第47話、銃器
俺達四人は手をつないで庭に現れる。
他人がこれを見たら、良い年をしたオヤジ達がお手々をつないで何をやっているのかと不思議に思うだろう。
だが、野田の家は林の中に建っていて他の民家は近くにない。だから、他人から見られてしまう心配は無用だった。
荷物を持って居間に入ると、ラフな服装の香奈恵が寝転がってテレビを見ていた。
「あら、帰ってきたの? それで共和国は説得できたぁ?」
俺達が苦労しているのに彼女はのんきなものだ。
「ああ、何とか説得できたよ。あと五日も経てば帝国に向けて侵攻するってさ」
そう言って野田が畳の上に荷物を下ろす。
「ああ、そうなの、それは良かったわね」
本当に他人事だよな。香奈恵は現金を得ることにしか興味がない。
「お腹が空いたでしょ。ピザを取るわね」
そう言えば、もうすぐ昼過ぎだ。香奈恵はスマホで宅配ピザを注文する。
「お帰りなさい。お兄さん」
祐子さんが部屋に入ってきた。いつものように質素でおとなしい感じだ。それで自衛隊員が務まったのだろうか。
「武器を買っておいたわ。車に積んでおいたから」
おとなしい顔で物騒なことを告げる祐子さん。
「おお、そうか。ご苦労だった」
重松さんが玄関に向かったので俺達も続く。
さっきは気がつかなかったが、玄関の近くにトラックが停めてあり、荷台にはシートが掛けてあった。
トラックには、トヨタとハイラックスのエンブレム。それは新車のようだ。香奈恵がお金を出したのか。
重松さんが荷台に飛び乗り、シートをまくり上げる。
そこには木箱がいくつか積んであった。
重松さんがフタを開けて中を確認しているので、俺は荷台によじ登って木箱の中を覗いてみた。
それには銃が入っていた。
「ショットガンが十丁とライフルが三丁、それにグレネードランチャーが一丁だ。それから、とっておきは……これだな」
そう言うと重松さんは木箱から長い銃を持ち上げた。
それは六十センチほどの長さで大きなスコープが付いている。彼は銃のベルトを肩に掛けた。
「これはドラグノフ狙撃銃と言って射程距離が八百メートルもある。型は古いが性能は抜群だぜ」
得意そうな笑顔の重松さん。まあ、凄いライフルなんだろうな。
「ショットガンとかは向こうで使い方を教えるから」
「えっ」
重松さんの言っていることが分からない。
「佐藤さん達にも戦ってもらわなければならない。なんせ戦力の差が大きいからな」
「俺達も戦うんですか……」
「そりゃそうだろう。佐藤さんは勇者としてトルディア王国に召喚されたんだろう。だったら活躍しなきゃ」
ニコニコ笑っているヒゲ面。まるで体育祭で頑張れよといった軽いノリだ。俺が帝国の兵と殺し合いをするとか冗談じゃないぜ。
「サトウ殿が参戦してくれたら心強いです」
俺を見て微笑むウォルターさん。そう言われたら断りにくいじゃないか。
隣の野田を見たら、そいつも震えていた。




