4:ひっさつわざ
ミライは乗り物全般が苦手です。おんぶやお姫様抱っこもNG。
ゲロゲロゲロ〜!!!!
…………。
ゲロゲロゲロ〜!!!!
……あぁ、カエルさん、どうか私を、放っといて、くれ、ないでしょうか?
はぁ、はぁ、……うぶぅ!
……ゲロゲロゲロ〜!!!!
……スリスリ。
あ、ありがと、カイトくん……
ねぇ、人って、気分が悪いときに背中をさすると落ち着くのはどうしてなのでしょうか?
……記憶喪失でも、そんなことは頭に残ってたりする。
「……う、馬が、苦手だったなんて、先に、言ってよ……」
乗馬が嫌いだということは頭から完全に消え去っていた。
こういう重要なことを覚えておいて欲しいものです。
おかげで私は幼馴染の前で嫌な光景を作り出してしまったのですから。
「……ごめん。でも、急ぎたかったんだ」
「急ぐ?なんで?」
「……」
カイトくんはずっとそわそわしているようです。
私のようなお馬鹿さんでもわかってしまうほどに。
いったい、おうちで何が起こっているというのでしょうか……。
「ねえ、どうして?」
「……ご両親が心配しているよ」
……今違和感を感じた人手を挙げてください。
(;・_・)/<ハイ!
「ということで、カイトくんは嘘ついてるんでしょ?」
「……」
やっぱり。わかりやすいのね、カイトくんって。
うーん、家出するからにはやっぱりなにか理由があるはずだよね。
おうちに居るのがいや?
それとも、おうちに居ると誰かに迷惑かける?
ただ散歩に出たら迷子になったとか?
……迷子のほうがありえそうですね……。
このままおうちに帰ってもいいのでしょうか?
よし!ここは最近覚えたあのひっさつわざを使うときが来たのかもしれません。
道行く知らないおじさんが教えてくれた、このわざ。
ついに日の目を見るときが!
「ねぇ、教えて……おにいちゃん♪」
速報です。私の幼馴染のカイトくんが顔を真っ赤にして仰向けに倒れました。
私はカイトくんに息が触れるほどに近づき、カイトくんのハンサムな顔をちょこっとだけ見上げ、目を見つめながら上の台詞を呟いたのです。
知らないおじさんは、「コレを使えばどんな男も思いのままだ!」って言いながら親指をグッと立てました。
私はカイトくんに、急いでいる理由を聞きたかったのに、カイトくんは思いのままにはならずに何故か倒れちゃいました。
おじさん、嘘ついたの?
「あれー?カイトくんどうしたのー?」
ほんとにどうしたんでしょう?
顔がまっかっかだけれど、風邪でもひいてるのかしら?
とりあえずカイトくんが起きるのを待つついでに馬(と私)を休ませることにしました。
あれだけマーライオン(吐洒物を撒き散らす行為)した後ですが、私はとってもお腹が空きました。
今にもお腹が鳴りそう……。
「ねぇ起きてよカイトくぅ〜ん」
「……」
起きる気配0です。
なにか食べるものはないかと、私があたりを見渡したときです。
木の根元にキノコが生えていました。
なんだか食べられそうな草に囲まれていました。
鬱蒼と茂った草の茂みから顔を覗かせている黒光りする物体はお鍋でした。
鳥さんが一羽、木に激突して動かなくなりました。
神様、あなたは私の好物(鶏鍋)を知っていたのですか?
みなさんの心の目では、ミライはどのような姿に見えますか?
一応彼女は19歳です。この世界ではとっくに結婚していてもおかしくない年齢。。
ミライの容姿は今はまだ書けません。