛下のお気持ちも、もう少し……」


「イーヤッッ!!」


 なんかケンカが始まりそうだったから、あたしは予備のフライパンを用意するとインスさんを連れて外に出た。


 そしていつもより強力なフレイムの魔法を草木の少ない湖畔に放った。

 そこにベルさんも加わり、2人は湖畔でハンバーグを焼いてくれた。


「自由に憧れる気持ちなら俺にもある。王位など投げ捨てて、ここで農民として暮らしたいと思った。玉座も権力も人を幸せにしてくれる物ではないからな。だがあるべき者にこの王位を返すまで、それも叶わん」

「ロベール陛下、その話、もう少し詳しくお聞かせ願えるか?」


「もちろんだ、インセンス」


 仲良くやれそうだった。

 あたしはイベリスちゃんががんばる厨房に戻り、労働者のみんなのために特製チーズバーガーを作っていった。

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