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異世界転生、王様になろう  作者: 佐藤コウキ
第1部、異世界転送
54/279

第54話、川中島の陣


 ドローンを敵の上空に飛ばし、赤外線カメラで状況を確認する。

 それにより、敵が攻めて来ないことが確認された後、俺達はスライムのようにグッタリと眠った。


 翌朝は自然に目が覚めた。ドラの音で起こされると気分が落ち込むような気がする。

 榎本さんの執務室で朝食を食べた。

 食事は軍師の専属メイドが作ってくれる。それが、まともな食事だということは、まだ食料に余裕があるらしい。

「共和国は、まだ侵攻していないのかなあ」

 俺がボンヤリとつぶやく。

「敵に動きが見えないので、していないのでしょう。アマンダ共和国から攻撃されたとなれば、目の前の帝国軍に何らかの動揺が起きるはずです」

 中学生くらいの若さの榎本さん。なんか、軍師としての威厳のようなものが身についてきたのか。

「銃の弾丸も底をつき始めている。何とか持ちこたえたいものだな」

 バクバクとパンを食べてながら重松さんが言った。彼は髭を剃っていないので、関羽のようになっている。

 包囲されているのだから、この城塞都市には補給が来ない。武器や食料が不足してきたら、どうすれば良いのだろう。


 外に出ると、門の内側では敵兵の死体を処理していた。

 鎧や携帯していた武器などを剥ぎ取って、死体は外に運ぶ。また、それでバリケードを作るのか。ああ、戦争って嫌なもんだな……。


 昼過ぎに、城壁の上で呆けていると、帝国軍が動き出した。

 今まで、城壁をぐるりと囲んでいたのだが、包囲を解いて西門の向こう側に集結し始めた。

「何をするつもりでしょうか」

 気がつくと横に榎本さんが黄金マントを輝かせて立っていた。双眼鏡で帝国軍の様子を見ている。

 俺も双眼鏡で観察すると、敵軍は部隊を編成し直しているよう。

 その動きは夕方になっても続いた。


 夕食の後、榎本さんは敵軍の上空にドローンを飛ばす。

 液晶画面が取り付けてあるリモコン。カメラの映像を見ながら器用に操縦していた。

 重松さんが横から画面を覗いている。

「マズいなあ……」

 榎本さんの困ったような声。

「あの作戦できたのか……。うーん」

 重松さんもか。一体どうしたんだ。

「何があったんですか」

 野田が聞く。

「人海戦術とでもいうのか……大軍のメリットをあからさまに押し出してきた布陣だ」

 弱った顔の重松さんは初めて見た気がする。

 画面を見ると、敵軍が五つに分かれていた。一つの部隊を中心にして、それを四つの部隊が取り巻いている。

「車がかりの陣というやつですね。まず、一つの部隊が攻撃して、しばらく戦ったら下がって、次の部隊に交代する。それが戦い疲れたら次の部隊にバトンタッチ。それを四つの部隊で連続して攻撃してくるという作戦ですね。中央の本営を補給基地として、その周りをグルグル回りながら作戦を遂行するので、車がかりの陣と呼ばれているんです」

 榎本さんが説明してくれた。

 それだと寝ることも休むこともできないなあ。こちらは人数が少なくて交代要員がいないのだから。

「間断なく攻撃することによって、こちらの疲労を誘い、それがピークに達した時点で総攻撃してくるだろうな」

 重松さんが補完説明し、さらに続ける。

「車がかりの陣は、上杉謙信が編み出したと言われているが、現実性がないので幻の陣形とされていた。しかし、良く訓練された帝国軍ならば可能なのだろう」

 重松さんの解説に榎本さんがうなずく。

「戦闘というものは集中攻撃が原則ですが、西門のように狭い場所では大軍を運用しにくい。この戦場では戦力の逐次投入の方が効果的なのですよ」

 榎本さんの言葉に、そうですかと答えるしかない。

「それで、どうするんですか」

 俺の質問に、榎本さんと重松さんは黙り込んで何も言わなかった。


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