第244話、銃殺許可
クローゼ将軍の騎馬隊はアマンダの首都に突入する。
それに遅れまいと、歩兵部隊も町の中に入っていった。
俺と野田は大きく遅れて、息切れしながらやっと首都の前に到着した。
「大分、遅れたな」
ハアハアと激しく呼吸しながら俺達は地面に座り込んだ。
俺は確か総司令官で王様候補になっているはずだが、護衛としてはツーブロックの髪型の和田副官だけ。もうちょっと、司令官を大事にしてくれても良いと思うのだが。
和田は呼吸も乱れずにジッと立って俺達を見ている。まあ、この体力勝負の人は何も考えていないのだろうな。
アマンダの首都は城塞都市ではない。この国は赤壁などの要害に囲まれているので、城壁を作っても意味がないということだろう。しかし、今は俺達の侵入を許してしまった。建国以来、敵国の侵略を許さなかったアマンダは初めて敵兵の軍靴によって踏みにじられることになったのだ。
国の防御は赤壁などのハードウェアだけに依存してはいけないということか。
息を整え、ようやく立ち上がって町に入ろうとすると石畳の道を住民達がこちらに向かって逃げてきた。
クローゼ将軍の奇襲作戦は成功したよう。
荷物を持って駆けてきた人々は、俺達の銃を見ると慌てて遠回りして町から離れていく。
市民などの非戦闘員に対しては暴行や略奪を働いてはならないと藤堂さん達から厳命されている。もし、帝国軍が住民に対して無意味な暴力を振るっていたら、ショットガンで撃ち殺しても良いと許可が出ているのだ。それにはクローゼ将軍も同意済み。
議事堂にたどり着くと、帝国軍が完全に包囲していた。
「状況はどうですか」
重松さんに聞くと彼は小さくうなずく。
「ああ、この通り議事堂は包囲して議員達は逃がしていない。軍務省の方も二千の兵で取り囲んでいるという状態だ。この首都には数えるほどしか戦闘員が残っていないので、陥落は時間の問題だろう」
時間の問題……。しかし、重松さんの表情は硬い。
確かに時間の問題なのだ。
この場合、時間は俺達の味方ではない。すでに連絡係の早馬がジョンソン将軍の軍に向かっているはず。首都が攻撃されたと知れば、将軍は騎兵などの高速隊を編制して急いで戻ってくるだろう。
猶予は三日くらいだろうか……。それまでに議会を降伏させないと、今度はこちらがマズいことになる。
レンガ作りの三階建て。鉄骨をふんだんに使った頑丈そうな議事堂は、デンと構えて俺達を見下していた。




