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・ふわふわのバンズを焼いてハンバーガーを作ろう! - はんばあが? -

 なんか急に顔が熱くなってきて、あたしは居間に寄り道すると水瓶で顔を拭った。


 まだ熱い。

 変に熱い……。

 全部ホリンのせいだ……。


 あたしは頭を振り払い、顔をピシャーンッと叩いてから、みんなが待つ厨房に入った!


「まあっ、サマンサでそんな大冒険が……!?」

「うむ、あの時はもうおしまいかと思った。しかし彼女は諦めなかった。そしてあのおぞましい廃坑山で生まれたのが……。この聖剣チョコクッキーソードだ」


「その鞘の中っ、まさかのクッキーだったんですのっ!?」

「だがこう見えて途轍もない業物だ。研ぐように命じられた鍛冶師は、首を傾げていたがな」


「驚きましたわ……。ムギちゃん師匠は、どこまでうちらの予想の斜め上を行かれるのでしょう……」

「驚かせるつもりはないんだけどね。ごめん、遅くなっちゃったっ!」


 あたしがやってくると、2人と1匹はパンを捏ねるのを止めて迎えてくれた。

 ベルさんはイベリスちゃんともう打ち解けていて、スライムのロマちゃんも普通に受け止めていた。


「念のため言っておくけどベルさん、ロマちゃんは良い子だから、斬ったりしたらダメだよ……?」

「フッ……このスライムがパン生地の上で跳ねる姿を見たときは、いったい何事かと思った」


 ベルさんがロマちゃんを撫でると、気持ちよさそうにロマちゃんの目が細くなった。


「あはは……あたしも知り合いにいきなりロマちゃんを差し出されたときは、どうしようかと固まっちゃいました……」

「それよりムギちゃん師匠! 先ほどロベール様から提案があったのですが、バンズという物を焼いてみませんか!?」


 ……パンツ?


「サンドイッチばかりでは労働者も飽きる。そこで我は、ハンバーガーにすることを提案する」

「はんばあが? それって、サマンサのパンですか?」


「ああ。この提案のためにシェフに作らせた物を持参した。食べてみてくれ」


 ベルさんは大きな葉っぱで包んだ物を打ち台に置いて、中をあたしたちに見せてくれた。

 なんか面白い形のパンだった。


 上のパンにはゴマが乗っていて、間にはお肉みたいな物とチーズとトマトと青菜がはさまっている。

 お肉がなんか謎だったけど、美味しそうな匂いにつられて食べてみた!


 そしたらそのお肉、すっごくやわらかかった!

 香ばしいゴマの香りがするパンと、中の食べやすい具材が凄く合った!


「これっ、美味しい!! でもこのお肉どうなってるのっ!?」

「それはハンバーグだ。細かく潰して筋を切った肉と、塩胡椒とタマネギ、卵、少量のパン粉を練り込んで焼いたものだ」


 へーー、だからこんなにやわらかいんだ……。


「うっ、うまぁぁぁーですのっっ!! これっ、ムギちゃん師匠が作ったら、もっともっと美味しくなるはずですわっ!」

「無論、手土産にミートミキサーを持参した。これは我からの気持ちだ、大切にしてくれ」


 ベルさんがあたしの手を取って、こちらを見つめながら銀色のどっしりした変な機械を譲ってくれた。


「その手に取っている物が、アクセやお花なら様になる光景ですのよ……」

「わぁぁぁーっ、凄い便利な道具もらっちゃった! ありがとうっ、ベルさんっ!!」


「ムギちゃん師匠は、好みが独特ですの……」


 だってお花は活けても枯れちゃうし、宝石なんてご近所のモンスターを倒せばいくらでも手に入るもん。


「それでこれっ、どうやって使うのっ!?」

「実演して見せよう。ハンバーガーに必要な具材、レシピはこちらで全て用意してきた。君はその腕前を披露してくれれば良い」

「そ、そこまでしますの……?」


「ああ……なぜならば昨晩、ホリンに自慢されたのだ! コムギの焼き立てのパンは絶品だと! あれを食べずに死ぬのは、人生の損であるとな!」

「えぇぇ、そんな大げさな……」


「わかりますわっ! 焼き立てを初めて食べたあの日は、うちもパンをくわえたまま昇天するところでしたの……っ!」


 そこにロマちゃんまで加わって、自己主張するように高くポインポインと跳ねた。

 ここにいるみんながあたしのパンのファンだった。


「ちなみにだが、ミートミキサーはこうやって使う。シェフが言うには、筋張った肉もこれを使えばこうだ」

「わーーっっ、なにこれ不思議っ!?」

「サマンサ、驚異の技術力ですの……っ!」


 ベルさんはその後、ミートミキサーを回してお肉をニュルニュルの生パスタみたいに変えてくれた。

 だからハンバーグはあんなにやわらかかったんだって、納得しかなかった!


「あたし、ハンバーグとはんばあが作ってみたい!! レシピッ、レシピ見せて、ベルさんっ!」

「うむ、こちらがシェフに記させたレシピだ」


「あははっ、レシピなのに蜜蝋で封がされてるーっ!!」

「自国の王に頼まれたらこうもなりますわ。うふふ、まるで貴人への書簡ですわね」


 あたしは蜜蝋で閉じられた封をベリッと開いた。

 中に難しい文体で書かれたお手紙が入ってたけど、そっちは読み飛ばしてレシピだけを拾い上げた。


――――――――――――――――

 母直伝のバンズ

――――――――――――――――


・強力粉7:薄力粉1

・煎り胡麻(白)


・乳

・卵

・砂糖


・バター

・塩(少量)


――――――――――――――――


 ふーん、お砂糖も入れるパンなんだー。

 サマンサで買った固い小麦粉と、ダンさんの小麦粉を混ぜたらいいのかな……!


 よーしっ、まずはシェフさんのお母さん直伝のバンズを作っちゃおう!

 そう決めて腕をまくると、イベリスちゃんもあたしの真似をしてくれた。

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