36、後始末
つおい
「ここは………?」
「気がついた?」
「……えっと……」
「………どうやら主人がいなくなった事で魔道具の機能も弱まったようだな」
369号……と呼ばれていた獣人が目を覚ます、オルクが死んだ瞬間、糸が切れるように彼も気絶したのだ、さっきと違って獣のような唸り声は無く、狂気に満ちていた瞳は比較的に落ち着いている………。
「そうか、貴方達が助けてくれたんですね……ありがとうございます」
「うむ、コトハに感謝するんだな!!」
「は、ハルバート様、そういう言い方は恥ずかしいんでちょっとやめて欲しいです……」
「………まぁ実際、全部お前が片付けたし、恥ずかしがる必要ないんじゃないか?」
「セバスチャンさんまで………」
………手柄を全て自分に押し付けてくる二人………むず痒さから無意識に後頭部をポリポリ掻く私
「あんな事をして、助けて貰って頼める立場ではないですが………一つ頼んでも良いでしょうか?」
「何?」
………彼の眼は諦観の色を宿していた。
「……自分を殺してください」
「「ーー!!」」
「な、なんで!!」
自身を殺して欲しいと頼んでくる369号、驚愕に目を剥く二人、思わず声を出すハルバート様………私はある程度予想がついていたのであまり驚きはなかった。
「………命令とはいえ、自分は数え切れない人間を傷つけてきました、ここにいる皆さんも傷つけたでしょう、恥ずかしながら記憶が微かでよく覚えていませんが、それにこの首輪が外れない限り、いつまたどんな畜生に飼われるか、わかったものではありません、だったらここで死んだ方が新たな犠牲者は生まれず、今まで傷つけてきた人への償いになるかと」
「そ、それは……」
「……確かにその首輪にまだ何か厄介な呪いや魔法が組み込まれている可能性はある、例えば遠隔で強制命令を下せるとか………首輪を外そうにもこういう魔道具は大抵無理矢理外したら着けらていた方も外そうとした方にも何かしらのペナルティーが発生するようになっている……おいそれと手出しはできん………」
「で、でも、王宮の魔法師に助力をこえば外せるんじゃないのか?」
「首輪は外せるかもしれません」
「ならーー」
「ーーーしかし、禁忌の獣人化の魔法を受けています、王宮の魔法師なんかに頼めば一発でバレるでしょう、バレたらよくて死刑、運が悪ければ極秘の魔法研究所に運び込まれ一生モルモット生活でしょう……ここで殺した方が彼のためかもしれません………」
「そ、そんな………し、しかし彼はオルク兄さんに命令されて仕方なく従っていただけなんだぞ?我が国の大事な国民の一人なんだぞ?……そんなのって……」
彼の殺害依頼をセバスチャンさんは鎮痛そうな顔をしつつ、一理あると言う、確かにホルマリン漬けにされたり、剥製にされたりするぐらいだったら、今ここで死んだ方がマシなのかもしれないし、これ以上犠牲者は出ないと、しかしハルバート様は納得できないようだ、理屈は分かったが、それでもと。
「……お願いします、また正気を失う前に……」
「わかった」
「「ーーー!!」」
「ありがとうございます」
「こ、コトハ?、そ、それってつまり……」
「いくよ」
「はい」
私は了承する、ハルバート様が何か呟いているが、無視して話を進める私。
「式神召喚、十二天将・太裳………よいしょっと」
「「「ーーーー!!??」」」
十二天将太裳を召喚し、手をかざす、太裳の能力は空間操作、#首輪を私の手元に転移させる事に成功した__・__#。
「うし、上手くいった」
この十二天将の能力もかなり強力な反面、気の消費量が半端じゃない上にかなりの集中力を要する、さらに九尾の呪いでかなり弱体化してしまっているため、空間操作と言っても自身の半径30センチくらいの空間しか操れないし、自身を転移する場合も似たり寄ったりの事しかできないからほぼ使えない能力とかしている………今回は久しぶりに役に立ったな。
「え?、え?」
「これで369号は死んだ………君の人生だ、死ぬのも生きるのも好き勝手自由気ままにしなよ」
「あ、は、はい………」
「けど、まぁ……今まで傷つけた人に罪滅ぼしがしたいなら、今からでも人の役に立つ事をすれば良いんじゃないかな、君が死んだってそれはただの自己満足でしかないし、怪我人の傷が治るわけでもないからね」
「ーー!!」
つおい




