第241話、先発隊
先を進むクローゼ将軍の部隊。
それから遠く離れて俺達のトラックが続く。
こちらの戦いなのに、援軍である帝国軍に先鋒を任せるのは気が引けるのだが作戦上、仕方のないことだ。
一時間ほど進軍すると、赤壁が近づいてくる。
部隊は一時停止した。
「では、クローゼ将軍。打ち合わせ通りにお願いします」
藤堂さんが頼むと、将軍は無表情に敬礼した。
この人は本当に無骨な軍人という気がする。
三千人のクローゼ部隊は赤壁に向かった。例の荷車を前方に配置させて、その後ろに続いていく。
俺達はトラックの荷台に乗り、ドローンを飛ばせて戦況を確認する。
ドローンには撮影カメラが付いてあり、藤堂さんが操縦するリモコンには画面が付いていて、ドローンからの映像をリアルタイムで見ることができた。
部隊は赤壁に近づく。
前の方の兵は木の盾を構え、中央の兵は弓矢の準備をしている。
かなり近づいたときに、赤壁の守備兵から弓矢が放たれた。
見上げるほどの高い崖の上から雨のように矢が飛んでくる。こちらは盾で矢を防ぎ、敵に目がけて弓矢で応戦する。
しかし、高い場所から射られた矢の方が威力がある。戦いは一方的に帝国軍の方が不利だった。
俺達は、以前は上の方で防戦していた。今度は下の方から攻めている。やはり、崖の上からの攻撃の方が段違いに威力があるよな。
しばらく戦ってからクローゼ将軍は撤退を命じ、部隊は一斉に後退していく。荷車は持ち帰る暇がなかったかのように、その場に残された。
偵察用のドローンは、目立たない岩の上に着陸させた。その撮影カメラは荷車に焦点が合っている。
しばらくすると、アマンダの守備兵が恐る恐る降りてきて、荷車を点検し始めた。
赤壁には千名が配置されているとの情報をルーシーさんから得ている。ほとんどの兵が下に降りてきたようだ。
兵は荷車に乗っていた木箱のフタを開ける。中に入っていた金貨の袋を見て喚声を上げた。
すると、周りの兵がわらわらと集まってきて、中の物を取りだし始めた。
金色のトロフィーや優勝カップ、金や銀の装飾品、おびただしい宝石類……もちろん、すべてイミテーションだ。この異世界にはメッキ技術がないので、本物の黄金製品だと思ってしまうのだ。
兵達は興奮し、我先にと賞品グッズをかき集める。隊長らしき男が制止するが聞く者はいない。アマンダ共和国の兵隊は給料が少ないのだろうか。
喧噪はやがて闘争へと発展する。
兵達は物資をめぐってケンカをはじめた。
榎本さんの作戦通りに事が運んでいるな。




