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異世界転生、王様になろう  作者: 佐藤コウキ
第1部、異世界転送
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第29話、出直し


 俺と野田とウォルターさん。その三人は呆けたように亀裂をボーッと眺めていた。

「引き返すより方法はありませんね」

 つぶやくように言うウォルターさん。

「他に道はないんですか?」

 俺が聞くと、剣士は首を振った。

「この車が通れるくらいの道は知りません。戻って帝国の中央を突破するしかないでしょう……」

 天下無双の剣士も落ち込んでいるよう。ぐずぐずしている間にも帝国はトルディア王国に進行しているのだ。

「別に、ハリアーで行く必要は無くて、佐藤だけが渡ればいいんじゃないか?」

 野田が何気なく言った。

「なるほど……」

 そうか、俺が一度でも行った場所なら日本に戻ってから転送して来ることができるよな。

「しかし、どうやってサトウさんが、この距離を渡るのですか」

 ウォルターさんの問いに野田が腕組みをする。

「日本に戻ってネットで聞いてみよう」

 なるほど、それが良いかな。

「ここでジッとしていても話は進まない。日本に帰って出直しましょう」

 俺が言うと、ウォルターさんは仕方なさそうにうなずく。彼は王国のことが心配なのだろう。いや、それともキャサリン姫の方かな……。


  *


 また、野田の実家に転送。

 庭の中央に横倒しになっていた軽自動車は無くなっていた。レッカー車を頼んだのか。

 クラクションを鳴らすと、香奈恵が出てきた。

「あら、早かったわね。何かあったの?」

 ジャージ姿のラフな格好をした彼女。

「ああ、問題発生だ。崖があって行き止まりさ」

 野田が車から出て玄関に向かう。

「ええ、じゃあ、どうすんの……」

 香奈恵は他人事のようだ。

「ネットでルナ先生にお伺いを立てるさ」

 放り投げるように俺が言う。

「ルナ先生?」

 俺は彼女の問いを無視して家の中に入った。


 さっそく野田はパソコンの前に座って掲示板に書き込みをしている。

 ウォルターさんは興味深そうに液晶画面に見入っていた。

「お昼ご飯はまだよね。買ってくるわ」

 そう言って香奈恵は車のキーを持って外に出ていった。


 客間の畳の上に寝転がって大きく息を吐く。

 物事は上手くいかないものだな。

「ああ、すぐに返事が来たな」

 ボンヤリした頭に野田の声が届いた。

 起き上がってパソコンの前に進む。

「えーと、私は自衛隊で渡河訓練をやったことがあります……か。渡河というのは川とかビルの間を渡ることらしい」

 野田が返答を読みながらフンフンと鼻を鳴らす。

「それは消防訓練で隊員がやっているやつかな」

 うんと言って、うなずく野田。

「この場合は、ロープを張って滑車で渡るのがベストと書いてある」

 えーっ、そんなことをやらなきゃならないのかよ、俺が。

「とにかく、実際に会って話を聞いてみようか」

「そうだな……」

 彼の言うとおり、それが早いかな。

 野田はカタカタと掲示板に書き込みを始めた。


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