・はんばあがの試食をしよう! - 実食! -
熱々のハンバーガーを丸ごと一つ差し出すと、ロマちゃんは大きく口を開けてそれを飲み込んだ。
するとロマちゃんの顔が至福にだらしなくとろけた!
透け透けのスライムボディの中で、斜めになったハンバーガーが少しずつ解かされてゆくのが見えた。
「これは……っ」
「どうかな、ベルさん?」
待ち切れなかったみたいでベルさんは自分の分を手に取って、王様なのに大口を開けてかぶりついてくれた。
食べるなりベルさんは驚きに固まって、それがジワジワと感動に変わってゆくようだった。
「これはもはや、別物だ……。レシピは同じだというのに、素材と料理人が変わるだけで、こうまで昇華されるものなのか……」
しょうか?
お肉をグニュグニュにしているから……うん、確かに消化には良さそうだ!
「へへへ、凄いでしょ、アッシュヒルの食材!」
「う、うち、これだけずっと食べていたいですわ……。朝昼晩にこれを一つずつ食べられれば、他は何もいりませんのっ!」
「そんなに!? ありがとうイベリスちゃん! あたしも食べてみよっとっ!」
やっぱり少し食べにくい気がしてならないハンバーガーを手に取った。
ベルさんのまねをして、大きな口を開けてそれにかぶりついてみた。
そしたら――あたしも感動した!!
パンとハンバーグ! それにトマトとチーズ! この組み合わせ完璧だっ!!
ゴマの風味のあるやわらかいパンの中に、やわらかいハンバーグとチーズがあたしを待っていた!
トマトの酸味がお肉ともチーズともよく合って、青菜がやさしく舌を受け止めてくれた!
「あ、あたしも……朝昼晩、これでいいかも……」
あたし、ハンバーガーさんのことを舐めてた!
こんなに美味しい組み合わせがあっただなんて、パン屋として勉強不足だった……!
「あら、何かしら……?」
「どうした、イベリス姫?」
感動していると、イベリスちゃんが首を傾げながら肩を回し始めた。
両手を上げ下げしたり、足踏みしたり、首を回したりするものだから、一瞬おかしくなったのかと思った。
「む……。これは……ほう、なるほど……」
「ベルさんも何やってるのっ!?」
さらに戸惑ったのは、ベルさんがイベリスちゃんのまねを始めたことだった!
えっえっ、何……っ!?
さらにロマちゃんまで、ぽよんぽよんと跳ねたり、左右に飛び回り始めた。
『コムギ、君のハンバーガーなのだが……。一つ鑑定してみるといい』
「えっ、これハンバーガーが原因なのっ!? ご、ごめんみんなっ!」
いったいどうなっているのと焦りながら、あたしは自分の料理に勇者の力を使った!
そしたら……。
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【コムギ特製・肉厚チーズバーガー】
【特性】[濃厚][ふわふわ][もりもり][魔法の力]
[疲労値ー50][力50アップ(24時間)][EXP+25]
【アイテムLV】10
【品質LV】 12
【解説】2つ食べても効果は重複しない。
ムキムキにはならないが、物を壊さないように注意。
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えっと……攻略本さんが言うには、能力値10で平均的な一般人の能力だそうだから……。
10+50で60……つまり、筋力6倍っ!?
「なんだか不思議ですわっ、今なら空も飛べそうな気がしますのっ!」
「アッシュヒルを訪れるために、昨晩はかなりの無理をしたのだが……妙だ。身体のキレが急に良くなった」
ど、どうしよう……。
『隠す必要はないだろう。というよりも解説にある通り、物を壊される前に説明をするべきだ』
それもそうだね……。
あたしは攻略本さんの助言にうなずいて、説明の言葉を考えた。
「あ、あたしね……少し、不思議な力があってね……」
「わかったぞっ、これはこの聖剣チョコクッキーソードと同じ現象なのだなっ!?」
「まあっ!?」
「う、うん……」
あたしが知らないうちに、チョコクッキーソードが家宝から聖剣に昇格されてる……。