表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生、王様になろう  作者: 佐藤コウキ
第4部、王になろうとする男
274/279

第274話、禅譲


 カマリア王国のギルバート王子が重要な話があるというので、主立った面々と王宮の会議室に集まった。

 王子は友人でもあるジョセフ将軍を連れてきている。かなり込み入った話なのか。

「このたびはサトウ王にお願いがあって参りました」

 起立して王子は俺に頭を下げる。

「ハイッ?」

 つられて俺も立ち上がる。隣の席の重松さんが「まあ座れや」というように俺の袖を引っ張ったので、ゆっくり座った。

「我がカマリア王国をサトウ王にお譲りしたい」

「ハイッ?」

 耳を疑う。意外な申し出に、重松さんも藤堂さん達と顔を見合わせている。

「カマリアは小国です。このままでは、また戦乱に巻き込まれて民衆が困窮してしまうでしょう。そこで、カマリア王国をサトウ王国に併合してもらい、サトウ王に国民を守っていただきたいのです」

 そう言って王子は俺を直視する。

 ああ、その実直な眼差しが痛いと感じるほど王子は真剣なのだ。

 自分の地位に恋々とすることなく国民のことを思っている。この王子ほど愛情深くて寛容な人間はいない。俺よりもギルバート王子の方が王様になった方が良いのではないか。

 ……いや、優しいだけで王様になってはいけない。

 同盟国であるキャンベル帝国との駆け引きや欺し合も必要なのだ。そういった意味では、温厚な王子よりも、ひねくれた俺や野田が王様になった方が良いかも。


 どうしようかと、重松さんや藤堂さんに視線を送るが、さすがに彼らも答えを出せないよう。すがるように榎本さんを見ると、彼はゆっくりとうなずく。

「佐藤さん、あ、いや……佐藤王。ここは王子の申し出を受け入れるべきでしょう」

 榎本軍師は平然と言った。

「カマリア王国は戦争の後で混乱しています。その状態で他国に攻め込まれたら、ひとたまりもないでしょう。佐藤王国と併合して守ってあげるべきです」

 そうだよな……。

「……分かりました」

 俺が言うと、ため息が続いて会議室の空気が膨らんだように感じた。

「ありがとうございます、サトウ王」

 王子が腰を直角に曲げて俺に礼をしている。

「あ、いや、その、お礼を言われるほどでは……」

 困惑していると、王子が上体を起こして言った。

「それから、私の妹のビアンカをサトウ王に嫁がせたい」

「はいー?」

「ビアンカも了解しています。その婚礼により両国の併合も速やかに行えるかと……」

 王子は探るような目つきで俺を見ている。重松さん達は笑っていた。

 それについては、以前も断っているんだけどな。

 隣の野田が、どうするんだよとアイコンタクトで問いかけてきている。

「その件は保留ということでどうでしょう。まだ姫は若い。これから多くの男性を見てからでも遅くはないのでは……」

 何で断るんだよ! というテレパシーを送ってくる野田。こいつはビアンカに魔装少女の最終形態であるアルティメット・ジュリアのコスプレをさせたくて仕方がないんだよな。

「では、今は許嫁として、妹が二十歳になったら結婚ということでよろしいですね」

 淡々と言う王子。俺の返答を予想していたのか。

「あ、いや、それは……」

「妹に何かご不満でも……」

 王子は少しきつい目になった。

「いえ、そんなことは……」

「では、よろしいですね」

 王子は、勝ったというように口元をほころばせた。

「はあ……」

 こんなことで結婚を決めて良いのだろうか。これって政略結婚だよな。しかし、オズワルド公爵がビアンカを狙っているし、あんなやつに取られるくらいなら俺の方がマシかな。

「では、サトウ王。カマリア王国とビアンカをよろしくお願いします」

 王子は深々と頭を下げた。


 アマンダ共和国が滅亡し、佐藤王国が誕生した。次にはカマリア王国が佐藤王国と合併する。時代というものは時として思いがけない加速をするものなのか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ