20、side弥生、その頃の京都
つおい
side
弥生
「……貴方達十二月将は住民の避難と守りを頼む………九尾は私が一人で倒す」
「「「「ーーーなっっ??!!」」」」
………突如、京都を襲った妖怪、金毛九尾は恐ろしく強かった、天災の一つに数えられるだけはある………獣の力を持つ、異形の獣人、俺達十二月将の力すら跳ね除ける金の体毛、逆にかなり頑丈な体を誇る獣人の俺達ですらマトモに食らえば一撃で葬り去るほどの威力を誇る気弾を放つ正真正銘の化け物、九尾と互角に戦えている我らの頭、殺生院言葉を前衛に置き、彼女の式神で強化してもらってる俺達が加勢して、漸く優勢なのだ、今そんな事をしたら良くて互角になってしまうのは確定的に明らかだ。
「な、何を言っているんですか!!、相手はあの九尾ですよ!!」
「……だからこそだよ、アイツ、さっきまでは私達を狙っていたのに、多勢に無勢のピンチだとわかるや否や、都民を的確に狙い出した、無視する訳にはいかない崩れた私達の陣形の穴を突いてきた、このまま全員ここに居てもジリ貧…………貴方達が都民を守るしかない」
「で、でもそんな事をしたらこと姐が!!??」
「大丈夫、あんな化け狐、チャチャっと片付けてくるよ」
「い、いやだ!!!、お、俺は言葉が何より大事だ!!、アンタは俺の、俺達の命の恩人なんだよ!!!、獣人で気味悪がられて、どこにも行くところが無かった俺達を救ってくれた、人として生かさせてくれたアンタを命を賭けても守るって誓ってるんだ!!、行くなら俺達も一緒にーーー」
「ーーーー十二月将の使命って何?」
「ーーーッッッッ………民が……一から十二までの月を平和に過ごせるよう………あらゆる苦難から守る……」
「………でしょ?、私のことをそこまで慕ってくれるのは嬉しいけど、その為に都民を見捨てちゃ本末転倒だよ………それじゃあ頼んだよ………九尾は私が引き受けるからさ」
「…………頼む、約束してくれ、絶対帰ってくるって……」
「あったりまえじゃん、帰ったら祝杯あげようぜ」
………殺生院言葉はそのまま九尾へと駆けていく………そしていまだに祝杯はあげられていない…………。
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「………アンタが死んで二、三年くらいか………」
京都を救った英雄、殺生路言葉の墓の前で立ち尽くす俺………墓といっても骨すらない、形だけの墓だが………。
「……結構復興が進んだぜ」
………まだ九尾の爪痕が残ってはいるが、それでもだいぶ復興してきた京都の事を報告する。
「………あの時、俺がもっと強ければ………」
自分の無力さをあれ以上呪った日は無かった………大切な人を守れなかった………一番大事な人の死を変えられなかった…………。
「アンタが命懸けで守ったこの京都、俺達がどんな脅威からも絶対守ってみせる………」
確かに俺は弱かったし、今も弱い、だが、それでも泣き言ばかり言ってられない、この街は言葉が命を懸けて守ってくれた街だから、誰がきても簡単には壊させない、守る事を彼女の墓に花を添えながら誓う。
「あ、弥生、やっぱりここに居た」
「……睦月か、どうしたんだ?」
「どうしたもこうしたもないよ!!、今日、これから十二月将みんなで会議するって話してたでしょ?」
「あ……悪い、忘れてた」
「全くもう……毎月こと姐の命日だけは忘れないくせに……都合のいい頭してるよほんと~」
「悪かったって」
俺を弄りながら、花を添える彼女……俺の居場所を確信していたので、ついでに花を持ってきたのだろう………少し名残惜しさに後ろ髪引かれながらも、会議に向かう俺。
つおい