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異世界転生、王様になろう  作者: 佐藤コウキ
第1部、異世界転送
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第46話、評決


 俺達は会議室から離れている小部屋で待つように指示された。

 小さなテーブルの上には紅茶が入ったカップが四つ。

「どうなるのかなあ……」

 ため息をつく野田。

「やるべき事はやりました。後は結果を待つだけです」

 ウォルターさんが窓辺に立って外を見ながら言った。

 そう、今は待つしかない。

 大昔、国の生き残りを賭けて相手を説得すべく、第三国に向かった使者は何を思っていただろう。

 王様を始め、為政者は思い重圧に耐えながら戦わなければならないのか。


 ノックの音がした。

 皆が一斉にドアを見た。

「どうぞ」

 ウォルターさんが言うと、ロマンスグレーのアレックス議長が入ってきた。

「お待たせしました。会議の評決が出たのでお知らせします」

 議長の堅い表情からは結論が読めない。

「多数決により、我がアマンダ共和国はトルディア王国と同盟を結び、キャンベル帝国に宣戦を布告することに決定しました」

 淡々と述べる議長。

 しばしの沈黙の後、俺達は歓声を上げた。

「ありがとうございます。感謝いたします」

 議長の手を握る美形の剣士。議長は心なしか恥ずかしがっているような。

「それで、帝国への派兵はいつになるんですか」

 重松さんが太い声で訊ねた。

「うーん、まあ、急いでも十日くらいは必要でしょう」

 その返事にウォルターさんの顔が青ざめる。

「もう少し早くできませんか。今頃、帝国はトルディア王国を攻めているかもしれないのです」

 必死に願うウォルターさん。

「そう言われても……、一万の軍を動かすには、それなりの準備が必要なのですよ。あなたなら分かるはずですが」

「は、はい……」

 ウォルターさんは納得するしかないという苦悶の表情。

 しかし、他に方法があるのでは?

「別に全軍が帝国に進撃しなくてもいいでしょう。足の速い騎馬兵だけでも先に送ることはできませんか? ほとんどの帝国軍はトルディア王国に向かっていて守備する兵は少ないはず。騎馬隊が襲来した姿を見れば、ビックリして本隊を呼び戻すでしょう」

 俺が言うと、議長はうなずいて考える。

「……そうですね。騎馬兵だけだったら五日くらいで出発できるかもしれません」

 難しそうな顔で答える議長。

「よろしくお願いします、アレックス議長」

 深々と頭を下げるウォルターさん。本当にこの人は真摯な人間だこと。

「分かりました。できる限りのことをしましょう」

 議長も深く礼をしてから部屋を出ていった。会ったときより態度が和らいでいるのは、同盟が結ばれて俺達と仲間意識が芽生えたのか。


  *


 俺達はミッキー老人の家に戻る。

「どうじゃ、上手くいっただろう」

 ニタニタ笑いながら老人が言う。

「おかげさまで共和国の説得することができました」

 下から水音が響くワニの部屋。ウォルターさんが頭を下げた。

「この世はお金があれば何でもできるものさ」

 平気で極論を言う老人。こいつは賄賂を使って票を集めたのか。そうだとすると、必死に議員を説得した俺達の努力は何だったんだよ。

「まあ約束通り、あの変な乗り物はいただくことにするぞ」

「ああ、そうですか」

 野田が投げやりに答える。

 そんな顔をするなよ。お金はたくさんあるんだから、今度はランボルギーニでもキャデラックでも好きな車を買えばいいだろう。

 俺は野田の腕を引っ張って下に降りて行き、オフロード車の車検証を抜いてキーを差し込んだまま老人に引き渡した。

 運転席でハンドルを握り、ご満悦のミッキー老人。

 重松さんは老人に使用方法を教えた。

 ガソリンがなくなったら使えないのだが、それについて、今は黙っていよう。後で交渉材料になるかもしれない。


 トルディア王国を心配しているウォルターさんにせかされて、俺達は日本に転送した。


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