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異世界転生、王様になろう  作者: 佐藤コウキ
第1部、異世界転送
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第48話、星の王子さま?


 久しぶりにトルディア城に転送した。

 昼過ぎの陽光に照らされた玄関前の庭に車ごと到着。

 辺りを見回すと兵士や職人が慌ただしく働いている。門の近くには木の柵が作られていた。

「私は王に報告してきます」

 そう言ってウォルターさんは城の奥に消えていく。祐子さんも加えた、俺達四人は榎本さんの執務室に向かった。

 重々しいドアをノックすると、中から「はい」という女の声がして、ドアがゆっくりと開いた。それを開けたのは黒いメイド服を着た若い女性。こんな所で仕事をしているのか、モンモンさんは。

「こんにちは……」

 頭を部屋の中に入れて様子をうかがう。

「ああ、佐藤さん。やって来てくれましたか」

 窓際の大きな机に座っていた榎本さんが、立ち上がって俺に駆け寄ってくる。

 彼は金色の模様で刺繍された豪奢なマントを身につけていた。

「いつ来るかと、ずっと気をもんでいたんですよ」

 彼は少し泣きそうな顔をしている。

「榎本さん。その格好は……」

 中学生の歳になっている榎本さんは、金ビカに飾り立てられた星の王子さまのよう。

「ああ、これですか……これは王国に伝わる軍師を示すマントだそうです。私は嫌だったんですが、そういった習わしだそうで……」

 恥ずかしそうにする榎本さん。

「そうですか」

 と言うしかない、俺。

「さらにシルクハットのような金色の帽子もあったんですが、さすがにそれは……キッパリと断りました」

 モンモンさんも苦労していたんだなあ。

「あんたは榎本さんか?」

 重松さんが不思議そうに訊ねた。

「ああ、重松さんも来てくれたんですか。これは心強いです」

 そう言って手を差し出すと、重松さんは口を結んで握手した。そうか二人はルナ先生の掲示板で知り合いだったんだ。

「こっちに転送したら、こんな中学生のようになってしまったんですよ。重松さんは変わらなかったんですね」

「そうなんだ。若返りサービスは終了したらしい」

 少し残念そうな重松さん。俺には彼が若くなった姿が想像できない。

「ところで、こちらの女性は?」

 俺が榎本さんに聞いた。

 さっきから二人の若い美人が壁のそばに立っている。ここはメイド喫茶かよ。

「この人達は私の専属メイドです。ずっと世話をしてくれていたんですよ」

 専属メイド。ああ、甘美な響き。オタク野郎の願望がここに存在している。

 榎本さんが手で指示すると彼女達は礼をして隣の小部屋に消えていった。


 俺達は豪華な部屋の中央に置かれた高価だと思われるテーブルに着いた。

「共和国との同盟は上手くいったんですね」

 榎本さんが確認してきた。

 俺は事の顛末を説明する。


「そうですか……」

 顛末を聞いて榎本さんは複雑な彫刻が施されたイスにもたれて天井を見る。

「斥候によると、帝国軍の四万は明日にでも城に着くようです」

 マントの彼が前を向き、腕組みをして言った。

「五日くらいは持ちますかね」

 重松さんが榎本さんに訊ねる。

「うーん、何とかなるとは思います……」

 だが彼の表情は堅い。


 詳しく聞いてみると、榎本さんと城の防衛責任者であるカスター将軍は上手くいっていないという。

 長年城を守ってきた古参の将軍にとっては、どこから来たか分からないような子供に城の防御を任せることはできないのだろう。

 榎本さんの策としては、城の西門を壊して、わざと攻撃しやすくする。そこに敵の攻撃を集中させて、こちらの全兵力をもって防御するというものだった。

 西門の内側には丸太の柵で狭い通路を作り、敵が入り込んできたら両側から攻撃する。そこから抜け出てきた敵は、扇形に槍部隊を並べて逃がさないという各個撃破作戦だった。


「全方向から攻撃されたら防御は難しい。攻撃してくる場所を特定した方が良いと思ったのですが……」

 門を壊すと言ったらカスター将軍が、わざわざ城に弱点を作ってどうするのかと大声で反対したそうだ。将軍は今までやっていた方法が最善と信じ、新しい方法を採用するという柔軟性はない。

 西側の門の先に出丸を作り、そこで敵の攻撃力を削いでから城に中に誘い入れるのだと榎本さんが力説したのだが聞き入れてくれなかったらしい。

 結局、城の西側を除いた三方向に塹壕を掘り、攻撃しにくくするという作戦で落ち着いたという。内側にも柵を作って敵が動きにくくするという案は受け入れられた。

 派手な衣装のモンモンさんは大きくため息をついた。


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