回想 アストとパラガス
魔術師見習いの少年パラガスは、上空で飛来する獅子鷲目掛けて、杖からほとばしる火の球を投げ付けた。
火球魔法と呼ばれる魔法は、見習い魔術師にとって初歩的な魔法である。
グリフォンに火の球は命中する。
アストは、野原に倒れた少女に全力で疾走していた。
一角白馬は、遠くに逃げうせていた。
グリフォンは上空でもがき苦しみ、火の粉を振り払う。
肉食怪物であるグリフォンの好物は、馬である。
グリフォンにとり、ユニコーンは馬の中でも、最高級の食材でもある。
しかし獲物に逃げられた怒りは、少年達へと向けられた。
まずは先程、自分を攻撃した見習い魔術師に攻撃を開始する。
パラガスは、落ち着き魔法を唱える。
「サンダークラッシュ!!」
雷撃魔法。杖から雷鳴がほとばしり、グリフォンへと直撃する。
グリフォンはたまらず、地面へと回避し、地面に身体を擦りつけ痛みを和らげようとする。
パラガスはここぞと、トドメの一撃、火球魔法をグリフォンへと喰らわせると、何度か脚を痙攣させ、すぐに動かなくなった。
「アスト、ミレアは無事か?」
パラガスはグリフォンの死体に目もくれず、二人の居る場へと走り始めた。
パラガスが近くによると、アストは静かに答える。
「気を失ってるだけです……」
アストの腕にミレアは気絶していた。
「そうか、良かった……」
パラガスは胸をなで下ろした。
「ユニコーンは見えなくなったな」
パラガスが当たりを見回し、言った。
「ユニコーンの死は夢見が悪いからな……」
パラガスは場違いな感想をもらし、ミレアの手首に触れ脈をはかった。
「ユニコーンは無念の死を迎えると悪夢をもたらす黒馬に変貌する言われがありますからね…」
アストはミレアを抱え、立ち上がる。
「どちらにしろ、ミレアもユニコーンも無事だ」
パラガスはそう答え、王国のある場所へと振り向く。
「もう帰ろう……アスト」
「はい……」
アストはミレアを抱え、パラガスはユニコーンの逃げて行った方角を見つめ、静かに王国へと歩き始めた。