31、sideセバスチャン、襲撃1
つおい
「ふふ、例のバケモノ女も主人を手玉に取られたらどうしようもあるまい…………」
「ーーーハルバート様から離れろ」
「ーーーッッッッ!!」
ハルバート様の部屋の中に侵入した影を剣で追い払う。
「そうだな、お前がいたな、セバスチャン……」
「オルク様の差金か?」
「何、殺そうってんじゃない、ただちょっとお願いをしたいだけなんだ」
………カマをかけてみるが、話をはぐらかす侵入者、薄暗いながらも見える容姿や声の低さから言って、男だと思われる。
「お願い?」
「…………コトハという女にサンセット家の継承権をアイシャに譲るように……ってな」
「何を言ってる、コトハはサンセット家から追放されているはずだ、継承権も何も、全てアイシャのものじゃ無いのか?」
話をはぐらかされた事に少し苛つきを覚えるが、それよりも相手の目的の方が気になり、聞くも、よくわからんことを言い出す男に眉根を寄せる俺。
「?、ああ、なるほど、まだ本人から聞いてないのか……後輩にあんまり信用されてないんだな」
「………貴様と話してても拉致があかん」
「じゃあどうーーーー」
「ーーーこうする」
役に立たない情報しか喋らない男との会話に価値を見出せない俺は相手が言葉を言い終わる前に斬り捨てる、断末魔の声すら上げられず、自分が死んだと気付いてないような、キョトンとした顔で絶命する男。
「………死体を調べれば何か情報が出てくるかもしれんな……」
「ーーーお前にそのチャンスがあるのならばな!!!」
「ーー!!」
殺した男の持ち物を調べようとすると、どこからともなく声が響き、一瞬床に血まみれで倒れている男が喋ったのかと思い、注意深く観察するが………やはり絶命している。
「ふん、情けない、心配になって見に来たが、やはりアイツ程度ではセバスチャンを倒すことはできなかったようだな」
「………オルク様、一体これはどういう事ですか?」
「答える必要はない、なぜならお前はここで死ぬからだ…………いいか?、お前の仕事はアイツを殺すことだ」
「グルルル」
「……くれぐれもあのベットで寝ている子供は殺すなよ………」
扉を開けて出てきたのはオルク様だった、恐らく先ほどの声も彼のものだろう、なぜハルバート様を襲うのか、問いかけるが、まともな返答は帰って来ない、その代わりと言っては何だが、オルク様の後ろからハルバート様と同年代とおぼしき子供が出てくる。
「ーーーグル」
「よし、いけ!!!」
「ーーーーーグルァッッッッ!!」
「ーーーッッッッ??!!」
………その子供は目の焦点があっておらず、獣のような唸り声しか発さない………どうやらただの子供ではないようだ、剣を構え直すが、いきなり子供の足元が爆発したのではないか、そう思えるほどの衝撃を床に叩きつけ、凄まじい速さで自分に接近してくる子供、そして殴りつけてくる、剣でガードするが、自分の手が傷つくことなどお構いなしにそのまま力任せに殴りつけてくる。
「何をしている、早く俺が与えてやった鉄獅子の力を使え!!!」
「何??!!」
「ーーーグルァッッッッッ」
「ーーーー痛ッッッッ??!!」
………オルク様の台詞に気を取られた瞬間、子供の体から獅子の毛皮、耳や尻尾が生え、さらに腕の体表面が硬質化していくーーー刹那、一気に膨れ上がる筋力にガードの上から無理やり吹っ飛ばされる俺。
「はははは、どうだセバスチャン!!、人工獣人の力は!!」
「………魔法の中には人を獣人化させるものがあると聞くが………確かそれは永劫解けず、二度と元の姿には戻れない…故に禁忌の魔法だったはず………しかもこんな子供に……自分が何をしているのかわかっているのですか?」
「ハッッッ、獣人化の魔法だと?、正確には獣人化の魔法の上にさらに物質融合の魔法もかけた、いわば獣人を超えた獣人だ、こいつを作るのに何百、何千人の実験体が必要になったか……しっかり働いてもらうぞ」
「グルルルルル………」
………まさかこんな子供に獣人化の魔法をかけるなんて、信じられないが、認めないわけにはいかない………子供の体を細長い鉄が無数に覆っていく……まるで鉄の毛皮だ……まさしく鉄の獅子という姿へと変貌していく。
つおい