第215話、籠城
クーデター軍は、散発的に弓矢を建物に向かって放つが、レンガ造りの建物では意味がない。
王宮の窓からは、こちらに向かって矢が飛んでくる。しかし、チョコチョコと攻撃してくらいで猛反撃ということではない。向こうの兵数は少ないのだろう。
いつの間にか金ピカマントを羽織っていた榎本さんが拡声器を持っている。
「立てこもっているアマンダ兵に告ぐ!」
ハイラックスの荷台に立って中の兵に呼びかけた。
「私は榎本軍師である! お前達はすぐに投降せよ。さもなくば建物ごと破壊してやるぞ。日本から持っていた武器の恐ろしさはお前達が良く知っているはずだ」
久々に聞く金ピカマント榎本さんの恫喝。こんなときの彼は頼もしくて仕方がないぜ。
敵味方とも無音になった。中の兵が出てくる気配はない。
「仕方がないですね」
榎本さんが助手席に向かって言うと、重松さんがコクンと首を縦に振る。
「王子、この王宮を少し壊してしまいますが、よろしいですか」
ギルバート王子は苦笑いして重松さんにうなずいた。
「この際、がれきになっても構いません。まずは王都を取り返して、民衆を安心させてやることが先決でしょう」
王子の表情に迷いはない。この人は本当に国民のことを一番に考えているんだなあ。
分かりました、と言って重松さんが車から降りる。
ハンドランチャーを建物に向けると、榴弾を発射した。
それは二階の窓付近に命中して爆音を響かせる。壁の一部が壊れて落下した。
榎本さんも機関銃を王宮に向かってばらまく。それは壁のレンガを削り、窓ガラスを吹き飛ばした。この人達は、それでストレスを発散しているのではないかな。
数発の榴弾を爆発させ、機関銃の弾を一箱カラにしたときに、王宮の窓に白旗が揚がった。
「けっこう、あっけなかったですね」
榎本さんが言うと重松さんが同意する。
「ああ、もっと抵抗するかと思っていたんだがな」
重松さんよお、それは希望的観測だろう。そんなに激しく戦いたいのかよ。
しばらくして、両手を挙げたアマンダ兵が建物からゾロゾロと出てきた。
それをカマリアの兵が確保する。
これでカマリア王国の王都奪還作戦は完了。
次はベルキアの砦に行って、藤堂さん達と合流しなければならない。
ジョンソン将軍は一万以上の兵で砦を守備している。それを何とか落とさなければならないのだ。
王都のことは王子に任せて、俺達はジョセフ将軍が指揮する三千人と共にベルキアの砦に向かった。




