・隠しアイテム探そう! サマンサ編 - 鍋のふた+99 -
次は『A.鍋のふた+99』を狙おう。
場所は都市サマンサの南部、町を囲う防壁の上みたい。
あたしたちはベルさんと一緒に、サマンサのキラキラとした日差しの下をお散歩した。
この国はとてもまぶしい。
赤煉瓦を基調にした建物に南国の日差しが降り注いで、町全体を明るく浮かび上がらせている。
何もかもが綺麗で、面白い物ばかりだった!
「我の顔を見忘れたか?」
サマンサの防壁に着いた。
「……はっ、あ、貴方様は……ロベール陛下っっ!?」
防壁は兵舎ってところと同じで、民間人が入っちゃいけないところなんだって。
だけどベルさんが眼鏡を外すと、見張りのお兄さんがピーンッと敬礼して中へと入れてくれた。
「ベル様って、本当に王様なんすね……」
「うむ、一応な」
「王様って、なんか超大変そうに見えるっす」
「フッ……いかにも。我がサマンサ王国の宮廷は、魔巣窟と表現しても過言ではない」
防壁の中は涼しかった。
ぐるぐると上に続く螺旋階段を上ってゆくと、その4階目が屋上だった。
「へ、陛下……っっ!? そ、そのお姿は、いったい……」
「お勤めご苦労。我のことは気にせず職務を遂行せよ」
攻略本さんと、ここから見えるサマンサの町並みを見比べた。
港があそこだから、この防壁をあっち側に進めば宝箱があるはず。
あ、なんかここ、潮風が気持ちいい……。
「あっちに連れていってくれますか?」
「うむ、存分にサマンサ観光を楽しまれよ、コムギ姫」
「あははっ、あたしお姫様なんて向いてないですよーっ」
「黙って守られるようなタイプじゃねーしなー……」
「そういった女性の方が、我の目には魅力的に映る。我に近寄る女は、我を利用しようとする者ばかりだ……」
ベルさんはあたしをしばらく見つめてから、あたしたちを防壁の奥へと案内してくれた。
「マジで大変なんだろな、王様って……」
「うん、そうかも……」
だけど今のベルさんは元気そうだった。
ぐいぐいと前を歩くのは止めようとしないけど、ときおりこちらに流し目を送って笑みを浮かべていた。
「あっ、ありました! そこの隅っこです!」
「ちょうど人の目もないな、さっさと回収しちゃえよ」
「うんっ、待っててね!」
防壁の上には小屋があった。
そこには矢とか装備が置かれていたり、休めるようになっている。
あたしは武器倉庫の裏に回って、そこにあった白い宝箱を開けた。
中身はなんと、使い古しのお鍋のふただった。
「鍋のふた、だと……?」
「回収してみたはいいけど、どう見たってなんの変哲もないガラクタだな……」
「ガラクタなんかじゃないよーっ! +99だよーっ!?」
と、言ってはみたものの……
あたしにも中古のボロにしか見えない……。
「フ……ハズレもあるということか」
「ハズレなんかじゃないですってばーっ!」
「ハズレだろ……」
貴重品だと信じて、あたしはお鍋のふたをバッグに入れた。
それから次の目的地、防壁の向こうの郊外を見渡した。
次のお宝は、たぶんあの辺りだろう。
海の向こうの世界は、植物から土の色まで別の姿をしていた。
「これはロベール殿下、いらっしゃるならば一声いただきたいところですな」
だけどそこに、なんか嫌な感じの兵隊さんがやってきた。
他の兵隊さんより身なりが立派だ。
金色の勲章をいっぱい付けていて、腰には銀色に光る剣を吊していた。
「ふんっ、それでは視察になどならん」
「なんですかそのおかしな格好は? やれやれ、兄王が失踪してからというもの、殿下はやりたい放題ですな」
この人、ベルさんと仲が悪いのかな……。
ネチネチとした嫌な言いぶりだった。
「我に嫌みを言いにきたのか、イグナシオ将軍?」
「事実を突きつけたのみです。兄王陛下ならば、もっとこの国を上手く導いて下さったでしょうに……」
「うむ、それは否定しない。だが兄はもういない」
「貴方が消したのでは?」
「なぜ我が敬愛する兄を殺す」
「その王位のために」
「下らん。客人の前でするような話ではないな」
ど、どうしよう……。
あたしはオロオロしながらホリンの横顔を見上げた。
「マジ、大変そうだな……」
「う、うん……」
「あたしたち、もう出て行きますっ、お仕事のお邪魔してすみませんっ! ベルさん、行きましょ!」
ベルさんの手を引いて道を引き返した。
ベルさん、またあたしに触られて震えていた。
触られるのも嫌なくらい女の人が苦手なんだって、鈍いあたしもさすがに察した。
ドロドロしてて、ギスギスしてて、逃げ出したくなるような世界があるんだって、あたしは彼の様子から悟った。
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