第229話、ドキドキゲーム
俺達は前回と同様に地雷原に向かって突っ走る。
後ろからは騎馬軍団が猛スピードで追撃してきていた。
先行するハイラックスが地雷原に飛び込み、俺達のジムニーもそれに続く。
前とは別のルートを通って砦を目指した。所々に立っている木にペンキで印がしてあり、それを頼りに地雷の海を高速で走っていく。
後ろを見ると、騎馬軍団は馬から下りて徒歩で追跡してきていた。車のタイヤの跡を探して、その上を早足で歩いてきているのだ。
「やつらは地雷を避けてるぜ」
野田が悔しそうに言う。車が通った場所には地雷が埋まっていないことに敵は感づいてしまったのだ。
「まったく、ジョンソン将軍は敵にするのが嫌な人間だな……」
俺が言い終わる前に車の下で爆発音が起こり、車体が横転した。
あれ、地雷を踏んだのかよ!
景色が回転する。俺は車から放り出されて地面を転がった。
痛みをこらえて辺りを見ると数メートル先に野田も倒れている。
祐子さんがハンドルを切り間違えるとは思えない。たぶん、地雷を埋めたときの位置データが間違っていたんだろう。数百個も使ったのだから、数個くらいは埋めた位置が分からなくなっても仕方がないか。
こうしている間にもアマンダ軍が近づいてくる。とにかく、逃げ出さないと……。
「佐藤さん、動かないで!」
上半身を起こそうとしたら、祐子さんから止められた。
彼女は横倒しになった軽自動車の窓から顔を出している。
「そこは地雷の密集地帯なんです。動くと爆発するかもしれない」
彼女の警告に身震いがしてきた。
「地雷は時差式で、踏んでから離れたときに爆発するんです。もしかしたら地雷の上に乗っているかもしれない……」
祐子さんの、日本人形のように優しい顔がこわばっている。これは本当にヤバイ状況だよな……。
遠くからアマンダ軍の気配が聞こえてきた。
「祐子さん……何とか助けてください……」
そう言う野田も青ざめている。
「待っててください」
彼女は車の上に立ち、三節棍を取り出して二メートル弱の一本の棒に連結した。
それは三本のセラミック棒を鎖でつないだもので、近接格闘用の武器だ。扱いが非常に難しいので、それを実戦で使えるのは祐子さんだけだという。
彼女は狭い場所で、少しの助走をつけて車から飛ぶ。三節棍を棒高跳びのように地面に突き刺し、グンと空中を伸びて俺の近くに着地した。
「佐藤さん、まずは落ち着いて下さい」
祐子さんの表情は冷静だ。それによって俺の震えが止まる。
彼女は自分の身の危険を顧みずに俺達を助けようとしているのだ。
三節棍を使ったときに爆発するかもしれないのに、そのポイントに地雷が埋まっていない確率に賭けて飛んでくれた。さらに、着地したときに倒れてしまったら地雷でやられてしまっていたかもしれない。
本当に、祐子さんは源平合戦の巴御前のごとく度胸がある。




