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ラ塩

作者: 飯塚 喆

 皆さん、こんばんは。

 2019年も真夏も(おご)れる熱帯夜に、ヒヤリと一滴。

 〜ルート19〜のコーナーです。

 このコーナーでは私、瓜夫(うりお)がホラー好きな皆さんとゲストでお送りしていきます。

 今回のゲストはこの人!

 今塩さんです。

 よろしくお願いします。

 「ええ、よろしくお願いしますー」

 今塩(いまじお)さんはホラー作家をとして活動していらっしゃるお方で、この前発売した小説『ひとでなし』は重版決定!

 「お陰様で。ありがとうございます」

 皆さん是非チェックしてくださいね?

 それでは今回の投稿です。

 ええと、今回のお便りはペンネーム、トロさんから!

 ありがとうございますー!

「ありがとうございます」

 それでは早速読んでいきますね。

 

《皆さんは『ラ(じお)』という怪談を知っているだろうか?

 そのラジオを聴いてしまうとターコイズ色に発光する塩になってしまうというその現象は、近年こと細やかに噂されている。

 そこで今回はこの話をお届けします。

 この噂はそこまで古い歴史はなく、流され始めたのは数年前だと言われています。

 一番初めの被害者は関東地方の大学生だそうです。

 家族や周りに伝えず、3日ほど授業を無断欠席していた彼を怪しんだ友人たちが警察に相談。

 朝7時、アパートの一室で全身が光る塩のようになった不気味な姿で発見された。

 解剖の結果、体細胞の何もかもが結晶化していた。ポンペイで見つかったガラス化した人のように。

 犯人は分からず、未だに捜査が続行されているが、手がかりは拾ってきたであろう古ぼけたラジオだけ。

 あまりにも奇怪だったために、メディアには非公開。友人たちにも緘口令(かんこうれい)が敷かれたそうですが、そのうちの誰かがネットに流しちゃったんでしょうかね…瞬く間に広がったそうです。

 次の被害は婿入り前のとある人形作家だったとか。

 同じくラジオを横に置いて、人形に覆いかぶさるようにして塩化したそうです。

 その次は初老の男、高校受験を控えた男子中学生などなど…被害は広がるばかりで。

 古ぼけたラジオは昭和40年代あたりのもののようですが、既存のものでどこにも該当する商品がないそうです。

 被害が増えるたびに押収されるそのラジオは増えていくようなのですが、さっぱり。

 電波の迷路に迷い込んだみたいです。

 増殖するラジオと光る塩の像たち。

 未だ、解決の糸口は掴めないまま。

 男生の方で古ぼけたラジオを拾ってきてしまった人は要注意かもしれない…

 

(追伸)最近、友人が古ぼけたラジオを拾ってきてしまったそうなのですが…どうすればいいですか…?》


 …とのことで。どうで思いますか?今塩さん?

 「よくある変死系ですね…ただ、ここで奇妙なのは、明らかな情報の質量欠損があるところです」

 と言いますと?

「それは、この方が知り過ぎていることですね。未だに非公開ならば、そんな被害者について事細かに知っているはずないでしょう?」

 警察関係者のリークってことはないのでしょうか?

「大いにありますが、その場合一つおかしな点があるんです」

 ほう…

「それは、警察関係者や友人家族ですら知り得ないことを知ってしまっている文面だからですよ。所謂、信頼できない語り手ですね。

 このコーナーは皆さんと一緒に考えていくコーナーですから、一つずつ丁寧に見ていきましょう」

 その前に一旦CMです!

(CM中)

「やっぱりこれ、おかしいですよ。なんでこんなことに…」

 やだなー今塩さん。これは貴方があらかじめおっしゃっていたことじゃないですか。

「違う!あれは…僕じゃ…」

…………もう始まりますよー!

「……」

(CM終了)

 ということでですね、引き続き〜ルート19〜のコーナー再開ですっ。

「はい」

 さっきまではラジオに関わる怪談『ラ塩』というなんとも言葉遊びなお話でしたけれども。今塩さんが投稿されて文に何やら仕掛けがあるとのことで、伺ってみましょう。

「はい…さっきの文面をもう一度見直してみましょう。ここで一つ絶対にいらない。というより、ここでその一文を外せることに気がつくとその文が矛盾していて、それが絶対に誰にもわからないはずのものがあるんです…どう思いますか…?」

 どうと言われても…難しいですね(笑)リスナーの皆様も一緒に考えていただければ幸いです。

 とりあえずお便り再読してみますね。

(お便り再読)

 ……うーん。分からないなぁ。

 “電波の迷路に迷い込んだみたいです”とか?

(ブブーというSE)

 これじゃあわかりませんね…えっとヒント、一ついただけませんか?

「じゃあヒント1。お便りの前半部分です」

 前半部分?何か別に脈絡(みゃくらく)が変だってこともないけどなぁ…もう一個!

「ヒント2。なんでこの噂が広まる前にそれを知っていたのか?」

 それ?

「“それ”ですねぇー」

 えーっ…なんだろ、時間もじわじわ押してきてますからね…

 うーっ、最終ヒント、最終ヒントください!

「じゃあほぼ答えいってるようなものですけど、ヒント3!今日は何月何日でしょうか?」

 そんなの簡単じゃないですか…

 8月19日ですよ。コーナー名と被ってるから、19に意味があるとかですか?

「うーん、違います!(笑)」

(カンカンカーン)

 あら、時間切れみたいですね。

 では答えをどうぞ!

「つまりこれはですね———(ザー)の(ザーッ)がおかしいので、そもそもの××が一体これはどういうことなんだっていう…まあ気付けば簡単な仕掛けなんですけど…」

 なるほど。意外とチープというか、そういう考え方はできませんでしたね…

 おや…?

 すみません…機器の不具合でノイズが入ってしまいました。失礼しました。

 ちょっと怖いですね…

 さて、都合上、時間が押しているので、聞こえなかった答えは次回のお楽しみということで…(笑)

 本日はラジオに関するお話でしたけれども、今塩さん。如何でしたか?

「そーですね…私に対する挑戦状にも考えられましたし、はたまた正体不明の奇怪話としてもユニークなお話でしたね」

 ところでさっきおっしゃっていました通り、私たちも、もしかしたら信用できない語り手かもしれませんよ?こうやって喋ってる中、意図的に情報を与え過ぎたり、減らしたりしているのかも。

 人間は都合で生きていますから…(笑)

「ある意味、人間が一番怖いですね…」

 怖い、ですね…

(キャーという効果音)

 では、悪夢に対するドリームキャッチャー!になるかは分かりませんが、投稿してくださったトロさんには、友人さんとペアになる天使のお守りをお送りしておきます!

 それでは名残惜しいですが、もうすぐお時間です。

「今塩先生、今回はありがとうございました!」

「こちらこそ。一緒に考察できて楽しかったです」

 皆さん、少しはヒヤッと出来ましたでしょうか?

 以上、今塩さんと私でお送りする〜ルート19〜のコーナーでした!

 それではお時間です!

 残暑も厳しいですがどうか体調に気を付けてくださいね。

 またこのラジオでお会いしましょう、

 バイバイ!

 




 朝7時。今塩は自室のアパートの一角で変死体で見つかった。

 死体は名状しがたいほどに美しく神秘的に発光するターコイズブルーの像のようであった。

 ラジオは…見つからなかったが、二つの天使のお守りの中に今塩の耳と思われる切断部と、小説の原稿が見つかった。

 題名は『ラ塩』。

 以降現在に至る3年間、この奇怪な事件は例のラジオの出現と共に現実味を帯びてくることとなる。

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