第6話、謁見
「あ、あの人達ですう!」
声の方を見ると馬車がこちらに向かってくる。そして、俺たちの前で停止。
若い男がひらりと馬車から飛び降りた。
「勇者様、良くおいで下さいました」
俺の前に片膝をつく長身の若者。革の鎧を身に付けて、腰には剣を差している。男の俺でもグッとくるような美青年。隣の香奈恵がふうっと息を吐く。
「勇者の方々、私の召喚に応じていただき、ありがとうございます」
前に出てきた少女は黒いローブを着た美少女だった。背は低いが、胸は盛り上がっていて、谷間がくっきりしている。ブラとか着けていないのだろうか。気のせいか、可愛い顔が冷や汗でテカっているような。
「お願いしたきことがあります。ぜひ王城にお越しくださいますよう」
ローブの少女が頭を下げる。なぜか小さく震えているような。
「とにかく、行ってみようぜ。こんな女の子が頼むんだからさあ」
野田がニヤつきながら言う。
お前は現実の女に興味が無かったんじゃないのか? そう言えば魔法少女ジュリアに外見と声が似ているかなあ、この女の子は。
「まあ行ってみましょうか。危害を加えるようじゃないし」
そう言って、チラリと剣士を見る香奈恵。
よく分からなかったが、行ってみないと話が進まないだろう。
三人は馬車に乗り込んだ。
門を通って大きな城の中に入った。
招かれたのは大広間だった。床が大理石でできており、かなり高い天井。上の方に取り付けてある窓からは日差しが入って部屋を鈍く照らす。
近衛兵達が壁際に待機している。中央に進むと向こうに玉座があり、金髪おかっぱ頭の王様が座って俺たちを見ていた。
ひときわ目を引いたのは、王座の横に立っているお姫様だった。白いドレスを着て黄金の装飾品をふんだんに身に付けている。この世のものとは思えないほどの美女。彼女を守るように、先ほどの若い剣士が後ろに控えていた。
「我はトルディア王国を統率するチャールズ王である。このたびは召喚に応じていただき、ご苦労であった」
座ったまま王冠をかぶっている頭を軽く下げた。なんか偉そうだなあこいつ。まあ、王様だからか……。
「呼んだ理由は他でもない、我が国はキャンベル帝国に宣戦布告されそうなのだ。いや、もうすでに帝国は戦争の準備を始めている」
王は口を固く結び、しばらく沈黙した後に息を吐いた。
「そこで帝国が進撃してきたら、勇者殿に戦ってもらいのだ」
えっ、と俺たち三人は同時に声を出す。
このトランプの王様に似た野郎は何をぶちかましていやがる。――そう思ったのは、俺だけじゃないだろう。三人は顔を見合わせて声が出なかった。




