第7話、報酬
「あのさあ……オッサン」
野田が王様に向かってタメ口。
「おっさん?」
王の口がゆがんで、シワだらけの顔のシワが増える。
「そんなことができると思っているわけ? この自分たちにさあ」
野田の言葉に違和感を感じているのか、王は姫と視線を交えている。
「そなた達は救国の勇者ではないのか?」
不信感を持った視線で俺たちを見る王様。
「そんなわけ無いだろう。俺たちは無職で、お金にも不自由しているんだよ。だから、あんたの願いは……」
「いえ、分かりましたあ! お引き受けいたします」
強引に野田を引き戻して話に割り込んだのは香奈恵だった。
「私共が命をかけて、この王国をお救いいたしましょう」
俺は、自信満々で宣言した香奈恵を見る。一体、何を言いだすのか。
「ただし、それには王国としての誠意を見せてもらわなければなりません。いかほどの報酬を考えていらっしゃいますか」
すると、満足そうに王は深くうなずく。
「どれくらいの褒美を求めるのか」
王の問いに、香奈恵はチラリと俺達を見てから迷うように言った。
「そうですねえ、金貨100枚ではどうでしょう」
ためらいがちの口調。
金貨が100枚というと、この異世界では100万円くらいになるけど、それくらいが妥当かなあ?
「それだけで良いのか?」
王が意外だというように言った。
「あ、いえ、それは一人分で、あたし達三人にそれぞれという意味です」
もっと要求しても良い感じなので、香奈恵が増額した。
「それに、帝国を退けた暁には成功報酬として、金貨1000枚分の褒美をいただきたく存じます」
香奈恵は、執事がするように右腕を胸の下に置き、深く頭を下げた。
「うむ、分かった。敵を撃退したおりには求めるだけの報酬を与えよう」
しっかりと王がうなずく。
1000万円分が手に入るのか。俺は札束を思い浮かべる。ていうか、どうやって帝国とやらを追っ払うのか……。
「さらに私の娘を嫁にやる」
王の言葉に、隣の姫がピクリと震えて下を向く。そして、後ろに立っているウォルターが剣の柄に手を掛けて握りしめていた。
ああ、この二人は特別な関係なのだろうか。
「望むなら王国にずっと滞在して貴族として過ごしても良いぞ」
俺と野田が目を合わせる。香奈恵は「まあ」と言って夢見る少女の顔になった。少女マンガの世界を頭に描いているのだろう。
無職の俺たちが一気に貴族かよ。さらに嫁さんも手に入る。今まで感じたこともなかった野心というものがムクムクと湧き上がってきた。
とにかく、俺達三人は直角の最敬礼をスポンサーに提示した。




