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異世界転生、王様になろう  作者: 佐藤コウキ
第4部、王になろうとする男
249/279

第249話、作戦本部


 モルトン議長を連れてジョンソン将軍のところに転送することになった。

 日本に転送してから、また異世界に戻ってくる予定。ジョンソン将軍が陣を張っている場所は前に通ったことがあるので、転送で行くことができるのだ。

 馬で行っても良いのだが、それだと数日かかってしまう。ベルキア砦も心配なので、早めに処理したい。


 モルトン議長を連れて重松さん達と一緒に自宅に転送した。

 異世界と日本の時間は同じ。異世界で夜なら日本でも夜になっている。

 日本の時刻は、大陸の中央にあるキャンベル帝国と合致しているようだ。そこから西のアマンダに行くと当然のことに時刻は少しずれてくる。


 庭の照明に照らされた俺の家。

 モルトン議長は驚いたように辺りを見回していた。転送するのは初めてなのだから、仕方のないこと。

 議員をうながして玄関に入った。

「おい、靴を脱げよ」

 野田に注意されて、議員は慌てて靴を脱いで家に上がる。

 居間に入ると、香奈恵とアズベル、それにビアンカがテレビを見ていた。

「お帰りなさい。サトウのおじさま」

 ビアンカが立ち上がって迎えてくれた。

「ああ、帰ってきたの……。で、結果はどうだったのよ」

 クッキーを片手に香奈恵が聞いてくる。相変わらず、気楽でいいよな。

「おお、アマンダは占領したぜ」

 重松さんが太い声で答える。

 ビアンカが目を丸くして驚く。百年以上も続いた共和国が滅んだと知って感慨深いものを感じているのか。

「これからまた転送しなけりゃならん。夜食を用意してくれるかな」

 重松さんが言うと、香奈恵とビアンカが立ち上がって台所に向かう。アズベルは黙ってテレビを見ながらクッキーを食べていた。毎度のことながら神官の少女はグウタラだな。


 香奈恵の定番レパートリーである、オニギリが出てきた。

 きっと、冷凍しておいたやつをレンジで温めただけだろう。

 皆はペットボトルのお茶と一緒にパクパクと食べ始めた。

 モルトン議長にオニギリを勧めたが、初めて見る物なので顔をしかめて手を横に振る。とりあえず、一口だけでも食べてみればいいのに。


 食後にモルトン議長が口を開く。

「アレックス議長はどうしたのだ」

 俺達は顔を見合わせた。何と説明して良いものか……。

「まさか、殺したんじゃないだろうな」

 モルトンは上目づかいで俺を睨んだ。

「殺しちゃいないよ」

 重松さんが取り繕う。まさか、ニュータイプの親方の元で、手取り足取り腰取りされながら石を切り出しているとは言えないだろうな。

「アレックス議長と話をしたいのだがな」

「それは無理だな……。彼は山奥で勤労に従事している。すぐに呼び戻すのは不可能だ」

 それを聞いてムッとするモルトン。

「強制労働か……。日本人というものは野蛮だな。」

「俺達を殺そうとしたアマンダ人に言われたくないぜ」

 野田が口をとがらす。彼はギロチンで首をはねられそうになったのだ。

「まあ、それは私も行き過ぎだと思っている」

 小さく言ってモルトン議長は下を向く。

「終わったことを言っても仕方がない!」

 重松さんが大声で締める。

「今はジョンソン将軍の元に行って停戦を命じることが優先だ。戦後の処理をしようじゃないか」

 そう言うと、重松さんは立ち上がって自分の部屋に向かった。銃などの武器を装備するのだろう。

 俺の自宅は、部屋がたくさん余っているので、皆が勝手に自分の物にしている。この新築の邸宅は日本における作戦本部と化してしまった。


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