34、間一髪
つおい
オルク視点
「ハァッッ……ハァッッッ……ゴフッッ」
「も、もういいセバスチャン立つな!!、お前だけでも逃げてくれ」
「そ……んなこと……できるわけないじゃないですか………」
「ーーーチッッッ」
………あの後、手も足も出なくなったセバスチャンを痛ぶる事、十数分………服が真っ赤に染まるほど血が染み込み、体の至る所に傷がついてく……彼の姿は平たくいってボロ雑巾だ………だが、立ち上がる、何度でも………。
(………汚い本性を暴いてからトドメを刺そうと思っていたが……)
……絶対に逃げ出すと思っていたか………一向に逃げる様子がない………。
「逃げた瞬間に殺してやると思っていたんだがな………」
逃げるまで痛ぶり、逃げた瞬間、即首を刎ねるように命令を出しておいたが………逃げるそぶりを見せないセバスチャン。
「もう良い、飽きた………369号、トドメをさせ」
「グル……」
「ーーグッッッ……」
369号にトドメを刺すように合図を出す。
(……クソ、ここまでか………)
「ーーーグルァッッッ??」
「何をしている、なぜ離れる」
首根っこを掴み、爪を構えた369号がなぜかいきなりセバスチャンを放り捨て、離れる。
「ーーいんや、正解だよ………離さなかったらその腕貰ってたからさ……」
「何??!!、何故だ、街へ出かけたと報告を受けた……戻ってきたにしても早すぎる!!」
「コトハ……か?」
「……遅くなってすみません………」
出てきたのはここにいない筈の人間だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
コトハ視点
「ったく、人が気分良かったから街に繰り出してる間に好き勝手やりやがって……」
「コトハか………助かった……」
「……すいません、休日だからって気抜いてました……」
「いや、お前が謝る必要はない………俺が不甲斐ないってだけだ……先輩面してたくせにな……」
「………そんな事ないです、貴方がここまで耐えてくれたから、間に合えました」
「………」
「式神召喚、十二天将、天后………あとは私に任せて休んでてください」
ズタボロのセバスチャンさんを私の後ろに下がらせる、式神を召喚し、護衛兼怪我を治癒させる………。
「ハハハ、そんなボロ雑巾直して何になる!!、すぐまたズタボロにしてやる!!」
「…………」
「おい、コイツが見えないのか??!!、それ以上近づけば殺すぞ!!」
「だめだ!!!、早く逃げろコトハ!!」
「………今すぐハルバート様から離れろ、でなければ消す」
………耳障りなノイズを撒き散らす不愉快の権化たる存在に向けて歩を進める私、脅すようにハルバート様を見せつけてくる………残っていた一欠片の理性で忠告をする私。
「ハッッ、この状況で俺をどうーーー」
「ーーーー忠告はした」
「ーーー痛ッッッッ??!!!!」
……オルクの喋っている内容が頭に入ってこなかった、私の言うことを聞く気が無いと判断、刹那、彼の背後の壁から熱線が走り、一瞬で彼の腕を切断する、痛みで怯んだ隙にオルクの顔面を蹴り飛ばし、ハルバート様を救出する。
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ………」
「ば、馬鹿な……何だ今のは……」
「………狙いが少し甘かったか………」
….……事前に部屋の外に待機させていた十二天将・朱雀に撃たせただけだ、私の目から敵の座標を割り出し、炎を一本に収束、発射し、オルクの腕を切断……否、焼き斬っただけのこと。
「く、クソ!!!、お前も何ボーっと突っ立っている!!、早くアイツを何とかしろ!!」
「クゥゥゥン………」
「な、何を怯えている!!、早く行け!!」
「………今すぐ大人しくすれば半殺しで済ませてやる………抵抗するなら命の保障はできない……」
「ヒッッッ」
彼の手下らしき獣人が私に怯えたように震えている……本能的に私に脅威を感じているのだろう………私はオルクに向かって再度忠告をする………まるでさっきの再現に怯えるオルク。
「あ、あの子は無理矢理従わされてるだけみたいだから、できれば殺さないでくれ!!」
「………わかりました」
………ハルバート様にあの獣人は殺すなと言われ、少し冷静さを取り戻す私………。
つおい




