表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

123/198

・幸運のアップルパイを作ろう - 配達は息抜き -

 仕込みが一段落した。

 ロマちゃんがたくさん作ってくれたパイ生地を、アイスシールド完備の地下室に運んで寝かせた。


 煮林檎をお鍋から取り出して、その甘く濃い煮汁で幸運の林檎を煮た。


 林檎の芯は、全部ロマちゃんが食べちゃった。

 幸運の林檎の種だけ残しておけばよかったと、後から気付いたけどもう遅かった。


 それからお鍋の様子を見ながら、朝に仕込んでおいたパンを焼いた。

 バターロール、バゲット、食パンの順に香ばしく焼き上げて、全部をお店に並べ終えたらやっと一息がつけた。


 ふと窓辺から空を見上げれば、太陽がもう昼過ぎの高さまで昇っていた。


「さて!」

『待て、君はやはり働き過ぎだ。少し休みなさい』


「うんっ、言いたいことはわかるよ! でもそろそろ焼かないと、パイ生地が台無しになっちゃうよ!」

『焼き終わったら焼き終わったで、君がおとなしく休むようには見えないのだが……?』


「直売所と酒場宿に届けるだけだよー!」

『困ったパン屋だ……。普通、配達は休養とは呼ばないのだがな……』


 あたしは地下倉庫に駆け下りて、ロマちゃん手作りのパイ生地を抱えて厨房に戻った!

 生地を短冊状に小さく切って、クロワッサンみたいに煮林檎を包んだ!


 たくさんの人に食べてもらいたい。

 そう思ってたから、小さいのをたくさん焼くことに決めていた。


 赤林檎のアップルパイが64個。

 幸運のアップルパイが8個。


 丁寧に整形したそれをパン屋き窯に入れたら、やっと一段落だった。


「ふぅぅ……っ、楽しかったーっ! どんなふうに焼けるか楽しみだねっ!」

『そうだな。それがパン屋の醍醐味なのだろう』


「あれ、ところでロマちゃんは……?」

『いつものところだろう』


 あたしは窯の前で攻略本さんとお喋りをして過ごした。

 居間で落ち着くのもいいけど、アップルパイが気になってしょうがなかった!


「攻略本さんっ、なんだかすごくいい匂いになってきてない!?」

『バターの香りが濃厚だ。煮林檎の甘い香りも混じっているな』


 バターをたっぷり使ったパイ生地は、すぐに甘く香ばしい香りをたて始めた。

 安心したあたしは攻略本さんを抱えてお店の方に出て、窓辺のロマちゃんの側に寄った。


 ロマちゃんはイスの上で、暖かい秋の日差しを浴びて眠っている。

 あたしはロマちゃんをイスから抱き上げて、膝の上に乗せてそこに座った。


 日光で暖まったロマちゃんは凄く気持ちがよかった。


『少し休みなさい』

「ん……そうしてみる」


 座ったら急に疲れてきたかもしれない……。

 あたしはロマちゃんをお腹と手で包んで、ちょっとだけ休んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ