17、コトハvsアレシア・ロレーヌ1
つおい
「貴女がコトハかしら?」
「?、そうですが………何か御用ですか?」
「ご、御用も何も、最近ハルバート様が貴女の話ばっかりしてるの!!!!、私の婚約者に無闇やたらに誘惑しないでいただけないかしら!!!」
………今私には家がないので王宮の空室を貸してもらっている、数少ない休日に思わぬ来客が舞い込んできた、彼女はアレシア・ロレーヌ、五大貴族の一角を担うロレーヌ家の次期当主、まだ流石に年が若すぎるので今すぐ継ぐというのは無理だが、将来的には大貴族の大黒柱となられるお方……ちなみにだがハルバート様とは婚約関係らしい………。
「え、えっと、その、アレシア様?、誤解していらっしゃるようですが、私はハルバート様を誘惑などしておりません」
「何を言っているの!!、じゃあどうして私の誘いを断って、貴女とのトレーニングにうつつを抜かしてばかりなの!!!」
「え、えーーと………」
………トレーニングにうつつを抜かすって特殊な言葉初めて聞いたな…………。
「良いわ、しらばっくれるっていうならここは正々堂々、決闘よ!!、これで貴女が私より上だというのならば納得出来るし、私より下ならばもう二度と私のハルバート様を誘惑しないで!!」
「あ、は、はい、分かりました………」
…………ここでおっ始めるわけにも行かないので、王宮の中では唯一と言っても良いくらい広くて、そこそこ自由に扱って良い空間の中庭へと移動する私達。
「あれ、コトハ?、今日は休みじゃなかったのか?」
「あ、いや、その………そ、そんな事より自主練してたんですか?、偉いですねハルバート様」
「え?\\\、じ、実はそうなんだ\\\………でもちょっとカッコ悪いな………」
「カッコ悪い?」
「………コトハに内緒で、コトハの想像以上に鍛えようと思ったのに……もうバレちゃった……」
「そんな、全然カッコ悪くなんてないですよ、むしろかっこいいですよハルバート様」
「か、カッコイイか?!!\\\、そ、そうか\\\\」
「………でも、あんまり無理して鍛えちゃ駄目ですよ、体が壊れちゃいます」
「わ、わかってる\\\\」
どうやら中庭には先客がいた、セバスチャンさんを護衛にハルバート様が自主トレをしていたようだ、何故休みなのにこんなのところにいるのかと聞かれるが、なんて答えたらいいのかわからず、話を逸らすため私は褒めると………実際に感心はしているが………、ハルバート様は分かりやすく照れる、しかし、すぐに落ち込むハルバート様、なぜか理由を聞くと、どうやら秘密の特訓で私の想像以上に体を仕上げて驚かすつもりだったのに、すぐにバレてしまい、カッコ悪いと思っているようだ、しかしそんな事は全然無い、むしろ自分の意志で辛いトレーニングをしているハルバート様はカッコイイと伝えると、さっきまで落ち込んでいたのにすぐに元気に、嬉しそうに笑顔になるハルバート様………セバスチャンさんがいるから大丈夫だとは思うが一応オーバーワークには注意を一言入れておく。
「ーーッッッッッッッ何遊んでるの!!!、早く構えなさい!!!」
「あ、はい」
ハルバート様と話してて、すっかり忘れてしまっていたアレシア様に怒鳴り散らされて、剣を構える私………どうやらさっきの会話も誘惑のうちに入るのか、彼女は顔をやかんの様に熱く、沸騰させ、私と同じように剣を構える彼女、私たちが話し込んでいる間に中庭に結界を張ったのか、これでこの中でいくら怪我しようが、死んだりしても、結界の外へ吐き出されるだけで済む。
「なんだアレシア?、コトハとやるつもりか?、やめといた方が良いぞ!!、なんせコトハはーーー」
「ーーー絶対勝ちます!!!」
「ーーお、おお??!!」
よく事情をわかっていないが、雰囲気から今から私達二人が戦うとわかったハルバート様はアレシア様に忠告しようとするが、食い気味に勝利宣言をするアレシア、ハルバート様は怒鳴られて一瞬言葉を失う。
(………とりあえず手加減して、勝たせないとーーー)
「ーーーイキますわよッッッッ!!!!」
「ッッッッ??!!!」
神速の踏み込みで突っ込んできて、突きを繰り出してくる、思わぬ速度につい瞠目してしまう私。
「ーーーおわッッッッと」
「ーーーガハッッッッ??!!」
あまりの剣の腕に手加減などできず、反射神経の赴くまま、命じるままに、彼女の喉に向けての突きを剣で受け流し、空いてる拳で彼女の腹にパンチを決め込もうとするが、彼女は間一髪ギリギリ、手でガードする、しかしそれこそが私の狙いだった、意識を上体へ向かせ、足元の注意を散漫にさせる、そのまま彼女の足を私の足で払い除け、転ばせた後、お返しとばかりに彼女の喉元に剣を添える、ここまで約数秒の出来事だ。
「ーーッッッッ!!?」
「やっぱりコトハの勝ちだ!!」
(…………ヤッベェ~……思った以上にできるから、反射的に体が動いちまった………)
「~ーーーうぅぅ………」
「ーーーえ、あ、だ、大丈夫ですか、アレシア様」
「ぅぅぅ……」
剣を突きつけて静止した私の勝利を喜ぶハルバート様、しかし、その言葉がその場に響いた瞬間、アレシア様は涙目になる、私は慌てて彼女を起こすが、アレシア様はその後も涙目で俯いてしまった。
(や、やっべぇ~………どうしよう)
その場でオロオロするしかない私。
「お、おい、アレシア……どうしたんだ……?」
「だ、だって……私、負けちゃった……………」
アレシア様が泣いているので、ハルバート様は困惑しながら彼女に泣いてる理由を聞く、彼女はシンプルに私に負けたからと返答する。
「だったら勝つまでやれば良いじゃないか」
「え?」
なぜ私たちが試合してるのかもわからないハルバート様は自然に呟いた、困惑するアレシア様。
「俺の中のお前はそういう人間だ、直向きで努力家で負けず嫌い………でも、だからこそ諦めるってことをしない、今日勝てないなら明日、明後日勝てない一週間後、半年勝てないなら一年後………そうやって未来の自分の力になるよう一生懸命今できる努力を積み続ける、そうしていけばきっといつかはコトハにも勝てるさ」
「ほ、ほんとでしょうか?」
「ああ!!、きっと勝てるさ!!、そうだ、俺と一緒にコトハに鍛えて貰えば良いじゃないか?」
「へ?」
ハルバート様の言葉で多少元気を取り戻したアレシア様………そこまでは私にとって都合が良かったが、最後の最後で教え子が増えるという流れ弾が飛んできて、アホみたいな声しかあげられない私。
「コトハに勝つ方法をコトハから聞けば良いんだ!!、本人なら何をされるのが一番嫌かわかるはずだからな!!」
「な、なるほど、さすがハルバート様ですわ!!」
(そ、その発想はありませんでしたわ……ハルバート様がトレーニングにうつつを抜かしているのであれば一緒にやればずっと二人っきりという事ではありませんの!!、トレーニングに飽きたらそのまま二人で遊べるし、どっちに転んでも大丈夫)
「良いよなコトハ?」
「あ、はい、勿論ですよハルバート様」
……ただでさえ、王族のハルバート様の護衛でお腹いっぱいなのに、五大貴族の跡取り娘が攫われたり、万が一にも殺されたりしたら、私の責任問題になるので、正直に言って拒否したかったが、ハルバート様にキラキラした眼で見られたら私には肯定以外の選択肢はなかった。
つおい