表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生、王様になろう  作者: 佐藤コウキ
第1部、異世界転送
51/279

第51話、詭道


 敵の本営から太鼓とラッパの音が響いてきた。

 城に攻め寄せていた帝国軍に動揺が走る。兵達は弓を放ちながら急いで撤退していった。

 俺達は逃げていく敵の背中に銃弾を浴びせ続けたが、やがて射程外になったので攻撃をやめた。

 終わったのか……。

 イヤーマフをしていても耳がキンキンしている。前方には血まみれで倒れている帝国軍の兵士。それは地面を覆うほどの数。

 こちらも敵の弓矢で負傷している人がいるが、敵の被害に比べれば微々たるもの。

 初戦は勝ったと言えるだろう。

「やっと、終わったぁ」

 声の方を向くと、野田が仰向けになって荒い息をしていた。

「まあ、最初は小手調べというところだな。次からは本格的に攻めてくるだろう……」

 重松さんが敵の方を見ながら言い、祐子さんが小さくうなずく。

 これで小手調べなのかよ……。かんべんしてくれ。

 静けさを取り戻したトルディア王国の城塞都市。太陽は真上に昇りつつあった。

 俺達は城壁から降りて、下の仮設テントに向かう。

 そこには飲み物や食べ物が並べてあった。

 俺と野田は、渇いた喉に水を流し込み、そこら辺の食べ物を夢中で口に入れる。死屍累々の風景を見て食欲が出ないはずだが、かなりの空腹のときには関係ないようだ。


  *


 昼寝をして、外に出ると日が傾いていた。

 城壁に登ると重松さんが双眼鏡で敵の方を監視している。

 敵は本陣を後退させたようだ。ライフルの射程距離を恐れたのだろう。

 いつの間にか城壁の周りの死体が片付けられている。そして、遠くを見ると黒い小山がたくさん作られていた。そばに置いてあった双眼鏡で覗くと、それは敵兵の死体。

「あ、あれは……」

 思わず双眼鏡から目を離す。

「あれは敵の死体で障害物を作ったのさ。向こうの志気をくじくためにな……」

 双眼鏡を覗きながら重松さんがポツリと説明。

「そこまで……やらなければならないんですか」

 重いため息が出る。

「まあ、戦力差が大きいからな……。兵は詭道きどうだ、勝つためには何でもやらなければならないのだろう」

 重松さんの表情は硬い。敵の死体さえも戦争に利用するというトルディア王国軍のやり方には賛成していないよう。


 日差しが夕日の色に変化し始めている頃、俺と野田は城壁の上で寝そべっていた。

 榎本さんと重松さんは向こうで何やら話し合っている。

「トンズラしたいな……」

 俺がつぶやくと野田も同意の意思を示す。

「ここは俺達には似合わない場所だよ。なあ佐藤、お前もそう思うだろ」

「ああ……」

「お金はたくさんあるんだから、日本に帰って贅沢してえよな」

「ああ……」

「帰ったらランボルギーニを買うぜ、俺は」

 そう言って遠い目をする野田。

「俺はフェラーリを買おうかな」

「それもいいか……まあ、受注生産だから一年以上待つけどな」

 そんなに待つのか。まあ新築の家が一軒建つくらいのスーパーカーだからな。

「遊びまくってさあ、女とも付き合うんだ」

 野田は妄想が広がっているよう。

「まあ、お金さえあれば、いくらでも女は寄ってくるからな」

 俺は当たり前のように言う。

「ああ、そうだな」

 野田も当然のように答えた。

 こんな偏見を持ったのは女と付き合ったことが無いからか。


 お金があれば夢も現実的になる。欲しいものを求めて、それが得られなくて頭がボンヤリしているのは、お金がないからだ。夢を叶えるにはお金が必要だという当然なことに、大金が入ってくるまで気がつかなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ