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・超効率攻略も始まりました - どんどん進む! どんどんやっつける! -

 鏡の塔。いったいどんなところなんだろうと、ちょっと期待した。

 だけどいざ鍵を回して中に入ってみると、別の意味で衝撃だった。


 あたしとイベリスちゃんはただちに塔の外に後退することになった。


「お前らのパンツ見えるな、これ」

「わざわざそれ言うなぁぁーっっ!!」

「最低ですのっ、この従者っ!!」


 てっきり鏡に囲まれた迷路かと思ってたのに、鏡があったのは床と天井だけだった……。

 絶対!! この塔を作った人、エッチなおじさんだ!!


「ホリン様、姫様のパンツをのぞいたら、命はないものと思え」

「インスさん、そこんところガチなのな……。見るわけねーだろ、んなもん……」


「貴様っ、姫様のパンツは無価値と言ったかっ!?」

「んなこと言ってねーよ……」


 まあ、いっか。

 どうせあたしとイベリスちゃんは後衛だし、こうなったら2人を盾にしてガンガン進んでやる!


「行くよっ、みんな! 今から30分で攻略しちゃうんだからっ!」

「ヤケクソ入ってるだろ、お前」


「当たり前だよっ」

『では始めよう。私は攻略本、既に最短ルートはこの頭の中にある。まずは……塔には入らず裏に回り、宝箱を回収する、さあ行け、コムギよ』


 凄い、攻略本さんがなんかパワーアップしてる!

 あたしは戸惑うみんなを引っ張って、塔の裏に隠された宝箱まで進んだ。


「マジか……それ、俺にも見えるぞ……」

「本当っ!? じゃあじゃあ、ホリンが開けてみてっ!」

「なんの話ですの……? わっっ、ひ、光がっ、えっ、えぇぇーっっ!?」


 何もないところから綺麗な【真鍮の杖】が現れて2人は驚いた。

 あたしはホリンから杖を受け取って、それをイベリスちゃんに手渡した。


「イベリスちゃん手ぶらでしょ、これあげるっ!」

「あ、ありがとう、ムギちゃん様……。わぁ、ピカピカで綺麗な杖ですわ……っ!」

「本当に、聖女だったのか……? なんという奇跡……」


 さらに誤解された。

 でももう、こうなったら別にいいもん!


 あたしは攻略本さんに導かれて、塔の入り口に戻るとホリンたちを先に行かせた。


「そこ右! 短い階段下って左の部屋にお宝! 開けたら上に戻るよっ!」

「何考えてこんな住みにくい塔作ったんだろな……」

「恐らくは、宝であるミラー・レイを隠すのが目的だったのだろう」


 2つ目の宝は『360G』だった。

 だけどあたし、お金は別に……。


「うふふふ、良い響きですわ……。ジャラジャラ鳴ってますのよ……♪」

「イベリスちゃん、お姫様なのにお金好きなんだ……?」


「モクレン生まれでお金が嫌いな人なんていませんわ」

「間違ってはいない。臨時収入があれば、賭場に入り浸れる」


 お金はイベリスちゃんに預けることにした。

 目を輝かせてジャラジャラさせているところは、ビー玉を大切にする子供のように見えた。


「皮の盾!」

「おおっ、それっ、80Gもするやつだ!」


「イベリスちゃんにあげる!」

「くれるんですのっ!? ありがとう、ムギちゃん様!」


「さらにさらに……炎の秘薬! なんと、溶かして飲むと、炎ダメージ1%カット……? よくわかんないけどゲット!」

「パンにするんだろ、それっ! 作ったら俺にいっぱい食わせろよっ!?」


「はいはい、次々!」


 どんどん進んだ!

 どんどん進むとすぐに最上階にたどり着いて、最後の宝であるミラー・レイのある大部屋までやってきていた!


 その大部屋に入ってみた!

 すると部屋の奥に紫色のカーテンが吊されていて、いかにも思わせぶりに何かを隠しているようだった!


『コムギ、あれに電撃魔法を放て』

「え、なんで……?」


『魔物があの鏡に憑り付いている。いわゆるボスというやつだな』

「お、おーけい、ボス……。よくわかんないけど、わかったよ……?」


『ホリンは敵が現れ次第、叩き切れ!』

「ストーリーの流れ全部知ってるって、反則だな……」


 そういうことらしいので、あたしは電撃魔法をお宝ミラー・レイにビビビーッと撃った!

 当然だけどカーテンが燃え落ちた。


「ら、乱心したかコムギ様っっ!?」

「違いますわっ、インセンス! よく見てっ、鏡から何かが!!」


 けど鏡は無傷だった。

 鏡を覆う何かから黒い煙が上がり、攻略本さんが言う通り実体化していった。


 それは頭がなくて、身体に顔があるドロドロの変な魔物だった。


「な、なじぇ、わかった……っ。変化を見破られるなど、こ、こんなことはぁ、これまで、一度も……っ。だ、だが勇者よ、この俺に勝て――グギャァァァーッッ?!!」


 あたしの1.5倍も背丈のある怪物だったのに、ホリンが飛び込んで一撃グサーッと胴体を薙ぐと、断末魔を上げてボスさんは消えた。


 親指くらいのライム色の宝石が床に落ちた。

 それをホリンは拾い上げると、インスさんに止められていたイベリスちゃんに投げ渡した。


「それもコムギがくれるってよ」

「本当ですのっ!? まあ、なんて不思議な色合いなんでしょう!」


「しかし、信じられねぇくらい弱かったな」

「あはは、らくちんだったねーっ!」

「自分は、コムギ様たちが強すぎるだけかと、思うのだが……」


 だってあたしが手塩にかけて育てたホリンだもん!

 なんだかホリンと一緒なら、残りの勇者の旅も楽勝な気がしてきた!


 インセンスさんはぼんやりと光っているミラー・レイに近づき、それを壁から外して腰に抱えた。


『では次のシナリオに入ろう。これよりスイセンに引き返し、城の地下に進入する。コムギ、リターンの魔法を頼む』

「りたーん……? あっ、あの魔法ってっ、こういう時に使う魔法なんだ……っ!?」


 あたしはみんなをびっくりさせようと思って、こっちきてと手招いた。

 それからあたしは笑って、手を掲げた。


「リターンッッ!!」


 グニャリと視界が歪んで、ちょっと真っ暗になったかと思えば、あたしたちはもう塔の外に移動していた。


「えっ、えーーーーっっ?!!」

「なんと凄まじい術の、使い手……。これならば、勝てる……!」

「その魔法を使うなら、使うと先に言え……。ひっくり返るところだっただろ……っっ」


 空はまだ夕空のままだ。

 馬車でスイセンに戻る頃には、夜の始まりくらいになるのかな。


『ホリン、テレポートでスイセンまで頼む。軽い休憩の後に、城に突入といこう』


 あ、攻略本さん冴えてるっ!

 そういえば今日のホリンは、テレポートをまだ使っていなかった!


「お、おう……。お姫さんとインスさんには、ちょっと同情だな……。おーいっ、みんなちょっと馬車の中に入ってみてくれ!」


 ホリンだけを御者席に乗せて、あたしたちは馬車の席に落ち着いた。

 そしてホリンは2人に同情しながら、得意げに後ろに笑うと唱えた。


 空を飛ぶ魔法を!

 馬車は空翔ける天馬となって、あたしたちをスイセン西門へと超速度で運んでくれた!


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