表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

115/198

・鉄壁のチョコメロンパンを焼こう - 陽射しの下の安息 -

 最後のチョコメロンパンがこんがりと香ばしく焼き上がった。

 後はパンからあら熱が抜けるのを待って、ゲルタさんの酒場宿に運ぶだけだ。


「ありがとう、すっごく助かっちゃったっ! というか、フィーちゃんが手伝ってくれなきゃ間に合わなかったかも……っ」

「えへへ、おねえちゃんの力になれてよかったのです。とーってもっ、楽しかったのですよーっ」


 フィーちゃんは跳ねるように両手を上げて笑った。

 あたしもフィーちゃんに笑い返して、ふと窓辺のロマちゃんを見た。


 ロマちゃんはお昼寝中みたいだった。

 日差しや月光の下のロマちゃんは、時々宝石みたいに輝いて見えるときがある。


 今日はブラウン色に輝いていた。


「おねえちゃんのパンは特別なのです。みんなを幸せにする力があるのですよーっ」

「ありがと。みんな喜んでくれるといいねーっ」


 あ、そうだ。

 せっかく作ったのに鑑定していない。


 変な効果があったら困るから、念のためにチョコメロンパンをよく観察してみた。


――――――――――――――――――――――――――――

【鉄壁のチョコメロンパン】

 【特性】[濃厚][ふわふわ][もりもり][魔法の力][甘い香り][興奮効果]

     [身の守り5~25アップ]

 【アイテムLV】1

 【品質LV】  10

 【解説】品質LVに応じて強い効果が出る。また効果には強い個人差がある。

     食べると若干の興奮効果。

――――――――――――――――――――――――――――


 興奮効果、あったかな……?

 最初からテンション高かったし、あんまり実感ないかも……。


 あ、でも身の守りの上昇効果は前に作ったやつと少し違う!

 最低保障で5も上がるって、これって大成功のレシピなのかも!


「疲れたですかー? 疲れたのなら、ソフィーが酒場にお届けするですよ~?」

「ううん、全然平気だよ! ちょっと仕上がりを確かめてただけ!」


 心配させちゃったみたいだった。

 フィーちゃんが小さな身体であたしを見上げていた。


「ようっ、なんかすっげぇいい匂いするなっ!」

「あ、いらっしゃいホリン!」


 軒先から誰かの足音がしたかと思ったら、それがホリンに変わった。

 ロマちゃんがハッと飛び起きて、窓辺のイスからホリンを見上げていた。


「な、なんか変な色になってんぞ、お前のスライムッ?!」

「ロマちゃんはー、チョコを食べて、チョコスライムになったのですよーっ」


「チョコスライム!? そんなスライム聞いたことねーよっ?! おっ……けどこいつ、なんかいい匂いだなぁ……」


 ホリンがロマちゃんを抱っこした。

 ロマちゃんはまだ眠いのか、ホリンの胸の中で寝直した。


「でしょ~! かわいいでしょ!」

「ですよねっ、ですよねーっ!」

「……コイツ、経験値どれくらいあるかな?」


「わぁぁーっ、ロマちゃんをやっつけちゃダメなのですよーっ、おにいちゃんっ!?」


 フィーちゃんが背伸びをして、ホリンからロマちゃんを奪い取った。

 あたしも本気にしかけたけど、ホリンなりの冗談のつもりだったみたい……。


「それで、ホリンはあたしたちの邪魔しにきたの?」

「手伝いにきた。ゲルタの酒場宿まで持ってってやるよ、お前らごとな」


 言われてあたしは窓辺から空を見上げた。

 南の空に太陽が高く昇っている。


 暖かい日差しがアッシュヒルの木々をエメラルド色に輝かせていた。


「あ、そろそろみんな集まる頃だね」

「ていうか、みんなもう集まってんぜ」


「えーっ、約束の時間よりずいぶん早くない!?」

「今日のパンは絶対美味いって、みんな言ってるぜ」

「おねーちゃんのパンは美味しいに決まってるのですよーっ!」


 ホリンはフィーちゃんの頭をちょっと荒っぽく撫でた。

 そうしながら厨房に入って、そこに並ぶチョコメロンパンに驚いた。


「これって、あの鉄壁のメロンパンかっ!? 爺ちゃんをムキムキにしたやつだよなっ!?」

「うんっ、今日はこれを村のみんなに食べてもらいたいの」


「わかった、運搬は俺に任せろ! お前らは休んでていいぜ。ていうか休め」


 あたしは全然平気。

 むしろ元気が有り余ってる!


 でもロマちゃんは眠そうだ。

 作った量が量だから、フィーちゃんにはハードな仕事になったかも。


「じゃあ見てる。行こ、フィーちゃん」

「手伝わなくて、いいですかー……?」

「お前らはもう十分がんばっただろ、任せとけよ」


 天気もよかったし外に出て、すぐそこの木陰に陣取ることにした。

 ここからがんばるホリンを眺めちゃおう。


「お日様に当たったロマちゃん、暖かいのです……」


 いつの間にかロマちゃんがフィーちゃんの膝の上にいた。

 あたしたちは互いに寄り添い合いながら、パンの積載が終わるのを待った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ