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異世界転生、王様になろう  作者: 佐藤コウキ
第1部、異世界転送
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第61話、追撃


 しばらくして伝令が戻ってきた。

 帰還するようにという指示を伝えたが、カスター将軍は命令を無視して帝国軍を追っていったという報告だった。

「マズいなあ……」

 曇っている榎本さんの表情。

 執務室では榎本さんを始め、重松さんと祐子さんが黙り込んで対策を考えているよう。

「どうしてマズいんですか?」

 追撃して帝国に損害を与えるのは良いことではないのかな。

「佐藤さん、考えてみて下さい。今まで城壁の中に閉じこもっていて、全く外に出撃していなかったのに、帝国が撤退した途端に追撃してしまえば、共和国と同盟していることを敵に知られてしまうのですよ」

 腕組みをした重松さんがうなずく。

「普通だったら帝国が逃げていっても慎重に考えて、すぐには出て行かない。それが、迷わずに進撃するということは、共和国が侵攻しているという根拠を持っているからだと分かってしまうのです」

 明晰な理論を展開する榎本さん。

「不用意に情報を与えてしまった……。敵にしてみれば、王国軍は無理をしてでも深追いしてくるだろうと思うでしょう」

 なるほど……共和国が帝国に攻めかかっているのだから、こちらを迎撃する余裕もなく急いで本国に戻ると、カスター将軍は安直に判断するだろうな。

「それで、どうなるんですか」

「撤退中でも帝国軍には余力がある。カスター将軍を罠にはめようとするに違いない」

 そう言って榎本軍師はウォルターさんの方を向く。

「ウォルターさん。すぐに、できるだけ多くの兵を集めて下さい。将軍を救出しなければならない」

 敵は大軍だ。用意できる最大限の兵力で向かうべきなのか。

「分かりました。騎馬隊を含めて五千くらいは用意できるでしょう」

 そう言ってウォルターさんは胸に拳を当てる。それが王国の敬礼なのだ。


  *


 俺と榎本さん、それに重松さんはオフロード車で城を出た。

 急いでかき集めた五千人の兵。そのうちの五百は騎馬隊でウォルターさんが指揮を執っていた。残りの歩兵は軽歩兵や重歩兵の混成部隊で榎本軍師の指揮下にある。

 ウォルターさんの号令で、一斉に行進開始。カスター将軍の後を追う。

 榎本さんはハイラックスの荷台に座り、ドローンのリモコンを器用に操作。その画面には、帝国のしんがり軍に迫っているカスター将軍の部隊が映っていた。

 帝国軍の最後部は補給部で、馬や兵が荷車を引いている。敵は慌てているようで、部隊編成もままならずに混乱して撤退しているように見えた。指揮系統が乱れているから、速度の遅い荷駄隊が取り残されるのだろう。


 やがて、カスター将軍の部隊が敵の補給部隊に近づく。

 将軍は敵に突撃。荷駄隊は列を乱して逃げていった。

 榎本さんは深読みしすぎたのではないか。どうやら攻撃は成功しそうだ。

 安心したのも、つかの間。戦闘が始まった場所から太鼓の音が響く。

 道の両脇から帝国軍が飛び出してカスター将軍の部隊を襲う。帝国軍は約一万を迎撃部隊として用意していたのだ。

 やはり、榎本さんの知略は優秀だった。

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