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異世界転生、王様になろう  作者: 佐藤コウキ
第4部、王になろうとする男
211/279

第211話、宣戦布告


 カマリア王国におけるクーデターの準備は着々と進んでいた。

 榎本さん達は武器と一緒に、深い森の奥にある別荘で作戦を練っている。その別荘は王族専用の建物だが、古いので民間に払い下げることになっていた物だ。しかし、戦争のどさくさで放置されている。その別荘は王宮の書類からは抹消されているので、帝国に知られることはない。


「じゃあ、佐藤さ……あ、司令官。そろそろ行くか」

 ヒゲ面の重松さんが俺を促す。

「佐藤さんでいいですよ」

 司令官と呼ばれるのには、まだなじめない。

「いえ、サトウ司令官閣下は司令官殿でありますから、司令官と呼ぶべきであります」

 和田が直立して言った。

 全く、この人は思考が硬直したまま停止しているのか。和田のツーブロックの髪型をパカッと開けるとレンガでも入っているのだろうな。

「じゃあ、司令官閣下。ベルキアの砦に転送をお願いしたい」

 苦笑いの重松さんが言った。

「はい、分かりました」

 武装した重松さんと、祐子さん。それに和田が俺につかまった。和田には、オンブしなくて手や肩を握るだけで良いからと念を押している。


 敵の本拠地であるベルキア砦に行って、宣戦布告書を渡さなければならない。

 帝国の皇帝からは、戦闘を仕掛ける前には必ず宣戦布告しなければならないと注意されている。戦争に卑怯も何もないと思うのだが、戦闘前の通達はキャンベル帝国の伝統らしい。


「では、行きます」

 ベルキアの砦を思い浮かべる。前の戦いでは、そこに陣取ってアマンダ軍と共同戦線を張っていたが、今は敵対している。テントの中でユーチューブを見ていた頃が懐かしいと感じるよな。

 三階建ての自宅がボンヤリとした形になり、すぐに黒に塗りつぶされた。


  *


 砦の茂みに転送。

 近くから敵兵の声が聞こえるので、身を低くして様子をうかがう。

 重松さんは口に指を当てて、静かにしろという指示。

 人の気配が消えてから、俺達は移動した。


 大きめの小屋があり、監視の兵がうろついている。

「佐藤さんは待っていてくれ」

 そう言って重松さんと祐子さんが小屋に近づいていった。

 しばらくすると帰ってきた。

「何をしたんですか?」

「ちょっとしたお土産さ」

 含み笑いの重松さんは、司令官のテントを目指す。


 林の近くに大きいテントが見えた。

 カーキ色のそれは日本から持ってきた物で、前の戦いでは榎本さんが軍師用として宿泊していた場所。

 十人以上の近衛兵が立っているのに、重松さんはノシノシと歩いて行き、敵の将軍を呼ぶ。

「私は重松将軍である! 今回は帝国軍の名代として宣戦布告の書類を持参した。ジョンソン将軍にお目通り願いたい」

 テントを振るわすがごとくの大声。

 しばらくの間、兵達はあっけにとられていたが、すぐに剣を抜いた。

 祐子さんが前に立ってマシンガンを構え、俺の後ろでは和田が護衛する。

 機関銃の威力は知っているので、アマンダ軍の兵士は動くことができない。

「何事だ!」

 テントからジョンソン将軍が出てきた。

「シゲマツさん、それにサトウ司令官も……」

 緊張で顔が赤くなっている。

「戦いに来たわけではない! 俺達は使者として来たのだ。争いは無用に願いたい」

 重松さんの口上を聞いて、ジョンソン将軍は兵に剣を収めるように命令した。

「宣戦布告書をお渡しします」

 重松さんが手を伸ばして書類を差し出す。

「拝見させていただきます」

 将軍も手を伸ばして封書を受け取った。

 用が終わったんだから、さっさと帰ろうぜ。敵陣に長居は無用だ。


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― 新着の感想 ―
[一言] >帝国の皇帝からは、戦闘を仕掛ける前には必ず宣戦布告しなければならないと注意されている。 裏切って人質を取るどっかの共和国とは大違い。
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