・偽皇后をやっつけよう! - 発見! 真の皇后様! -
え、こんなところに牢屋……?
歩いていると突然、通路の右手に鉄格子と小部屋が現れてあたしたちは驚いた。
牢屋だった。その牢屋の中に、あたしたちは不気味な人影を見つけてしまった……。
攻略本さんがほのめかしていたお化けって、ま、まさか……。
「そこにいるのは誰だ……?」
その囚人は寝台から起き上がり、あたしたちの方にゆらりゆらりと寄ってきた。
服は粗末なぼろ布も同然の物で、顔にも同じ布がかぶせられている。
両手と片足には、恐ろしい鉄の枷をはめられていた……。
「その声……えっ、お義母、様……?」
へっ……!?
こ、これがっ、皇后様……っ!?
「おおっ、イベリスッ、イベリスなのかっ!? だがなぜ、こんなところに……」
「リシェス様、姫様の従者インセンスもここに」
「おおっおおおっ、インセンスッ、そちがいれば百人力じゃ! ああ、わらわはもう、ダメかと思ったぞ……」
イベリスちゃんとお義母さんは、牢屋越しに抱き合って無事を喜び合っていた。
見てたらちょっとだけ、あたしもウルッときた……。
「で、お前は何やってんだ……?」
「へへへ、聞いてくれる?」
邪魔するのも悪いから、あたしは牢屋の隅っこにしゃがみ込んでコツコツやることにしていた。
ホリンはあたしをいぶかしんでいたけど、例のアレを見せると明るい笑顔になった!
「じゃーんっ、脱獄といったらこれでしょっ!」
「懐かしいな、それ……。相変わらず非常識な切れ味してんのな……」
鉄格子の下の2本を斬ると、あたしはホリンにあの【虫も食わないビスケット・ナイフ】を渡した。
するとホリンは両手を上げて、牢の上の部分を切り始めてくれた。
「ムギちゃん様? 何をやっているんですの……?」
キンッと冷たい音を鳴らして、すぐに鉄格子が1本切り取られた。
「なっっ、何っっ!? ホリンッ、お前は、鉄を切ったのか……っ!?」
「うんっ、ホリンは鉄でもなんでも切っちゃうんだよっ!」
「おい、コムギ……」
あたしを預言者扱いした仕返しをしてやった!
見るとイベリスちゃんと抱き合っていた皇后様もこっちに寄ってきていた。
ホリンは鉄格子をもう1本切ると、牢屋の中に入った。
「えっと、皇后様、俺は風車守のホリン、一緒にいるのはパン屋のコムギ。皇后様に危害は加えないですから、あまり動かないで下さい」
ホリンは顔の布袋を外す前に、まずは皇后様の手枷を切った。
両手が自由になると、皇后様が布袋に手をかけて、隠されていたその姿を露わにした。
「おおっ、牢が、枷が……っ!? ああっ、ありがとう、ありがとう……っ! 本当に、わらわはもう、ダメかと思って……っっ」
半月前からずっとここに監禁されていたのかな……。
皇后様は髪もボサボサで肌もボロボロの酷い顔だった。
だけどあたしにはやさしそうな雰囲気の、良いおばさんに見えた。
「しかし、なぜここがわかったのじゃ……? 王族すら知らないこんな場所に、なぜそなたたちが……」
「はい、それは予言ですっ! あたし、予知能力者なんですっ!」
「予知、じゃと……?」
「そんなことより聞いて下さい! 今、すっごく大変なことになっているんです! それでよかったら協力してくれませんかっ!?」
見るからにやつれていたので、あたしはバッグの中からとっておきを取り出した。
最後の1つだったけど、元気になってほしくて、サマンサのチョコレートの残り一欠片をあげた。
「詳しく聞こう。おお、これは……サマンサ産のチョコレートじゃなっ!? おお、感謝するぞ、パン屋コムギよ……」
あたしたちは事情を皇后様に説明してから、これから始まる決戦に備えて休憩した。
不意打ちをしかけるなら、偽皇后が寝所で休んでいる時刻がいいということになったからだ。
あたしたちはしばらくの間、地下の牢獄で仮眠をして過ごすことになった。
お腹、空いたなぁ……。
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