表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

163/198

☆ふわふわのバンズを焼いてハンバーガーを作ろう! - 我の妻になってはもらないだろうか? -

 食パンが焼き上がると、イベリスとロマちゃんが直売所に運びに行ってくれた。

 あたしとベルさんは店に残って、そろそろ頃合いのバンズに白ゴマを乗せていった。


 ゴマだけ一粒食べてみたら、香ばしくて粒々していて美味しい。


「ゴマを1粒1粒つまんで食べる人を見たのは初めてだ」

「え、食べ方間違ってた?」


「美味いのは認めるが、あまりそのまま食べるものではないな」

「そうなんだー? でもこれ美味しい! 口にザーッて流し込んで、もしゃもしゃ食べてみたくなるくらいっ!」


「……バンズを焼かなくていいのか?」

「あっ、忘れてた! 手伝って、ベルさんっ!」


「もちろんだ」


 あたしはゴマを乗せたバンズを、ベルさんと一緒にパン焼き釜に入れて、またフレイムを燃料室に放った。


「ところでコムギ」

「うん、なーにー?」


「あの話の続きだが……」

「あ、ゴマの話?」


「我の妻になってはもらないだろうか?」


 ……へっっ?!

 あまりに唐突な話に、あたしは素っ頓狂な声を上げてベルさんに振り返っていた。


「すまない、君に王妃の地位は約束できなくなってしまった」

「えっ、なっ、つ、妻っ、王妃っっ?!」


「我は王位を、ある人に譲ろうと思っている。だが君のような女性こそサマンサ王家に必要だ」


 ベルさんは本気だった。

 いつだって真面目な人だから、ベルさんがこんなたちの悪い冗談を言うはずもなかった。


 ベルさんはあたしに迫り、あたしはベルさんから後ずさった。

 逃げ場を失ったあたしは、知らず知らずのうちに壁へと追い込まれていた。


挿絵(By みてみん)


「コムギ、君が欲しい」

「えっ、ええええーーーっっ?!」


「君とホリンが惹かれ合っているのはよく知っているが、もはや理性ではこの問題は解決できぬ。ホリンとの友情にヒビを入れてもかまわん。我の妻になってくれ、コムギ」


 背の高い銀髪の貴公子様が、壁に両手を突いてあたしの左右を塞いだ!

 あっああっあたしっ、これ知ってる! 壁ドンッ、壁ドンッだ!?


「あ、あの……ベルさん……」

「ホリンには先日、君を奪うと宣戦布告をさせてもらった」


 えっ!?

 あ、そういうわけだったんだ……。


 だからホリン、サマンサから帰ってきてから様子が変だったんだ……。


 なんか胸がドキドキする……。

 えっと、これは、どういう感情……?


「今この場で答えを出せとは言わん。だがこれだけは言っておく」

「な、なに……?」


「どんな手を使ってでも君を奪い取る。こんなに素晴らしい女性を誰かに渡してなるものか」


 そう言いながらベルさんはあたしの手を取った。


 あたしはそれにビクッて震えちゃったけど、だけど相手はベルさんだった。

 女性恐怖症のベルさんも、自分から触れてきたのに小さく震えていた。


「ベルさん、なんか震えてないですか……?」

「き、気のせいだ……」


「大丈夫ですよ。あたし、ベルさんを裏切ったりしませんから。ひゃっっ!?」


 そう伝えると、ベルさんがさらに距離を詰めてきた!


「ますますホリンには渡しがたい……。ヤツめ、己がどれだけ恵まれているのか、本当にわかっているのか……?」


 どうしよう……。

 若い王様にこんな情熱的に迫られたら、普通ならイチコロだ……。


 しかも相手は黄金の国の王。

 ロランさんの弟で、超イケメン! 普通なら乗る話だ……。

 

「せっかくだ、もう1つの事情も明かそう。これは君に対する挑戦状となるが……」

「え、あたしにも、挑戦状ですか……?」


「我は兄ロラン・サマンサを追ってやってきた。我の目的は、兄に王位を返還し、兄をサマンサに連れ帰ることだ」


 え、それは困る!

 ロランさんにはうちで暮らしてもらう予定なんだからっ!


 あたしはつい、ベルさんに強い目線を返していた。


「やはりここにいるのだな?」

「う……っ」


「隠さずとも良い。ホリンのあの剣は、達人である兄の技だ。ホリンと親しい君のことだ、兄ともさぞ仲が良いのだろうな」

「え、ええー、な、なんことかなぁー……?」


「君が2階のあの部屋から逃がした相手は、ロランという名の男だ。強く、賢く、公平で、清廉潔白な理想の王だった」


 あ、ホリンそっくり……。

 ベルさんがロランさんに心酔する姿が、あたしにはホリンに重なって見えた。


 でもロランさんはあたしたちアッシュヒルのものっ!

 返せと言われても、今さら返せませんからーっ!


 って、言うわけにはいかなかった……。


「我が兄、ロランは返してもらう。兄上はサマンサに必要なお方だ」

「どうかな? その人が帰りたがるとは、限らないんじゃないかな……?」


「ほぅ……!」

「あたしはその人が暮らしたいところで暮らすべきだと思うよ! 誰のことかわからないけど、でもっ、アッシュヒルの仲間の1人だったとしたら、あたしだってベルさんに渡さないからっ!!」


 ロランさんはあたしたちのもの!

 絶対に絶対、サマンサには返さない!


 あたしとホリンは、ベルさんに2つの挑戦状を突きつけられていた!

挿絵・しーさん

 しーさんいつもありがとう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ