43、継承式1
つおい
「いきなり継げとか言われてもね………」
またもや休日中に貴族のお偉いさんが来た、何かと思ったら、いきなりサンセット家当主を早急に継げと言われた、まぁサンセット家も五大貴族といかないまでもそこそこ偉い貴族、いつまでも空席というのは看過できないのであろう……そういえば後継者の証の指輪は私の指に入るということはつまり、義父や義母は私を後継者に選んだという事………オルクの襲撃や同居人の増加など、イベントてんこ盛りですっかり忘れていた、なし崩し的に継承式の準備が始まった………と言ってもあちらも十中八九、私が指輪の所有者、次の後継者は私だと見抜いていたようなので、準備は大体終わらせといてくれたらしい、私がやった事といえば知り合いに招待状を書いたぐらいだろうか、数日で開催される継承式。
「まだ実感湧かないな………にしても疲れた………」
固めに言えば継承式だが、緩く言ってしまえば貴族達を集めたパーティーだ、別にそれだけなら良いのだが……私はこの継承式で貴族へと返り咲いてしまう、今まではサンセット家から追い出され、実質的に平民だったのでそこまで気にされていなかったが………サンセット家の当主となれば話は別、王子様の護衛な上、さらにもう一人の王子とも仲が良い有望株、そんな奴が主役のパーティーなんか開いたらそりゃ貴族達はこぞって気に入ってもらおうと取り入ってくる、適当に話を合わせつつ、一人の話がひと段落ついたと思ったら、後ろから二人三人と砂糖に群がる蟻の如く、私の周りを固める………事実、将来甘い汁を吸うための行動なので言い得て妙である………それでも何とか全員と話を終えた後、休みがてらバルコニーへと避難する私は独り言を呟いていた。
「……まぁ、久しぶりに家に帰れたのは嬉しいけどさ」
………そう、継承式は私が追い出されたサンセット家の所有の屋敷で行われた………義妹のアイシャと顔を合わせるのは胸糞悪いが仕方ないと考えていたが、どうやら継承権を持たないアイシャが正統後継者である自分を追い出して住んでいた事は、不当占拠として扱われ、強制退去、事前に彼女を追い出してくれたらしい………かなりしつこく粘ったらしく、時間がかかったため、まだ彼女の私物は部屋に残っているが、それも後でアイシャに渡すことになっている。
「疲れた」
夜空に浮かぶ月を眺めながら一人愚痴る私。
つおい