10、ハルバートvsオルク、剣1
つおい
ウィリアム視点
「気持ちよかった………さて、気分が良いのでお前らの仇を討ちをしてやろう」
「ほ、本当ですか??!!」
「本当だとも………誰にやられたんだ?」
服を着ながら、自分達の話を聞くオルク様……。
ーーーー
コトハ視点
「よう、ハルバート、最近調子乗っているそうだな?」
「ーーーッッ、オルク兄様………」
アイシャとウィリアム、二人の決闘に圧勝してから数日間は何事もなかったが、物事が上手くいっているのはトラブルの前兆とでも言わんばかりに、アイシャとウィリアムを連れた醜悪な笑顔を浮かべた身なりの良い男に呼び止められるハルバート様。
「誰です?」
「第四皇子のオルク・ガルシア様、ハルバート様を敵視してる王子の一人だ」
「すごい好色家って噂のあのオルク様ですか?」
「……口が過ぎるぞ」
「あ、すいません」
顔は見た事あるが、確信は持てなかったのでセバスチャンさんに小声で聞く、すると間髪入れずに返事が返ってくる、オルク・ガルシアといえばものすごい女好きで年中女を取っ替え引っ替えしてるともっぱらの噂だ、顔立ちは整っているのでナンパに引っかかる女が大勢いるらしい、ついついセバスチャンさんに再度質問を投げかけてしまう私だが、セバスチャンさんに嗜められ、謝罪する私。
「ちょ、調子に乗っているとは……何の事でしょうか?」
「しらばっくれるつもりか?、俺の臣下たるアイシャとウィリアムに半ば強制的に決闘をふっかけたというじゃないか、何でもその内容はお前達に圧倒的有利なものだったと……」
「そ、そうですよ、こいつらは汚い連中です!!」
「私たちは断っているのに無理矢理やらせてきました」
「なっッッッーーーー、何を言っている、決闘に誘って来たのはそちらではないか!!」
「何だと?、ならば証拠はあるのか?」
「そ、それはないですが………そ、そっちの方こそあるのですか??!!」
「ないな、つまりこれではお互い水掛論になってしまうわけだ………だが、主人として臣下が不当な扱いを受けているかもしれないのに、仇も討たずスゴスゴと引き下がるの無理だ………そこで提案だ、臣下同士のいざこざは主人同士の剣で決着をつけないか?、負けた方は勝った方に誠心誠意謝罪する……どうだ?」
「……お待ちくださいオルク様、主人同士で決闘といってもハルバート様とオルク様では体のサイズが違い過ぎる、公平性が著しく損なわれます」
ハルバート様が質問を投げかけると、事実無根、根も葉も無い事を言い始めるオルク様、横のアイシャとウィリアムの二人は同意して野次を飛ばしてくる、ハルバート様は言い返す、しかし、証拠がどうのこうの言い出すオルク様、だが、オルク様側にも証拠はない、しかしそれこそ彼の狙いだったのか、ハルバート様との決闘を申し込んでくる………しかし、二、三歳、歳が離れてるハルバート様とオルク様、剣の勝負では一回りも二回りも身体が大きいオルク様が有利過ぎるとセバスチャンさんが指摘する。
「ハッッッ、ならハンデをくれてやる、攻撃は許さんがハルバートに補助魔法の類を一つかけることを許してやろう、それでどうだ?」
「…………」
(……くく、セバスチャンは優秀な魔法剣士だが、強力な補助魔法の類は使えない、使えたとしても効果はそこまで高くないだろう、そもそも補助魔法は強化倍率が低いので重ねてようやく意味がある、一つだけなら大丈夫だ………もう一人はマグレとインチキで2人に勝っただけの女……楽勝で勝てる)
「お、俺は………」
「何だ?、もしかしてここまで譲歩しているのにまさか尻尾を巻いて逃げるのか?この臆病者め」
「お、俺は………」
「ーーーその決闘受けましょう!!」
「こ、コトハ??!!」
「な、何を勝手な事を………」
「大丈夫ですセバスチャンさん、私がハルバート様を絶対勝たせてみせます」
「ーーーーッッッ………わ、わかった……コトハを信じよう」
迷うハルバートを挑発するオルク様にムカついた私は勝手に了承する……もしかしたらハルバート様と私は似た者同士なのかもしれない、セバスチャンさんとハルバート様は驚愕するが、私は迷いなく勝利宣言をかます……ハルバート様は私を信じてくれ、覚悟を決める。
「勝算はあるんだろうな?」
「大丈夫です、あの程度の相手だったら余裕です」
「その言葉を信じる、後は任せたぞ……」
私達は模擬戦場へと移動する。
「それでは………イクぞッッッ!!!!」
「ーーークッッッ」
「ーーバカがッッッ!!!!」
「ーーッッ痛ッッッ」
お互い手に持つのは刃を潰した殺傷力が無い剣、先に攻めるのはオルク様、勢いよくハルバート様へと突っ込んで袈裟斬りを繰り出す、ハルバート様はオルク様の剣を自分の剣で防ぐが、やはり体格が違い過ぎるので力づくで防御をこじ開けられる、ガードしたのに、衝撃を抑えきれず、防御の剣ごと体を吹っ飛ばされる、それでも何とか剣は手放さずにしっかり握り込むハルバート様。
「く、くそ………」
「ほらほら!!、休んでいる暇はないぞ!!」
「それ以上はやらせるか!!!、『式神憑依、十二天将・白虎』!!!」
再度、斬り込んでくるオルク様、彼が走り始めた瞬間に私はハルバート様に白虎を憑依させ、身体能力を劇的に引き上げる。
「補助魔法一つでどうにかなる差だと思うなッッッ!!!」
「ーーーッッッ??!!」
(ーーーな、何だこれ、オルク兄様の動きが止まって見える……コトハの魔法……いや、陰陽術のおかげか??!!)
「ーーッッッ??!、よく避けたな……だがマグレはそう続かんぞ!!!!」
最小限の動きでオルク様の攻撃を躱すハルバート様、避けられたことに驚愕するオルク様は弾かれたように、間髪入れず、攻撃を繰り出す……だが、当たらない、紙一重で躱し続ける。
「クソッッッ!!なぜ当たらん!!」
オルク様の猛攻、しかし、ハルバート様には当たらない、全て紙一重で避けていく、避けきれない斬撃は自分の剣を添え、逸らし、躱していく、腕力勝負ではオルク様の圧勝だろう、だが、ハルバート様は力比べにはまともに付き合わないよう、柳に風、暖簾に腕押し、軽やかにオルク様の力を分散させ、受け流していく。
「ーーーこのッッッ!!」
(ーーー大振りの攻撃ーーー)
「ここッッッ!!」
「ーーーしまッッッ」
いかに攻撃を仕掛けようと、受け流し、躱しきるハルバート様にイラついたオルク様は大上段から剣を振り下ろす、ハルバート様はその千載一遇のチャンスを見逃さず、最小限の動きで躱し、オルク様の死角、真横へ着地した。
「ーーーーやあアアアッッッッッッ!!!!!」
「ーーーガッッッッッッ??!!!」
この決闘中、最大最高の好機をハルバート様は手にする演習用の剣で切り裂いた、渾身の一撃をオルク様の頭目掛けて振り下ろす、その一撃はオルク様の意識を刈り取った。
「やりましたねハルバート様!!!」
「か、勝った……のか?」
『主人と我のおかげだがな』
「お、お前は……いつかの……猫?」
『猫じゃない虎だ!!!!』
オルク様が気絶したことにより決着、結界の外へと出される私達、まだ自分が勝ったことが信じられないのか、呆けているハルバート様、憑依状態を解除した白虎はハルバート様に一言呟く、しかしハルバート様の天然発言に調子を崩される白虎。
「こらこら、大人しくしなさい白虎」
『ムゥ………主人の命令とあらば是非もない……』
とりあえず白虎を大人しくさせる、白虎は私の肩に飛び乗る、頑張ったご褒美として撫でてあげる私。
「く、くそ覚えてろ!!!」
オルク様を抱えて逃げ帰っていくアイシャとウィリアム。
「ありがとうコトハ、お前のおかげだ!!!」
「ハルバート様の力になるのは当然ですよ」
輝く笑顔で感謝を伝えてくるハルバート様……めちゃくちゃ可愛い、食べちゃいたくらい可愛い………もちろん冗談だ、じょ、冗談に決まっている。
「……補助魔法は私の専門外だ、これからもその力をハルバート様のために使ってくれ、頼りにしている」
「あ、ありがとうございます」
セバスチャンさんは小声ではなく、ハルバート様にも聞こえる声ではっきり私を褒めてくれる、照れ隠しに頰を掻きながら返事をする。
つおい