第3話、異世界転生
気がつくと異世界にいた。
周りを見回すと中世ヨーロッパ風の町並み。
目を細めて俺を見る住民の服装は、ゆったりとしたチュニックのような物にロングのワンピースを羽織って腰を紐で結んでいる。
本当に異世界に来たのか。
「なんだよ! 一体どうしたんだ」
後ろから野田の声が聞こえてきたので、説明しようと振り返った俺は驚いた。
彼は20歳くらいに若返っている。
「お前は野田か?」
「そう言うお前は佐藤かよ……」
野田のズボンがストンと落ちて魔法少女ジュリアがプリントされてあるトランクスがあわらになった。
慌ててズボンを持ち上げる野田。俺のズボンもズリ落ちそうになっていたので、ベルトを締めた。ウェストが細くなっていて高校時代を思い出す。俺も若返っていたのだ。
「何がどうなっているのよ」
香奈恵も若くなっている。高校時代は良く、三人で遊んでいた。その頃の思い出と同じ姿になっていた。
野田と香奈恵にコパルのことを説明した。彼らは信じられないという顔つきだったが、異世界の町並みと住人、それに20歳くらいに戻っている自分を見れば信じるしかないだろう。
体が軽くて、何かをやろうという気力があふれている。
そうか、高校時代はこんな感じだったんだ。気力があって体力も十分だったし、いくらでも時間があった。だが、何をするべきなのか知らなかった世代。
「とにかく、あたりの状況を調べてみよう」
俺達は石畳の道路を歩き出す。
店の看板は見知らぬ文字だったが、なぜが理解できる。それに俺たちを見て小声で話している住民達の言葉も分かってしまう。悪魔のコパルが自動的に翻訳する魔法でも掛けてくれたのだろう。
「あれは武器屋じゃないか?」
野田が店の中に入っていくので、俺たちも続く。
棚には短剣や弓矢、サーベルなどが陳列されていた。日本なら確実に銃刀法違反になるだろう。
野田が革の鎧を触っている。俺も短剣を手に取った。ズッシリと重くて見るからに本物だ。柄の部分に値札が付いていて、3万リラと書いてある。
「3万リラっていくらなのかな」
香奈恵の方を振り返った。
「そうねえ、それは3万円くらいだから1リラは1円くらいじゃないのかしら」
そう言って小首をかしげる。けっこう可愛い。ああ、若い女は肌のつやが違うな。
「はいはい、それは金貨1枚だよ」
小柄な男が短剣を取り上げて棚に戻す。この頭がツルツルの男は店の主人なのか。俺達のことを警戒しているんだな。
感じが悪いので、店を出た。
さて、これからどうするか。
チプカシの腕時計を見ると午後3時。空を見ると太陽の角度もそれくらいだ。異世界と日本は、ほとんど同じ時間体系らしい。




