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・偽皇后をやっつけよう! - 偽皇后の正体はブヒィ! -

 あんまり眠れなかったけど疲れは十分に取れた。

 あたしたちは仮眠を終えて起き出すと、決戦の地である離宮! 王と皇后の寝室を目指した!


 まずは上に繋がる螺旋階段を登って、城の地下倉庫に通じる隠し扉を蹴り破った!


「なっ、何者だっ!?」

「いや待てっ、貴方は……イベリス姫に、インセンス……? なっ、皇后様っ!?」

「そのお姿はいったい……っ!?」


 倉庫の番をしていた兵士さんたちは、変わり果てた姿となっていた皇后様に驚いた!


 でもさっきの姿よりはマシだ。

 顔を拭って、髪を整えたらお化けみたいな印象はなくなっていた。


「皆の者、道を開けよ! この方こそ本物のリシェス皇后にあらせられる!」

「わらわはずっと、城の地下に監禁されておったのじゃ……!」

「偽者はっ、偽お義母様はどこっ!? いまからうちら、偽者の正体を暴きに行くのっ、教えて!」


 あたしたちの道を阻む者は1人もいなかった!

 いつも通りなら寝所にいると、攻略本さんの話通りの居場所を教えてくれた。


 そうとわかったので地下倉庫を駆け上がり、貴族も許可なしに入ることができない離宮ってところの入り口に迫った。


「おおっ、リシェス様……! やはりあの女狐めは偽者でございましたか……!」


 融通の利かない親衛隊は、その場にいた王の小姓を名乗るお兄さんが説得してくれた。

 彼に導かれて離宮に繋がる通路を抜けると、その先は庭園とそこを走る回廊だ。


 回廊は王族の暮らす離宮邸宅に繋がっている。

 道を突き進むあたしたちの前に、別の親衛隊の人たちが道を塞いだ。


 だけどそこも、攻略本さんの語るシナリオ通りだった!


『鏡の出番だ、やつらの正体を暴け!』

「イベリスちゃんっ、あの人たちに例の鏡をっ!」

「仰せのままにですわ! ミラー・レイよっ、あの方々の真実を暴き立てなさいっ!!」


 ミラー・レイが青白い光を放って、親衛隊に化けていた怪物を照らした!


 その正体はなんと、イベリスちゃんの馬車を襲っていたあの怪物、サムラウヨロイたちだった!


「ここは自分らにお任せを。姫様、どうかご武運を」


 ヨロイたちはインセンスさんと兵隊さんに任せて、あたしたちは離宮内部に突入した。

 後ろの方では剣と剣がぶつかる怖い音がしたけど、今はそれどころじゃない!


 イベリスちゃんの背中を押してあげながら、エントランスホールを駆け上がった!

 そして王と皇后の居室を抜けて、その奥にある寝所に乗り込んだ!


「なんだ、騒々しい……」

「お父様、すぐにこちらにっ! そのお義母様は偽者ですのっ!」


 すっごく大きなベッドに、おじさんとおばさんが眠っていた。

 小綺麗だけど、王様や王妃様の格好をしていないと、ただのお金持ちの夫婦にしか見えなかった。


「その話ならば聞いている。リシェスの話によると、お前は妄想に取り付かれているそうだな」


 偽皇后は今、王様……っぽい雰囲気のおじさんの首にしがみついている。

 これって、いつでも殺せると脅しているのかな……?


 勝ち誇った冷たい目がイベリスちゃんを冷笑していた……。


「お父様はその化け物に頭をおかしくされているのですっ! 正気に戻って下さい、お父様!」

「おお、なんと酷いことを言う娘じゃ……。陛下、ここはひとたび、イベリスを牢屋に入れてはどうじゃろう……?」


 王様はちょっと変だった。

 自分の娘を牢屋に入れろという提案に、偽皇后にうなずいてしまっていた。


「リシェス、お前の言う通りだ、お前の言うことなら間違いない……」

「しっかりして、お父様っ!!」


「イベリス、お前はしばらく、雑居牢に――」

「ならばご自分の目でっ、本当のお義母様を見分けてみたらよろしいですわっ!」


 攻略本さんの台本通りにそこへ、本物の皇后様をホリンが手を引いて登場させた。


「あなた……」

「リ……リシェス……? なぜ、そこにもお前がいるのだ……?」


 王様は変わり果てた皇后様の姿に驚いて、ベッドからゆらゆらと立ち上がった。

 偽皇后を自分の意思で引き剥がして、何かに惹かれるように、本当の皇后様に寄っていった。


「待ってあなた! そんな薄汚い垢まみれの女が、この国の皇后のわけがないであろう!?」

「それも、そう、だろうか……」


 王様は立ち止まり、偽皇后の方に振り返った。


 だけどあたしたちからすればそれで十分。

 危険な魔物から、王様を引き離せたんだから!

 後は鏡を掲げて、真実の姿を暴くだけ!


「何をしている、我が君よ!? こっちに戻れ、はよこっちに――な、なんじゃこの光はっ、グ、グェェッッ?!」


 あたしは例の鏡を偽皇后に向けた!

 鏡には――うわぁっっ、本当に豚みたいな姿の醜い怪物が映っているぅっ!?


 鏡が真実の姿を暴き立て、偽皇后は豚の顔を持った緑色の巨人に変わっていった!


「う、うっげ……あれと、毎日寝てたのかよ……」

「なっ、なっ、なっ、なっ、なんだとぉぉぉぉーっっっ?!!」


 王様が絶叫するのも当然だった。

 顔で人を差別する気はないけどっ!

 これと毎日キスしたり、一緒に寝たりしてたなんて、信じられない!!


 王様はあまりの衝撃に口を開けっぱなしにして、ふらふらと膝から崩れ落ちた……!


「酷い、酷いわっ、わらわは国を裏から操り、人間どもを根こそぎぶっ殺そうとしただけなのに……っ。テメェらのせいでっ、こっちの予定ぶち壊しじゃねぇかよぉっ、ンダヨォクソァァッ?!」


 本当の皇后様が王様を弱った体で支えた。

 ホリンが雷神の剣を抜いて、その緑色の怪物に突き付けた。


 え、あたし?

 あの滅びの日を乗り越えたホリンが、こんなのに負けるわけないし。

 イベリスちゃんを背中でかばうだけにしておいた。


 それにだって、これ以上英雄扱いされたら困るもん……。

 あたしは今だってただのパン屋なのに。


「おいそこのクソトロール。よくもイベリスを苦しめてくれたな?」

「ンァァァッ、ザコはすっこんでらァァッッ!!」


「なら覚えとけ!! 俺は風車守のホリン、お前を今から叩っ斬る男だっ!!」

「やってみろよ、ザコの貧乏人の風車守が! お前の腸で、つまんねぇこの部屋を彩ってやルァァァッッ!!」


 序盤のボスと挑発し合ってないで、早く終わらせればいいのに……。

 そう思ったあたしは、早く行きなよってホリンの背中を軽く押した。


「押すなよバカッッ?!」

「死にさらせァ、クソガキィィッッ!!」


 ホリンの頭をトロールは鷲掴みにしようとした。

 だけどホリンは身を屈めて、滑り込むようにトロールの視界から姿を消した。


「き、消えた!? 卑怯だぞ、クソガキッッ!!」

「うるせーっ、イベリスたちを苦しめやがってこのクソ野郎!! 俺たちの国から消えて居なくなれ、クソトロールッッ!!」


 ホリンは敵の背後で力をためると、振り返るトロールの腰を薙ぎ払った!

 するとみんなから驚きの声が上がっていた!


 ホリンはなんと、たった一撃で分厚いトロールを真っ二つにしていた!


「そ……そんな、この俺が、バ、バカな……。田舎者、お、恐るべし……」

「田舎者じゃねーよっ!! 田舎者だけどよーっ!!」


 トロールは光となって、拳大もある巨大なエメラルドになっていた。

 その他に残ったのは、みんなの深い沈黙だけだ。


 外で繰り広げられている戦いの物音も、いつの間にかすっかり静まっていた。


「えっと、終わったみたい。この国は、勇者ホリンの活躍で守られました! めでたしめでたし!」

「意地でも俺に手柄を着せるつもりらしいな、お前……」


「へへへーっ、おつかれさま、ホリン! かっこよかったよっ!」

「あ、ああ……っ、ありがとうっ、ホリン様、コムギちゃん様……っ! お義母様も無事に戻ってきて、うち……心よりお二人に感謝していますわ……!」


 こうしてあたしたちの国と、イベリスちゃんたち一家の幸せが守られた。

 めでたしめでたし。


 そうしてこうして、あたしたちは美味しいご飯を食べて、ふかふかのベッドで一晩を明かした。

更新日なの忘れていました……。

これからも楽しく続けます!


ぼすとろ……。

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