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・偽皇后をやっつけよう! - こうして夜が明けた! 宝箱タイム! -

 それから朝を迎えて昼前となった頃、あたしたちは謁見の間に呼び出された。

 玉座には王様と、その隣には皇后様とイベリスちゃんも控えていた。


「おお、勇者たちよ! このたびは大変世話になった! 貴殿らには、いくら感謝しても足りぬ……」


 その玉座の前には、なんか思わせぶりな赤くおっきな宝箱が置かれている。

 凄く感謝しているみたいで、凄く長ったらしい感謝の言葉を王様がくれた。


「というわけで、勇者たちよ……。感謝の気持ちとして、そこの宝箱を授けよう……」

「あの、質問いっすか?」


「おお勇者ホリンよ、なんだ?」

「なんで宝箱なんすか? 普通に渡せばよくないっすか?」

『まあそう言うな。これがこの世界における、様式美なのだろう』


 よくわからないけど、そういうものらしかった。

 あたしはホリンを引っ張って前に出て、宝箱を開けた。


 中は袋に詰まった金貨の山と、賢さの実が2つだった。

 ざっと数えてみると、わかんないけど1000Gくらいはありそうだった……。


 賢さの実は嬉しい。

 これをパンにすれば、もっともっと便利な魔法を覚えられるかもしれない。


「でもあたし、お金は別に……」

「王様たちにもメンツがあるんだから、素直にこういうのは貰っとけっての」


 じゃあホリンが持ってと、あたしは金貨袋をホリンに押し付けた。


「到底これでは足りないだろう、ぜひ他にも褒美を授けたい。勇者よ、他に何か願いはないだろうか?」

「何もいらないです。あたし、イベリスちゃんをただ助けたかっただけですから」


 そう答えるとイベリスちゃんがとても嬉しそうに目を輝かせた。

 でも場が場だから、私語は控えたみたいだ。


「そう言われてもこちらも困るのだ」

「でもあたし、別に欲しい物なんて何も……」


「国を救ってくれた英雄に、金しか払わなかったなどと知れれば、国の威信にも関わることになる」

「なんでもいいから、なんか貰っとけばいいんじゃねーか?」

「えー、そう言われても、急に欲しい物なんて思い付かないよ……」


 でも王様は何かお願いしないと、納得しなそうな様子だ。

 どうしようとあたしは迷ったけど、答えのきっかけはすぐに見つけた。


 困ったときは、攻略本さんだ!

 小声でバックの中に聞いてみた。


「攻略本さんはどうしたの?」

『共に魔王を討つ仲間が欲しいと答えた。そうしたら、イベリス姫が旅の仲間に加わった』


「えっ、そういう流れっ!? うーん……あたしも、イベリスちゃんは欲しいけど……。そこもシナリオ通りにしないと、いけないものなのかな?」

『イベリス姫を仲間に加えて損はないが、問題は旅が、ホリンと二人っきりではなくなってしまうところだな』


「うん……そうなの……じゃなくてっ。ああもう、いいやっ!」


 あたしが顔を上げると、王族どころか家臣たちの注目がただのパン屋に集まった。

 そんな中であたしは、シナリオ通りを願った。


「あたし、一緒にがんばる仲間が欲しい!」


 少し正史と違うセリフだけど、こう言えばイベリスちゃんがあたしの仲間になってくれるのかな……?

 あたしは密かな期待を込めて、イベリスちゃんを盗み見た。


 そしたら……!


「でしたらうちがコムギちゃん様の仲間になりますわ! 実はうちっ、コムギちゃん様が作るパンの大ファンですのっ!」

「な、何……っ!? イベリス、だがお前は王女、それは――」


「それにうち、しがらみだらけのお城はもう嫌ですわっ! 助けて貰ったお礼に……いえっ、うちの夢のためにっ、うちはコムギちゃん様の弟子になりますっ! いいんですよねっ、コムギちゃん様!?」

「え……あ、うん……」


 イベリスちゃんって、結構強引に仲間に加入するキャラだったんだなぁ……。


「そこまで言うなら……うんっ、喜んで! あたしの弟子になってっ、イベリスちゃんっ!」


 でもこの流れは狙い通り!

 突然の王女のわがままに、王様とイベリスちゃんはさすがに揉めた。


 だけどイベリスちゃんは、助けがなければ生きてなかったと主張して、自分の道を貫こうとした!

 あたしはそんなイベリスちゃんに助け舟を出すことにした!


「まずは少しの間だけでもいいの! イベリスちゃんにお店を手伝ってもらえたら、凄く助かる! お願い王様っ、イベリスちゃんを少しの間だけあたしに貸してっ!」


 そう気持ちを伝えると、ホリンも立ち上がってあたしの隣に並んでくれた。


「陛下、俺は山奥の村アッシュヒルの風車守、一応村長の孫にあたる者です。コムギはそこでパン屋をやっていて、村のみんなに信頼されています。なので、娘をちょっとしたバカンスに出すと思えばいいんじゃないでしょうか?」


 ホリンって、こういうちゃんとした喋り方もできるんだ……。

 意外……。


「おお、貴殿はアッシュヒルの領主一族であったか」

「いや、爺ちゃんはただの名目上の村長っす」


 と思っていたら、元のホリンに戻っちゃってた。


「わかった。ならばアッシュヒルに通じる道を整備させよう。よくやってくれた、勇者ホリンよ」

「え、本当っすか……? そうしてくれたら村のみんな喜ぶし、ぜひそれはお願いしたいっすっ!!」


 確かにあの山道は今でもかなり通りにくい。

 もし整備してもらえたら、外から商人さんたちがもっとやってきて、村にお金を落としてくれるようになる。


 外の食材とかも手に入りやすくなるしっ!


「ではお父様、これよりうちは修行の旅に行ってまいりますわ。護衛は、いつものインセンスを希望しますっ! いいですわよねっ!?」

「うむ……。もうお前の好きにするといい……。お前もまた、一人の功労者なのだからな……」


「ありがとう、お父様! インセンスッ、インセンスッ、出立の準備よっ!」


 こうしてあたしたちは、スイセンでの冒険を終えて、アッシュヒルに帰ることになった。

 新しい仲間、イベリスちゃんとその従者インスさんと一緒に!


 楽しい毎日が今から目に浮かぶようだった!

宣伝となりますが、

拙作「ポーション工場」2巻が今月末30日に発売します。

2巻では書籍版では具体的に書けなかった初夜。初夜を書き下ろしました。

もし興味が湧きましたら、本作ともども応援して下さい。


それと、更新がいつも遅くなってすみません。

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